150年の信頼を未来へつなぐ~鳥居薬品が紡ぐ新たな物語~

(左から)熊谷成祥さん(経営企画部 塩野義製薬より出向中)、川上優雅さん(経営企画部)、浅井智央さん(営業企画部長)、伊藤さやかさん(安全情報管理部 次長)
鳥居メンバー
明治の創業期から日本の製薬を支えてきた鳥居薬品株式会社。150年の歴史に育まれた誠実さと挑戦心が、SHIONOGIグループとの統合を通じて新たな段階へと進化しています。伝統を受け継ぎながら、未来を見つめる人々の声を紹介します。

現場と経営をつなぐ人たち 鳥居薬品を支える多様なプロフェッショナル

―まずは、皆さんの担当されているお仕事について教えてください。

 

浅井さん(以下、浅井): 営業企画部長の浅井です。営業企画部は現場と経営の橋渡し役として、医薬情報担当者(MR)の活動を効率的かつ戦略的にサポートしています。全体の戦略策定、活動分析、戦略に沿ったMR数の検討など、業務は多岐にわたります。

 

川上さん(以下、川上): 経営企画部 経営企画チームの川上です。経営企画部は鳥居薬品としての経営戦略の立案、経営に関わる意思決定の支援や、対外広報、社内のさまざまな施策の運営・推進を担う部署です。また現在は、鳥居薬品全体のPMI(統合に向けた活動)のリードを行う部門でもあります。私は、経営会議の運営や、社外向けのコーポレートサイトの運営管理、そして社内向けのデジタル・AIの活用推進の企画・運営を担当しています。

 

伊藤さん(以下、伊藤): 安全情報管理部のPMS第3チームリーダーの伊藤です。私たちの部署は、副作用の情報や使用成績調査で得られた薬の安全性や有効性に関する情報を収集・分析しその結果をもとに、安全性の確保に必要な情報を当局に報告しています。また、医療現場の先生方が患者さんへの治療を安心して行えるよう、どのような情報をお届けすればよりお役に立てるかを考えながら業務をしています。

 

熊谷さん(以下、熊谷): 塩野義製薬から出向中の経営企画部 熊谷です。9月からPMI推進の役割を担っています。両社の考え方やプロセスをすり合わせ、スムーズな連携を進める橋渡し役として動いています。両社の文化や考え方をつなぎ、より良い形で歩調を合わせていく役割を担っています。

「新しいことでもおそれずに」 自ら考え、行動する 鳥居薬品に息づく挑戦の精神

―鳥居薬品は1872年に洋薬輸入商として横浜で創業しました。150年以上の歴史の中で、時代に合わせて変化を重ねてきた柔軟さが印象的です。そうした新しい挑戦を続けられる理由はどこにあるのでしょうか。
伊藤さん

伊藤: 鳥居薬品が大切にしてきた価値観「TORII's POLICY」の一つに、「新しいことでもおそれずにやってみよう」という言葉があります。挑戦を後押しする風土が会社全体に根付いており、上司から「やってダメな失敗は失敗ではない。やらなかったことが失敗なんだ」と声をかけてもらったことが特に印象に残っています。失敗を責めるのではなく、前向きに振り返って次につなげる文化があります。

 

浅井: 「考えて仕事をする」ことが個々の社員に根付いています。自分で「何に貢献できるか」を常に考えて取り組む文化です。

 

川上: 細かい指示が出るというよりは、「他の人たちと協力しながら、自分が改善できそう」と手を挙げると、任せてもらえる文化は確かにあると感じています。

 

―挑戦されたエピソードをぜひお聞かせください。

 

伊藤:PMDA*から医薬品の使用説明書である「添付文書」の改訂指示を受けたときのことです。改訂案を確認し、医師や薬剤師の方々が患者さんに服用方法等の指導をすることを想像すると、さらにわかりやすい内容にできる余地があるのではと感じました。添付文書がわかりやすくないと、患者さんに適切な情報が届かず、治療機会を損なうリスクが生じる可能性があります。それは何としても避けたいという思いがあり、PMDAの方々に直接お会いする機会をいただき「患者さんや医療現場で困ることを少しでも減らしたい」と熱意をもって提案しました。その結果、より分かりやすい形で添付文書を改訂することができ、医療に携わる方々や患者さんのサポートにつながり、とても嬉しく思いました。

 

*PMDA:独立行政法人 医薬品医療機器総合機構。日本における医薬品・医療機器の安全性と有効性を確保する、厚生労働省の所管下にある機関

 

―添付文書の分かりやすさは、患者さんの安全な服薬のためにとても大切ですね。

 

伊藤: はい。この経験から、PMDAと製薬企業という立場の違いがあったとしても、お互い人間なので、真意を確認し、すり合わせを繰り返していけば、最適解が見つけられると確信しました。

変わらない「まじめさ」が築いた 信頼の歴史

浅井さん

―100年以上の歴史を感じる場面はありますか?

