・ 広域阻害スペクトラムを有するβ-ラクタマーゼ阻害剤の獲得
・ 抗菌薬研究開発のケイパビリティと米国でのネットワークを強化
塩野義製薬株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役会長兼社長CEO:手代木 功、以下「塩野義製薬」または「当社」)は、2023年6月21日に開催された取締役会において、Qpex Biopharma, Inc.(本社:サンディエゴ、President & CEO:Michael Dudley、以下「Qpex社」)を完全子会社化することを決議し、2023年6月25日に契約を締結しましたので、お知らせいたします。
1. 本子会社化の目的と背景
当社は、取り組むべきマテリアリティ(重要課題)として、「感染症の脅威からの解放」を特定し、「治療薬にとどまらない感染症のトータルケア」と「持続可能なビジネスモデル」のグローバル展開に向けた取り組みを進めています。
Qpex社は、薬剤耐性(Antimicrobial resistance:AMR)を持つ細菌を標的とする新規抗菌薬の創薬・開発に焦点を当てた製薬企業であり、多様なβ-ラクタマーゼに対して広域阻害スペクトラムを有する新規β-ラクタマーゼ阻害剤であるボロン酸誘導体Xeruborbactam1を創出しています。Xeruborbactamは薬剤耐性グラム陰性菌によって引き起こされる感染症に対して、カルバペネム系抗生物質meropenemを併用薬とする注射剤OMNIvance® とセフェム系抗生物質ceftibutenを併用薬とする経口剤ORAvance™2としてPhase1試験が進められています。また、Qpex社は新規抗菌薬の探索や臨床開発の豊富な経験を有しているのみならず、米国において生物医学先端研究開発機構(BARDA)をはじめとする各規制当局などとの多様な外部ネットワークを構築しています。
Qpex社のAMRに対する有望な開発品や抗菌薬研究開発のケイパビリティ、米国における外部ネットワークは、当社のビジネスの方向性と合致しており、シナジー効果の発揮を期待できることから、このたび同社を完全子会社化する契約の締結に至りました。
<子会社化によって獲得できる開発品と感染症研究・開発のノウハウ>
- ・Xeruborbactamの独占的開発・製造・販売権をグローバルで獲得
・深刻化するAMR と戦うためにXeruborbactamと他の抗菌薬との組み合わせで開発を推進
・抗菌薬の研究・開発経験が豊富な人材を獲得し、米国における感染症創薬をドライブできる体制の構築
・BARDAをはじめとする各規制当局、学術的なパートナーなど、Qpex社の貴重な外部ネットワークの取り込みによる、感染症領域におけるパートナ
リングやパイプライン拡大の機会創出と研究戦略の加速化
当社は本契約に基づき、対価として、手続き完了時に一時金100百万ドルを米国子会社Shionogi Inc.(本社:ニュー・ジャージー州)を通じてQpex社の既存株主に支払います。また、今後のQpex社が有する開発品の進展や承認取得に応じたマイルストンとして、最大で総額40百万ドルをQpex社の既存株主に支払います。今後、Qpex社はShionogi Inc.の子会社として事業を継続する予定です。
- 2. Qpex社の概要
① 名称 |
|
② 本社所在地 |
米国サンディエゴ |
③ 代表者の役職・氏名 |
President & CEO: Michael Dudley, PharmD |
④ 事業内容 |
感染症領域における医薬品の研究・開発 |
⑤ 資本金 |
当該会社の意向により非公表とさせて頂きます。 |
⑥ 設立年 |
2018年(非上場企業) |
⑦ 大株主および持ち株比率 |
当該会社の意向により非公表とさせて頂きます。 |
⑧ 上場会社と当該会社との間の関係 |
当社との間には資本関係、人的関係、取引関係のいずれも該当事項はありません。 |
⑨ 当該会社の連結経営成績および連結財政状態 |
当該会社の意向により非公表とさせて頂きます。 |
① 異動前の所有株式数 |
0株(議決権所有割合:0.0%) |
② 取得株式数 |
発行済株式のすべて |
③ 取得価額 |
100百万ドル |
④ 移動後の所有株式数 |
発行済株式のすべて (議決権所有割合:100%) |
4. 取締役会決議日
2023年6月21日
5. 契約締結日
2023年6月25日
6. 完全子会社化の日程
2023年7月初旬(予定)
7. 今後の見通し
Qpex社の完全子会社化が当期の連結業績に与える影響は、現在、精査中です。
以上
【Xeruborbactam】
Xeruborbactamは β-ラクタム系抗生物質に対する耐性を惹起するβ-ラクタマーゼに対して広域阻害スペクトラムを有する新規β-ラクタマーゼ阻害剤です。β-ラクタマーゼは多様な構造を有しており、ペニシリン、セフェム、カルバペネムなどのβ-ラクタム系抗菌薬を分解する酵素であり、抗菌薬の効果を不活化する耐性機構の一つです。Xeruborbactamは、既存のβ-ラクタマーゼ阻害剤が阻害できないメタロ型β-ラクタマーゼを含む広範囲のβ-ラクタマーゼを阻害することによって、CDC が深刻または緊急の抗菌薬耐性の脅威とみなしている薬剤耐性のアシネトバクター属、緑膿菌、および腸内細菌目細菌に対して強力な阻害活性を示すことから、AMR治療薬として期待されています。また、Xeruborbactamを含む開発品はBARDAから全額または一部資金の提供を受けて進められています。
【AMR】
AMRは「サイレントパンデミック」と呼ばれ、緊急かつ重要な公衆衛生上の脅威です3。最近の研究4によると、2019年には、AMRにより世界中で127万人が死亡したと推定されています。国際的な連携により対策を講じなければ、2050年までに年間1,000万人以上が命を落とす問題に発展し、世界経済に与えるインパクトは累積で100兆米ドルに及ぶとの予測がなされています。現時点で使用可能な治療薬は限られており、アンメットメディカルニーズが高い感染症の一つです。
参考
1. Hecker Scott J., et al. Discovery of Cyclic Boronic Acid QPX7728, an Ultrabroad-Spectrum Inhibitor of Serine and Metallo-β-lactamases. Journal of Medicinal Chemistry. 2020; 63: 7491–7507. https://doi.org/10.1021/acs.jmedchem.9b01976.
2. Nelson, Kirk, et al. In Vitro Activity of the Ultra-Broad-Spectrum Beta-Lactamase Inhibitor QPX7728 in Combination with Meropenem against Clinical Isolates of Carbapenem-Resistant Acinetobacter baumannii. Antimicrobial Agents and Chemotherapy. 2020; 64 (11). e01406-20. https://doi.org/10.1128/aac.01406-20.
3. Antibiotic resistance. World Health Organization website. Accessed February 22, 2023. Available at https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/antibiotic-resistance.
4. Murray, C.J.L, et al. Global burden of bacterial antimicrobial resistance in 2019: A systematic analysis. The Lancet. 2022; 399: 629-655. http://doi.org/10.1016/s0140-6736(21)02724-0
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