2021/07/13

低中所得国での薬剤耐性感染症の治療のための抗菌薬へのアクセスに関する 塩野義製薬、GARDP、CHAIによる基本合意書の締結について

 

塩野義製薬株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:手代木 功、以下「塩野義製薬」)とThe Global Antibiotic Research and Development Partnership(本部:スイス、ジュネーブ、代表: Manica Balasegaram、以下「GARDP」)、Clinton Health Access Initiative(本部:米国マサチューセッツ州、CEO:Iain Barton、以下「CHAI」)は、低中所得国において治療選択肢が限られる薬剤耐性(antimicrobial resistance: AMR)感染症の患者に対して、必要とされるセフィデロコルへのアクセスに関する基本合意書を締結しましたので、お知らせいたします。

 

セフィデロコルは、「トロイの木馬」と呼ばれる新しいメカニズムにより、多剤耐性菌を含むグラム陰性菌の外膜を通過して抗菌活性を発揮する新規のシデロフォアセファロスポリン抗菌薬です。本薬は2019年11月に米国食品医薬品局(FDA)(製品名:FETROJA®1、および2020年4月に欧州委員会(EC)(製品名:FETCROJA®2より承認を取得しております。

 

今回の基本合意書の締結を通じて、低中所得国でのセフィデロコルのアクセスにおける様々な障壁を克服するために、塩野義製薬、GARDPおよびCHAIは、医師向けの臨床ガイダンス作成やトレーニングの実施等、適正使用を確実に実施するための手段を用いて対象となる各国政府やパートナー企業を支援するために、それぞれの専門知識を駆使していきます。

 

AMRは、細菌、ウイルス、真菌、または寄生虫に対して薬剤が効かなくなり、感染症の治療が困難または不可能になることです。特に、大腸菌、緑膿菌、肺炎桿菌、アシネトバクター・バウマニなどは、肺炎、尿路感染症、血流感染症、敗血症などのさまざまな重症細菌感染症を引き起こす原因菌であり、多くの場合、現在利用可能なほとんどの抗菌薬に耐性を示す場合があります。これら耐性の感染症例の場合、セフィデロコルが有望な治療薬として期待されています。適応症と用法、または警告と注意を含む服用情報は、米国食品医薬品局および欧州医薬品審査庁の医薬品表示に記載されています。

 

AMRは、世界的に拡大している公衆衛生上の脅威であり、毎年70万人以上が死亡しています。世界保健機関(WHO)は、AMRを健康と経済の発展に対する主要なリスクであり、SDGsを達成するうえでの障壁であると特定しています3。2021年6月に開催されたG7保健大臣会合では、抗菌薬の持続的な供給や供給網の多様化、イノベーションの確保など、AMRを重要な戦略分野と位置づけた行動に関する宣言が採択されました4。現在、世界中で警戒が叫ばれているCOVID-19とは異なり、AMRは気付かれることなく国や病院で流行しているサイレントパンデミックと言われています5

 

GARDPのMedical DirectorのSubasree Srinivasan博士は次のように述べています。

「薬剤耐性感染症は単なる統計上のお話しではありません。それは、しばしば人生の暗転、大切なものの棄損や喪失を意味します。薬剤耐性菌は、年齢、場所を問わず、誰にでも感染する可能性がありますが、最初に最も強く影響を受けるのは最も脆弱な人々です。 CHAIと塩野義製薬とのこのコラボレーションは、低中所得国において治療の選択肢が限られている重症細菌感染症で苦しむ人々に対して、抗菌薬を届ける能力を向上させ、適切かつ持続可能な方法でアクセスできるようにすることを目的としています。」

 

塩野義製薬 取締役副社長兼ヘルスケア戦略本部長の澤田拓子は次のように述べています。

「我々はAMRを含む感染症領域におけるアンメットニーズの解決を図っています。AMRは現在世界中で70万人の方が亡くなっており、新規の治療薬が必要とされています。一方、本領域では、アクセスを考慮するだけでなく、治療薬適正使用のために診断や医学・衛生環境の改善なども並行して進めて行く必要があります。GARDPならびにCHAIは現地における規制や医学環境に関する造詣が深く、今回のコラボレーションはAMRの難しい課題を解決する大きな一歩になると考えています」

 

薬剤耐性感染症の脅威が増え続ける一方、近年、新たに開発された新規抗菌薬はごく僅かです。新規治療薬に対する認識と特定地域での承認の欠如、経済的および規制上の課題、または医薬品の供給不足を含むアクセスへの障壁が、あらゆる発展段階の国でのアクセスに大きな影響を与えています。しかしながら、これらの課題は低中所得国において特に重要です。

 

CHAI のChief Science Officer and Executive Vice President Infectious DiseasesのDavid Ripin博士次のように述べています。

「低中所得国における抗菌薬アクセスに貢献する、GARDPおよび塩野義製薬とのこのコラボレーションに喜びと期待を感じています。このイニシアチブを通じて、毎年数千人の命を救い、革新的な抗生物質の開発に拍車をかける可能性があります。」

 

 

参考

1.         プレスリリース:2019年11月15日
「FETROJA®(cefiderocol)の米国における新薬承認について」

2.         プレスリリースリリース:2020年4月28日
「FETCROJA®(cefiderocol)の欧州における新薬承認について」

3.         https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/antimicrobial-resistance

4.         https://www.who.int/news/item/09-06-2021-record-response-to-who-s-call-for-antimicrobial-resistance-surveillance-reports-in-2020

5.         https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/antimicrobial-resistance

 

 

 

パートナーについて

 

GARDP | Global Antibiotic Research and Development Partnershipについて

GARDP は、健康に最大の脅威をもたらす薬剤耐性菌感染症の新規治療薬を開発するスイスに拠点を置く非営利団体です。抗菌薬を必要とするすべての人が、有効で手頃な価格の治療を受けられるようにするため、2016年に世界保健機関 (WHO) およびDNDi (Drugs for Neglected Diseases initiative:顧みられない病気の新薬開発イニシアティブ) により設立されました。2025年までに薬剤耐性菌感染症を克服するための5つの新しい治療薬を開発することを目指しています。GARDPは、ドイツ、日本、ルクセンブルグ、モナコ、オランダ、南アフリカ、スイス、英国の各政府、ならびに国境なき医師団 (MSF) および民間財団から資金提供を受けています。また、GARDP Foundationとして法人登録されています。www.gardp.org

 

CHAI | Clinton Health Access Initiative, Inc.について

CHAIは、低中所得国の人々の命を救い、病気の負担を軽減することに取り組んでいるグローバルヘルス組織です。CHAIはパートナーと協力して、高品質の医療システムを構築および維持するための政府および民間部門の能力を強化することを支援します。詳細については、www.clintonhealthaccess.orgをご覧ください。

 

塩野義製薬について

塩野義製薬は、143年の歴史を持つ創薬型製薬企業です。「常に人々の健康を守るために 必要な最もよい薬を提供する」という基本方針に基づき、患者さまの利益に貢献しています。当社は現在、感染症、痛み、CNS障害、心血管疾患、胃腸病学など、いくつかの治療分野において製品を販売しています。当社の研究開発は現在、感染症と中枢神経系疾患の2つの治療分野を対象としています。詳細については、https://www.shionogi.com/jp/ja/をご覧ください。