 

浅井: 医療機関に行くと、歴代の担当者の名前が残っていることや、年配の先生方から100年続くアレルゲン免疫療法について教えて頂いた経験があり、鳥居薬品も歴史の一部を担っていると感じた事がありました。経営的に難しい局面を迎えた際にも、医薬品卸の皆さんや先生方から「鳥居さん、本当に大変だったら言ってね」と親身に声をかけていただいたと先輩方から聞きました。長年にわたる誠実な営業姿勢が、こうした信頼を築いてきたのだと実感します。

 

― 先人が築き上げた信頼の賜物ですね。医療機関訪問時に、大切にしてきたポリシーとは?

 

浅井: 患者さんの疾患や症状、悩みをしっかりヒアリングした上で自社医薬品を提案する取り組みを続けてきました。いきなりプロモーションするのではなく、まずは医療従事者が抱えている患者さんの背景を丁寧に伺うことです。その過程で自社医薬品を紹介する「誠実な姿勢」こそ、鳥居薬品の変わらぬ信条だと思います。

 

― 川上さんは、2023年にキャリア(中途)入社されたと伺いました。前職のIT企業から鳥居薬品を選ばれた理由にも「まじめさ」があったそうですね。

 

川上: はい、以前はIT企業で営業をしていましたが、もっと狭く深く、じっくり打ち込める仕事に就きたいと思ったのです。そのとき出会ったのが鳥居薬品で、アレルギーや皮膚疾患といった専門領域に、長年にわたって誠実に取り組んできた姿勢に惹かれました。

不安から期待へ 統合を受け止めた社員たちの声

川上さん

―ここからは統合に向けてのお話をお聞かせください。まず、SHIONOGIグループへの統合について、社内の受け止められ方はいかがでしたか?

 

浅井: シンプルに皆が驚きました。第一報を聞いたときはまだ詳しい情報が分からなかったので、「分からない」ことに対して不安を感じました。

 

伊藤: 私も同様に驚きました。塩野義製薬は本社が大阪にあり、東京から離れている点もあって、(異動する可能性も想像して)生活の拠点については少し不安も感じました。ただ、時が経つごとに、今までできなかった経験ができるチャンスかもしれないとワクワクしてきました。

 

川上: 最初はかなりびっくり、そしてちょっとワクワクしました。会社が統合するなんてそうそう経験できないので。

 

―みなさんが統合というニュースに感じられた「ワクワク」について、具体的にお聞かせください。

 

浅井: 貢献できる領域が増えるのは、製薬企業にとってかなり大きなインパクトです。鳥居単体では携わることのなかった感染症領域など、未知の領域に足を踏み込めるようになるのは魅力でしかありません。今後は塩野義製薬の中でもさらなる成長が見込める、例えばCNS領域なども力を合わせて取り組んでいきたいと考えています。

 

川上: 扱う領域が増えれば、より多くの患者さんを助けられます。私はいつも「どこかで患者さんが待っている」と思いながら働いているので、領域の拡大は大きなモチベーションになります。鳥居薬品に大規模な製造や研究開発機能はありませんでしたので、今後経営企画として生産や研究などに携わることにも期待しています。

 

伊藤: ステークホルダーが国内外へと圧倒的に増えるのはとても楽しみです。塩野義製薬における安全管理部の取り組みを学び、私たち鳥居薬品の強みも生かしながら、製品特性に応じた最適解を見つけていきたいと思っています。

製薬業界を黎明期から支えた両社 重なり合う文化と親和性

―熊谷さんに伺います。統合を進める立場から見て、現在の鳥居薬品の雰囲気はいかがですか? 
熊谷さん

熊谷: 鳥居薬品のグループインと同時にこちらに出向して1カ月経ちましたが、大きな混乱は発生していません。比較的うまく統合プロセス/PMIが進んでいると認識しています。

 

円滑に進んでいる理由のひとつは、両社の雰囲気が非常に似ていることにあると思います。例えば、両社の全国の営業部の部長が懇親会をした際に、1時間後にはどちらに所属しているのか分からなくなるほど自然に打ち解けていました。どちらの会社も、明治の黎明期から日本の製薬業界を開拓してきた共通の歴史を持っていることで、親和性が高いと感じます。

 

浅井: 私たち本社のスタッフは、既に塩野義製薬のカウンターパートの方と毎週のようにコミュニケーションを取っています。熊谷さんが言うように、同じ職種の方と話をすると、向いている方向が同じだとよくわかります。プロセスは違えど、目指しているところは一緒なので、統合によるシナジー(相乗効果)は確かな形で感じ始めています。

 

<インタビューを終えて>

 

塩野義製薬との統合を経て広がる領域は、鳥居薬品にとって大きな挑戦であり、新しいチャンスでもあります。東西の垣根を越えて「一緒にやってみよう」と言い合える関係が少しずつ芽生えています。

 

長い歴史の中で築いてきた信頼の土台を大切にしながら、次の時代をともに切り拓いていく。そんなワクワクする日々が、もう始まっています。

取材を終えて

伊藤: 美味しいものを食べるのが好きで、オフィスの敷地内に日替わりで来るキッチンカーが楽しみです。

浅井:スーパー銭湯に行くのが好きで、仕事が詰まってくると土日はスーパー銭湯でぼーっと過ごしてストレス解消しています。

川上:社内のメールアイコンは愛犬のトイプードル(テディ)とのツーショットです。だいぶ高齢犬ですが、元気に走る姿を見ると幸せです。