• 下水疫学調査サービスとは

    下水疫学調査サービスは、下水疫学の手法を用いて下水中に存在する新型コロナウイルスのRNAの濃度を検出することにより、その地域の新型コロナウイルスの蔓延状況を調査するサービスです。

    新型コロナウイルスは感染後、発症までに糞便中への排泄が始まることから、下水中のウイルス痕跡を測定することで、無症状で検査を受けていない陽性者を含めて、地域にどのくらい新型コロナウイルスが蔓延しているかをバイアスなく把握することができ、感染対策の判断材料としてご利用いただけます。

  • 株式会社AdvanSentinel設立による下水疫学調査サービスの提供

     塩野義製薬は、2022年1月に下水モニタリングを始めとする公衆衛生上のリスク評価を目的とした島津製作所との合弁会社、株式会社AdvanSentinelを設立しました。このたび設立したAdvanSentinel社は、塩野義製薬の強みであるサイエンスを活かした新規分析手法の開発力や島津製作所の強みである環境中の分子測定技術などに加え、両社が培ってきた下水モニタリングを通じたネットワークを持ちよることで、新型コロナウイルス感染症にとどまらない、次なるパンデミックや公衆衛生上のリスク把握などに向けたオールジャパン体制の構築を目指します。

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サービスの概要

  • 下水疫学調査サービスの特徴

    下水疫学による新型コロナウイルスの調査は欧米各国で行われていますが、日本においてはそれらの国に比べて感染者の割合が相対的に少ないという特徴があります。そのため、従来手法では感染者が少ないときの検出が難しく、流行初期あるいは終息期の捕捉が困難でした。

    本サービスは北海道大学との共同研究により確立した北大・シオノギ法を用いています。従来法より100倍程度高感度な測定系により、感染者数が比較的少ない地域においても新型コロナウイルスの蔓延状況を捕捉することが期待されます

既存の臨床検査との比較

既存の臨床検査 下水疫学調査
基本的に発症後に検査 尿や糞便中に排出されれば、無症状でも検出可能
集団での感染状況を知るには時間と労力がかかる 集団での感染状況を容易に把握できる
個人情報を適切に取り扱う必要がある 個人が特定されない
インフォームドコンセントが必要 インフォームドコンセントが必要ない
一人一検体でコストがかかる トータルコストが安い

 

サービス提供方法

①北大・シオノギ法による定量解析

従来手法比100倍高感度の北大・シオノギ法により、下水中の新型コロナウイルスRNA量を測定します。

②(オプション)次世代シークエンサーによる変異解析

北大・シオノギ法で解析したサンプルで一定程度の濃度以上のサンプルは次世代シークエンサーを用いた変異解析を実施することが出来ます。これまでの実績では、アルファ株及びデルタ株を当該エリアにおいて、臨床で確認するよりも早く、下水から検知をすることが出来ました。本調査はオミクロン株にも適用可能です。本調査には一定程度の新型コロナウイルス濃度が必要であるため、北大・シオノギ法による定量解析のオプションと位置付けています。

サービスの流れ

当社、下水疫学調査サービスについてのご質問、資料請求は以下のフォームよりお問い合わせください。

自治体向けサービス

各自治体の下水処理場より一定頻度で下水を採取し、サンプル受領後4~5営業日以内に新型コロナウイルスの測定結果をお返しします。採水施設の上流域における新型コロナウイルスの蔓延状況・流行の起点や収束の疫学調査指標として使うことができます。

オプションサービスでは、新型コロナウイルスの変異株特定を目的とした次世代シーケンサー(NGS)を用いた解析受託も承っております。本サービスにより地域内の変異株の蔓延状況の把握することができます。解析には一定量のRNA精製物が必要なため、通常の下水疫学調査サービス(定量解析)との併用のみ承ります。

business image

下水処理場(サンプル採取 100ml程度)

▼ 1日

シオノギ

  • 研究センターで解析
  • データ分析
  • レポート作成

▼ 4~5営業日

地方自治体

  • 感染対策・経済対策など都市機能維持のための判断材料
  • 医療体制整備・医療資源確保などの判断材料

▼ 要相談

地方自治体

  • 新たな変異株の動向監視
  • 早期対策体制構築の判断材料


各種施設向けサービス

施設ごとの新型コロナウイルス陽性者発生状況を調査することが可能です。下水疫学調査により発生を確認したのち、PCR検査をすることにより感染者およびクラスターの発生を早期に検知することができ、感染の拡大を未然に防ぐことが可能となります。

・病院

・老人介護施設

・寮など集団生活を行う施設

・ビル

・イベント会場

・コンサートホール

※現時点では、浄化槽・原水槽のある施設に限ります。

business flow

各種施設(サンプル採取 100ml程度)

▼ 1日

シオノギ

  • 研究センターで解析
  • データ分析
  • レポート作成

▼ 4~5営業日

各種施設

  • 感染者の特定(PCR検査等)
  • 濃厚接触者の特定、健康観察
  • 感染拡大予防策の実行

下水疫学について

  • 下水疫学とは

    下水疫学は、下水中の病原性微生物(ウイルスを含む)のRNAを測定することにより、各種の疫病の発生・流行を補足する疫学調査の手法で、従来はノロウイルスなどの流行調査に使われてきました。新型コロナウイルスは、肺炎など急性呼吸器症候群を起こすウイルスですが、腸管で増幅し、感染者の症状の有無に関わらず糞便中から検出されることが報告されています。このため、下水中の新型コロナウイルスを検出することにより、地域の蔓延状況を把握する試みが欧米をはじめ各国で行われています。
    なお,これまでに下水処理場の流入下水中から感染性を有する新型コロナウイルスが検出されたという報告はありません。

  • 測定原理

    各種施設や下水処理場などから採取した下水サンプルから、ウイルスRNAを濃縮し、定量PCRでウイルスRNA濃度を測定します。人の鼻汁や唾液などから行うPCR検査と比べ、下水サンプルに含まれるRNAの量は非常に微量であるため、北海道大学と塩野義製薬が独自に開発したウイルスRNAの濃縮および定量PCRの高感度化など特殊な技術を用いて測定しています。

下水疫学調査サービスに関する弊社のプレスリリース

 

1.      プレスリリース: 2021年3月19日
下水中の新型コロナウイルスの自動解析体制構築へ

~ウイルス感染症流行及び変異株の早期検知・大量検査インフラの構築に期待~

2.      プレスリリース: 2021年4月14日
大阪府で下水から新型コロナ流行状況のモニタリングを開始

~ウイルス感染症流行及び新規変異株の早期検知を目的とした社会実装~

3.      プレスリリース: 2021年6月2日
新型コロナウイルスを含む感染症領域の下水モニタリングに関する塩野義製薬と島津製作所による業務提携の基本合意書の締結について

4      プレスリリース: 2021年6月11日
新型コロナウイルスを含むすべてのウイルスおよび細菌の高感度検出技術に関する 北海道大学と塩野義製薬の独占的ライセンス契約締結について

5.      プレスリリース: 2021年6月14日
新型コロナウイルスの下水疫学調査サービスの開始について

6.      プレスリリース:2021年12月7日
新型コロナウイルスの下水疫学調査における変異解析サービスの開始について