国際イベント
に参加する一般市民・
ボランティア
の方のためのマスギャザリング
感染症ナビ
広域感染症疫学・制御研究部門 教授加來 浩器先生
海外から感染症も
やってくる?!
国際交流が盛んな現代社会では、海外から人々が日々、入国しています。
海外から訪れるのは人々だけではありません。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行にみられるように、人々の流入・移動に伴って、海外で発生している感染症も入ってくることがあります。
マスギャザリングを
知ってますか?
マスギャザリングとは、一定期間、限定された地域に、同じ目的で多くの人が集まることです。マスギャザリング・イベントは限られた空間で大人数が密に接するため、感染症が広がりやすい環境です。
特に、スポーツ、文化イベント、博覧会などの国際的なマスギャザリング・イベントでは、日本ではまれな、重い症状の感染症も発生・流行するリスクが高くなります。
感染症とは?
目には見えないウイルスや細菌などが原因
感染症は、ウイルスや細菌などの病原体が体内に侵入し発熱・咳・嘔吐・下痢・発疹などの症状があらわれる病気です。症状は軽いものから生命にかかわる重いものまであり、また、感染力も弱いものから強いものまでさまざまです。
どのように感染するのか
感染のしかたには、次のようなルート(感染経路)などがあります。日常生活のありふれた行動・動作などから、あなたの体内に病原体が入る可能性があります。なお、感染経路は病原体の種類によって異なり、複数の感染経路をとるものもあります1)。
- 咳やくしゃみのしぶきを吸い込む―飛沫感染
- 空気中にただよう病原体を吸い込む―空気感染
- 手指などでふれて―接触感染
- 食べ物や飲み物などから―経口感染
- 蚊に刺されて―蚊媒介感染
どのように発症する?
- 細菌やウイルスなどの病原体を含む感染源があること。
- 飛沫感染、接触感染など病原体がたどる感染経路があること。
- 病原体に対する免疫力(体の抵抗力)が弱いこと。
以上の場合に感染症を発症することがあります。
海外ではどんな感染症が
流行している?
麻しん・風しん・ノロウイルス感染症・水痘・新型コロナウイルス感染症(COVID-19)などは、世界中で発生しています。
インフルエンザは、海外では日本の流行シーズンとは異なることに注意が必要です。
インフルエンザ | 南半球では4~9月に、熱帯・亜熱帯地域では通年性に発生します。 |
---|---|
風しん (三日ばしか) |
世界中で発生していますが、中国・フィリピン・ベトナムで多くみられます。 |
デング熱 | 熱帯・亜熱帯地域 |
髄膜炎菌感染症 | アフリカ中央部に多発。 |
A型肝炎 | 世界中でみられますが、衛生状態が悪く、飲用水の管理が悪い地域では感染リスクが高くなります。 |
水痘 (水ぼうそう) |
世界中で発生がみられます。 |
ノロウイルス感染症 | 世界中で発生がみられます。 |
麻しん (はしか) |
世界中で発生がみられます。 |
新型コロナウイルス 感染症(COVID-19) |
世界中で発生がみられます。 |
国際的マスギャザリング・
イベントで
注意すべき
感染症は?
それでは、国際的マスギャザリング・イベントで注意すべき感染症にはどのようなものがあるでしょうか。
冊子P8の表が参考になります。
特に注意すべき感染症1)6)7)
下記の感染症は、感染力が強く、重い症状が現れることがあり、国際的マスギャザリング・イベントでは多数の患者が発生する(集団発生)リスクが高く、特に注意が必要です4)5)。
- 麻しん(はしか)
- デング熱
- 髄膜炎菌感染症
- 風しん(三日ばしか)
- ノロウイルス感染症
- 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)
最新の情報は、下記のサイトをご覧ください。
感染症にかからないためには、どうすればよい?
感染症にかからないためには、病原体に接しない・とり除く(減らす)ことや自分の免疫力を高めることです。
そのために、重要になるのが、手洗い・マスク・うがい・ワクチンなどです。
感染症を予防しよう
手洗い
手指についた病原体を石けんと流水で洗い流します。洗い残しが起こりがちですので、ていねいに洗うことが大切です8)。
感染症を予防しよう
マスク
マスクは、咳やくしゃみ(それらに含まれる病原体を含む)の飛び散りを防ぐ効果があり、状況に応じて積極的な着用が勧められます(咳エチケット)9)10)。
感染症の流行時や、混み合った場所、屋内や乗り物などの換気が不十分な場所では、病原体をできる限り吸い込まないようにするために着用します。
感染症を予防しよう
うがいなど
喉や口のなかの清潔を保つことはとても重要です。うがいや歯みがきで、病原体を洗い流しましょう11)12)。
感染症を予防しよう
蚊対策
デング熱などの蚊媒介感染の予防対策は、1.蚊を発生させないこと、2.蚊に刺されないようにすること(肌を出さない衣服、虫よけスプレー)です。
感染症を予防しよう
体調を整える
体調不良な状態では、免疫力(体の抵抗力)も弱まります。十分な栄養や睡眠で、体調を整えましょう。
感染症を予防しよう
ワクチン
感染症を予防するには、自分の免疫力を高めることが大事です。ワクチンは、感染症を予防することができる有効な手段です。国際マスギャザリング・イベントの前には、ワクチンの接種を検討するとよいでしょう。
お役立ちサイト
※下記リンクをクリックすると外部サイトに移動します。
-
FUSEGU2020
-
厚生労働省検疫所(FORTH)
https://www.forth.go.jp/index.html -
外務省 海外安全ホームページ: 医療・健康関連情報
https://www.anzen.mofa.go.jp/kaian_search/ -
国立感染症研究所: 疾患名で探す感染症の情報
https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases.html -
日本渡航医学会: 国内トラベルクリニックリスト
http://jstah.umin.jp/02travelclinics/index.html
おわりに
皆さまの感染症に対するイメージはどのようなものでしょうか。無関心や無視は困りますが、必要以上の恐怖心もよくありません。「彼を知り己を知れば百戦危うからず」という故事があります。感染症について正しい知識をもち(彼を知る)、自分を守る対策をとれば(己を知る)、感染症への過剰な恐怖心は和らぐことでしょう。このナビが、国際的マスギャザリング・イベントに参加される方々の感染症予防に役立つことを願います。
監修 加來 浩器(防衛医科大学校 防衛医学研究センター 広域感染症疫学・制御研究部門 教授)
- 1)厚生労働省: 保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版). 2018年3月. (2022年10月一部改訂).
- 2)厚生労働省検疫所(FORTH): お役立ち情報. 感染症についての情報.
- 3)CDC: Influenza - Chapter 4. 2020 Yellow Book. Travelers' Health. 2020.
- 4)国立感染症研究所 感染症疫学センター: 2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けての感染症のリスク評価~自治体向けの手順書~. 2017年10月5日.
- 5)国立感染症研究所 感染症疫学センター: 東京オリンピック・パラリンピック競技大会開催に向けての感染症リスク評価 (更新版). 2021年6月23日.
- 6)国立感染症研究所: デング熱とは.
- 7)厚生労働省: 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第9.0版.
- 8)厚生労働省: 高齢者介護施設における感染対策マニュアル改訂版(2019年3月).
- 9)CDC: MMWR Recomm Rep. 66(1): 1-34, 2017.
- 10)厚生労働省: 咳エチケット.
- 11)現代医学教育博物館: かぜ、インフルエンザの予防―正しいうがいのしかた―.
- 12)厚生労働省: e-ヘルスネット「口腔ケア」 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/teeth/yh-010.html