乳腺炎

授乳期に、乳汁が乳管内に溜まることで起こるうっ滞性乳腺炎と、その状態に感染が加わって起こる急性化膿性乳腺炎があります。
また、授乳とは関係ない慢性乳腺炎もあります。

症状

うっ滞性乳腺炎
分娩後1週間以内に多くみられます。
乳房の腫れ、痛み、部分的な熱感、赤みなどを訴え、わきの下のリンパ節が腫れることもあります。
発熱はみられません。
急性化膿性乳腺炎
分娩後2週間以後に多くみられます。
乳房の痛み、しこり、腫れ、赤み、熱感、全身の震えや寒気、倦怠感、高熱などを訴えます。
その後、乳房に膿(うみ)のかたまりができます。
慢性乳腺炎
乳輪の下にしこりができ、乳輪や乳輪近くの皮膚から膿(うみ)が出ます。
乳管と皮膚の間に瘻孔(ろうこう)(管状の穴)ができていると症状が繰り返し起こることがあります。
陥没乳頭の方で頻度が高く、発生に授乳は関係ありません。

病原体

急性化膿性乳腺炎の原因菌は黄色ブドウ球菌がもっとも多く、レンサ球菌、大腸菌などもあります。
慢性乳腺炎も細菌感染が原因となります。

検 査

急性化膿性乳腺炎が
疑われる場合
血液検査、超音波検査などを行い、膿(うみ)のかたまりができていればその液を針で吸引して原因菌を調べたり、炎症性乳がんではないことを確認するために細胞を調べます。
慢性乳腺炎が
疑われる場合
乳がんを否定するために、乳腺X線撮影、超音波検査、針で吸引して原因菌や細胞を調べる検査などを行います。
瘻孔(ろうこう)がないかを調べます。

治 療

うっ滞性乳腺炎
乳房をよくマッサージして乳汁の流れを促すとともに、授乳をして赤ちゃんによく飲んでもらいます。
乳房を冷やして痛みや腫れを和らげます。
痛みが激しいときは、消炎薬、鎮痛薬などを使用します。
急性化膿性乳腺炎にならないよう、乳頭や乳輪をきれいに拭いて清潔を保ちます。
急性化膿性乳腺炎
授乳は中止して、乳房を冷やします。
抗菌薬などを使用します。
膿(うみ)のかたまりができている場合は、皮膚を切開するなどして膿(うみ)を出します。
抗菌薬を漫然と使用すると、薬剤耐性菌感染の心配があるため、適切な切開で膿(うみ)を出す治療は大切です。
慢性乳腺炎
抗菌薬などを使用します。
炎症を繰り返しやすいので、根本的な治療として、細菌に感染した乳腺や瘻孔(ろうこう)を切除したり、必要に応じて陥没乳頭の手術を行うこともあります。

感染経路

急性化膿性乳腺炎
乳頭の小さな傷や乳汁の出口から細菌が侵入して感染します。
慢性乳腺炎
一時的に症状が治った後も乳腺内に生き残った細菌が集まり、炎症を繰り返します。
瘻孔(ろうこう)が残っていると再燃する可能性があります。

・法研:六訂版 家庭医学大全科
・金原出版:産婦人科感染症マニュアル
などを参考にして作成