2024/06/06

難聴に対する開発化合物に関するCilcare社とのオプション契約締結について

塩野義製薬株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役会長兼社長CEO:手代木 功、以下「塩野義製薬」または「当社」)は、CILCARE DEV SAS(本社:フランス モンペリエ、CEO:Celia BELLINE、以下「Cilcare社」)との間で、同社が有する難聴に対する治療薬候補(CIL001、CIL003)に対して、全世界における、開発・製造・商業化の独占的なライセンスを獲得するためのオプション契約を締結しましたので、お知らせいたします。当社は契約締結に伴い、一時金(15百万ユーロ)をCilcare社に支払います。また、本オプション権を行使した場合、進捗に応じた開発および販売マイルストンとして最大で約400百万ユーロと販売額に応じたロイヤリティを支払います。

 

Cilcare社が開発中のCIL001は、聴覚神経保護作用を有する、新規の難聴治療薬候補です。現在、2型糖尿病または軽度認知障害患者における聴覚データを収集することを目的に準備試験を実施中で、引き続き、蝸牛シナプトパシーを有する2型糖尿病患者に対して、CIL001投与後の安全性および有効性を評価するためのPhase 2a試験を計画しています。また、CIL003は非臨床試験を実施中です。当社はCilcare社が実施予定であるCIL001のPhase 2a試験の結果やCIL003の非臨床試験のデータ等を基に、オプション権を行使するか否かを判断する予定です。

 

難聴は、世界中で約15億人が罹患している世界的な健康問題です。その発生率は急増しており、2050年までに世界人口の4分の1が、さまざまな聴覚障害を経験すると言われています1。中でも、内耳蝸牛シナプス*1の障害が主としておこる難聴は、蝸牛シナプトパシーと呼ばれ、高齢者の認知症の発症リスクを増加させることや、糖尿病患者における有病率が高いことが知られています2。しかし、現時点では有効な治療薬はなく、アンメットニーズの高い疾患です。難聴に対処しなければ、年間約1兆ドルの経済損失があるとも言われており、新たな治療薬が求められています3

 

塩野義製薬は、取り組むべき重要課題(マテリアリティ)として「健やかで豊かな人生への貢献」を特定し、誰もがより長く、そして自分らしく、いきいきとした生活を送ることができる社会の実現に向け、取り組みを進めています。難聴を含む、アンメットメディカルニーズの高い疾患に対する画期的な治療薬を、患者さまにいち早くお届けできるよう、引き続き努力してまいります。

 

以 上

 

【Cilcare社(シルケア社)について】

Cilcare社は、早期診断とターゲット治療を通じた難聴ケアの未来を形作ることを目的に、2014年に設立されたバイオテクノロジー企業です。Cilcare社の使命は、早期の段階から慢性疾患に関連することが多い難聴に対して、より早期かつ正確に対処できるようにすることです。Cilcare社は難聴や耳鳴りに対する医薬品、医療機器、遺伝子治療、細胞治療開発の中心的存在として登場し、変革的なブレークスルーを推進しています。詳細はCilcare社のホームページをご覧ください。

 

【CIL001について】

CIL001はCilcare社が2020年にSanofi社から導入した聴覚神経保護作用を有する新規の難聴治療薬候補です。これまでの非臨床試験において、CIL001は内耳蝸牛シナプスを修復する器質的効果と、聴性脳幹反応(ABR: auditory brainstem response) 第Ⅰ波*2を改善する機能的効果が確認されています。

 

【難聴について】

難聴は、世界中で約15億人が罹患している世界的な健康問題です。世界中で、その発生率が大幅に急増している原因は、世界人口の増加と高齢者割合の増加が挙げられます。このまま増加が進むと、医療保険に対するコストが上昇し、社会的孤立や貧困の増加を伴い、生産性の低下という形で社会全体にとっても大きな損失となります。また、難聴の傾向として、徐々に聴力が低下するため、患者自身が自覚しにくく、診断率が低いことが問題として挙げられています。難聴になると他者とのコミュニケーションなど、さまざまな社会生活に支障をきたすことが知られているとともに、中枢神経疾患のリスクファクターの1つにもなっています。

 

*1 内耳蝸牛シナプス:内耳蝸牛において、感覚細胞(有毛細胞)と神経細胞をつなぐ情報伝達の場

*2 聴性脳幹反応(ABR: auditory brainstem response) 第Ⅰ波:蝸牛神経細胞が音刺激を受けて最初に発生する電気信号であり、内耳蝸牛シナプスの機能を反映していると考えられている

 

参考

1: Hearing Loss Disease Treatment Market Size & Growth to 2028 (kbvresearch.com)

2: Livingston G. et al. Dementia prevention, intervention, and care: 2020 report of the Lancet Commission. Lancet 2020; 396: 413-416

3: Estimating the global costs of hearing loss

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