バイオマーカーとは、ある疾患の有無や進行状態を示す目安となる生体変化の指標で、疾患の診断、医薬品の作用機序の解析、治療介入に対する反応の確認、および薬物の安全性・毒性を評価するためのツールとして、なくてはならないものとなっています。

バイオマーカー研究開発部では、分子マーカー(血液中の物質など)およびイメージングマーカー(PET*やMRI**検査など)の技術を主軸に、研究・開発を進めています。現在、注力している研究領域である感染症、精神・神経系疾患および新たな成長領域(がんなど)を中心に、実用性の高い新規バイオマーカーを確立し、医薬品開発の精度向上や効率化を推進しています。また、臨床有用性の高い診断薬を開発し、医薬品・ヘルスケア製品の価値最大化および適正使用を推進するとともに、それらを駆使したヘルスケアサービスを創造し、より便利な医療環境の整備に貢献しています。

* Positron Emission Tomography

** Magnetic Resonance Imaging



感染症マーカー

2019年に勃発した未曽有のパンデミックにより、感染症の診断環境や社会ニーズは大きく変化しました。このような状況のなかで、感染症に対する社会不安を徹底的に取り除くことを目標に掲げ、「ワクチン接種後の評価指標の確立(抗体価に関するエビデンス取得)」、「次のパンデミックを見据えた新規診断法の開発」に関する研究を推進しています。また、新たにサービスを開始した下水疫学調査の社会浸透を加速するための技術開発を行っており、本調査により感染状況が把握できる社会の実現を目指していきます。

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診断薬に関する研究・開発では、従来アトピー性皮膚炎患者の重症度を把握するための検査として使われてきた、TARC(Th2 ケモカインTARC* kit)検査を、新たにCOVID-19の重症化リスクのある患者を予測できる診断マーカーとして、2021年に適応拡大の承認を取得しました。このマーカーを活用することによって、入院療養や重症化の抑制薬の投与等の重点的なケアが必要な患者を特定することで、医療体制逼迫の軽減につながることが期待されます。私たちは、こうした現場のニーズに応える取り組みを推進しています。

このように、ワクチン、治療薬と歩調を合わせて診断薬や検査法を提供することで、感染症のリーディングカンパニーとしての責務を果たすことに貢献していきます。

TARC(thymus and activation-regulated chemokine)は、リンパ球の一つであるTh2細胞を炎症部位に遊走させるケモカイン群の一つ(1996年にシオノギにて発見・同定)



CNS疾患マーカー

CNSCentral Nervous System:中枢神経系疾患は、病態が複雑で多岐に渡るため、診断法や治療法の開発が極めて困難な領域であり、治療薬開発を成功させるためには、従来の研究・開発法に加えて、客観的指標となる堅牢なバイオマーカーを確立し、前臨床での評価や治験等に積極的に取り入れることが重要であると考えられています。私たちは、CNS疾患における脳機能の変化を可視化し定量的に評価できるPETやMRIといった「イメージングマーカー」、およびCNS病態や治療薬投与により変化するタンパク質や遺伝子、代謝物を定量する「分子マーカー」に着目して創薬への活用を進めています。