AMRへの取り組みの背景
今やAMRは、現実的かつ喫緊のグローバルな脅威となっています。
耐性菌による死亡者数はグローバルで年間70万人と報告されていますが、このまま何も対策を講じなければ、2050年にはがんによる予測死亡者数を上回ることになります。また、世界経済にも大きな影響を与えかねない重大な課題であり、社会に対して直接的・間接的に深刻な損失をもたらす可能性を有しています。
効果のある抗菌薬が開発され市場に投入されなければ、将来的には現在の感染症治療で用いられている抗菌薬では命を救うことができなくなり、手に負えない状況になる可能性さえあります。
これらのことから、各国政府や保健行政機関は、AMRをグローバル、地域・国レベルでの優先度の高い社会課題として取り上げており、グローバル規模での対応が急務となっています。
WHO、国連によるAMRへの取り組み
WHO Global Action Plan
- 各組織との共同によるWorld Health Assembly
- 下記5つの目的にしたがったグローバルアクション計画
- 1AMRに対するawarenessと理解の促進
- 2サーベイランスや研究成果に基づき、エビデンスや知識を強化
- 3効果的な公衆衛生、感染予防手段等による感染頻度の減少
- 4ヒトだけでなく動物保健の観点からも抗菌薬の使用を適正化
- 5持続的な投資を可能にするための経済的実例の創出
国連ハイレベル会合(2016年9月)
- 世界の指導者らによる、多剤耐性感染症の拡大を抑制するための、これまでにないレベルの注意喚起
- 各国は、AMRに関する国家行動計画を策定するコミットメントを再確認
- 各国首脳陣は、薬物耐性の感染症やヒト、動物および作物に使用される抗菌薬の量を監視するための、より強固なシステムの必要性、ならびに国際協力と資金獲得の強化が必要であることを認識
- 各国首脳陣は、より効果的で経済的にも受容可能な新規医薬品の研究開発、迅速な診断検査、およびその他の重要な治療への投資に対して、新たなインセンティブを要求
新規抗菌薬が緊急に必要な薬剤耐性菌(WHO公表)
WHO(世界保健機関)は2017年2月27日、抗菌薬が効かない薬剤耐性菌の中でも「人類の健康に最も大きな影響を与える」として、新たな抗菌薬開発の緊急性が高い薬剤耐性菌12種類のリストを公表しました。
WHOがこうしたリストを公表したのは今回が初めてで、「薬剤耐性菌が増えており、治療の選択肢が急速になくなっている」と、新たな抗菌薬開発の必要性を訴えました。
リストアップされた12の細菌は、新規抗菌薬開発の緊急性に応じて3つの段階に分類され、カルバペネム耐性を持つ菌種が最も緊急性が高く、重大なクラスに位置付けられています。
緊急性(重大)
アシネトバクター・バウマニ | カルバペネム耐性 |
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緑膿菌 | カルバペネム耐性 |
腸内細菌目細菌 | カルバペネム耐性 |
緊急性(高)
エンテロコッカス・フェシウム | バンコマイシン耐性 |
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黄色ブドウ球菌 | メチシリン耐性 バンコマイシン耐性 |
ヘリコバクター・ピロリ | クラリスロマイシン耐性 |
カンピロバクター | フルオロキノロン耐性 |
サルモネラ菌 | フルオロキノロン耐性 |
淋菌 | セファロスポリン耐性 フルオロキノロン耐性 |
緊急性(中)
肺炎レンサ球菌 | ペニシリン非感受性 |
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インフルエンザ菌 | アンピシリン耐性 |
赤痢菌 | フルオロキノロン耐性 |