知っておきたい!高齢者の感染症感染性胃腸炎(ノロウイルス感染症)
注 意
症状の原因が、感染症ではない可能性も十分あります。
自己判断せずに、医療機関を受診しましょう。
また、高齢者は目立った症状がでにくいことがあり、見た目には軽症にみえても深刻な状態に進行している場合もあります。
「普段の反応と違う」、「笑顔がみられない」、「なんだか元気がない」などの日常のなかの変化を見逃さず、早く気づくことが大切です。
感染性胃腸炎
(ノロウイルス
感染症)
ノロウイルスは、冬季の感染性胃腸炎の主要な原因となるウイルスです。
感染力が強く、少量(100個以下)のウイルスでも感染します。
便や吐物に直接ふれていなくても、トイレのノブにふれた手を十分に洗わないで調理をするなどして、ウイルスが人の手を介して口から体内にとり込まれ、腸管で増殖して下痢や嘔吐を引き起こすことも多いので、注意が必要です。
症状
- 吐き気・嘔吐、腹痛、下痢
経 過
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多くの場合、2〜7日で治癒します。
感染力は急性期がもっとも強く、便中にウイルスが3週間以上排出されることもあります。
合併症
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脱水、けいれん、肝機能異常、脳症など。
免疫力が低い高齢者の場合には、重症化し、命にかかわることもあります。 - 高齢者の場合、吐物を誤嚥することで誤嚥性肺炎を起こすこともあり、注意が必要です。
感染経路など
感染経路
- 飛沫感染、接触感染、経口(糞口)感染、空気感染
- ノロウイルスは、汚染された貝類(カキなどの二枚貝)や調理済み食品を生あるいは十分加熱しないで食べた場合に感染するほか、ヒトからヒトへの感染の例が多く報告されています。
- 便や嘔吐物が感染源となるほか、嘔吐物が乾燥してエアロゾル化したものによる空気感染もあります。
病原体
主としてノロウイルス
潜伏期間
12~48時間
予防と治療
予 防
- ワクチンはありません。
- 手洗いを正しく行いましょう(液体せっけんを使用し、指先から手首まで丁寧に泡立てて30秒~1分以上こすり合わせ、流水ですすぐ)。
- ノロウイルスはアルコールによる消毒効果が弱いため、アルコールによる手指衛生は有効ではありません。
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食品は十分加熱してから食べましょう。
ノロウイルスは、85℃以上で1分間以上の加熱を行えば感染性はなくなるとされています。 -
便や吐物には直接ふれないことが原則ですが、便器や床についた場合、処理する者が感染しないよう、厳重に注意をして処理することが重要です。
嘔吐物や排泄物を処理する際は、汚れた便器や床などを次亜塩素酸ナトリウム液(0.1~0.5%)で確実にふき取ります。
その際、手袋、マスク、ゴーグルなどを着用して病原体にふれないようにすることが大切です。
(参考サイト)塩野義製薬:保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)を活用するために(16:57~19:18) - 衣類に便や嘔吐物が付着している場合は、手袋、マスク、ゴーグルなどを着用して、軽く洗い流してから、次亜塩素酸ナトリウム液(0.05~0.1%)につける(10分程度)か、85℃以上で1分間以上熱湯消毒します。
治 療
- 対症療法(整腸剤、痛み止めなど)。
- 嘔吐が半日~1日経っても止まらず、水分がとれない場合には受診をしましょう。
- 激しい吐き気、水様便がみられる場合は、すみやかな受診が必要です。
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下痢や嘔吐症状が続くと、脱水を起こしやすくなるため、水分補給が必要です。
口から水分をとれない場合は、補液(点滴)が必要となります。
厚生労働省:高齢者介護施設における感染対策マニュアル改訂版. P53-56, 2019年3月.
厚生労働省:介護現場における感染対策の手引き第2版. P128-132, 2021年3月.
国立感染症研究所:ノロウイルス感染症とは.
などを参考にして作成