財団について

 高度な文明社会においても依然として病因が解明されず、その治療法が確立されていない病気が多く残されております。これらに対する有効な対応がなされなければ真の健康で明るい生活の実現は期し得ません。
 近年我が国でも高齢化が進んでおりますが、単に生命の延長ばかりでなく、物心両面において内容の充実した健康で豊かな生命の維持が願われております。このテーマへの医学面からの対応は、今や国家的命題となっており、医療の一端を担う製薬企業に課せられた責任は重いものがあります。
 一方、世界の経済大国としての我が国も、その科学技術はある分野を除き欧米先進国に比べいまだに立ち遅れており、特に基礎研究領野でのギャップが指摘されています。
 医薬品の創製については、従来の対症療法中心の研究に加えて、今後は病気の本質にせまるアプローチがなされなければなりません。したがって基礎、臨床を問わず最近急速に進歩をとげているバイオテクノロジー等の先端技術を駆使した細胞レベルでの生命科学の研究を飛躍的に発展させることが特に必要であり、そのためには幅広い各学問分野での英知の結集と、産・官・学の相互協力による研究の振興と人材の育成が望まれております。
 このような現状において、細胞科学に関する研究の助成、研究者の育成、及び国際交流の推進を行い、21世紀に向けて、我が国の生命科学研究を国際的に最高水準にまで高めようと念願するものであります。
 ここに、塩野義製薬株式会社は創業110年を記念し、同社の拠出資金により、細胞科学研究財団を設立し、この目的を達成しようとするものであります。