下水中の新型コロナウイルスの自動解析体制構築へ
【概要】
北海道大学(北海道札幌市,総長:寳金清博),ロボティック・バイオロジー・インスティテュート株式会社(東京都江東区,代表取締役社長:松熊研司,以下「RBI」),株式会社iLAC(茨城県つくば市,取締役:入江新司,以下「iLAC」)及び塩野義製薬株式会社(大阪市中央区,代表取締役社長:手代木功,以下「塩野義製薬」)は,下水疫学に基づき新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)をモニタリング する調査について,自動解析体制の構築に向け4者間で基本合意書を締結しました。
【事業の内容】
■目 的 下水疫学に基づきウイルス感染症流行及び変異株の侵入・発生動向を早期に検知し,大量検査の実施が可能な自動解析体制を構築
■契 約 締 結 2021年3月19日
■分析業務開始 2021年4月以降
【事業開始の経緯】
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は腸管上皮細胞に感染して増殖することが示唆されており,胃腸炎症状を呈さない感染者の糞便中からも高い割合で検出されています。COVID-19感染者の糞便中に排出されたウイルスは下水処理場に集積するため,下水中のウイルスを定期的にモニタリングすることで集団レベルの疫学情報を取得する「下水疫学調査」の研究が世界中で加速しており,COVID-19の流行状況の早期検知や収束判断,感染・増殖能の高い変異株の侵入・発生動向確認に極めて有用な情報となることが論文等でも報告されています。
日本においては,アメリカや欧州の一部の国・地域と比較して人口当たりのCOVID-19感染者数が少なく下水中SARS-CoV-2濃度が低いことから,より高感度なウイルス検出法の実現に向けて,北海道大学及び塩野義製薬は2020年10月に共同研究契約を締結し研究を進めてきた結果,下水からの高感度ウイルス検出法を開発しました。また,下水疫学調査の社会実装にあたっては,採取した下水をハイスループットで解析する体制の構築が急務で,国産汎用ヒト型ロボットLabDroid「まほろ」によりSARS-CoV-2 RNAの検出・定量及び次世代シークエンス(NGS)解析の前処理(ライブラリ調製)を自動化する技術を持つRBI,大規模NGS解析によりゲノム情報(ウイルス変異状況等)の把握を可能にするiLACを加えた体制を構築し,社会実装に向けて4者間で基本合意書を締結しました。
なお,分析業務の開始については2021年4月以降を予定しています。
【企業情報】
(1)ロボティック・バイオロジー・インスティテュート株式会社(RBI)
代表者:松熊研司(代表取締役社長)
本 社:東京都江東区青海2-5-10 テレコムセンタービル東棟1階
概 要:同社は,汎用ヒト型ロボットLabDroid 「まほろ」を開発し,生命科学分野の研究を加速することを目指しています。「まほろ」は,ヒトと同じ自由度の双腕により,熟練者の手技を繰り返し再現可能であり,手技を数値化・最適化することにより高精度の解析前処理が可能です。研究者が汎用ヒト型ロボット LabDroid 「まほろ」と共に研究することで,最先端の研究にかかる膨大なコストや時間を効率化するとともに研究者の知的生産性の向上を実現します。
(2)株式会社iLAC
代表者:入江新司(取締役)
本 社:茨城県つくば市春日1-2(高細精医療イノベーション棟内)
概 要:同社は,個人に最適な治療や薬の選択につながる「プレシジョン・メディスン(個別化精密医療)」の推進実現を目指し,多検体に対応したハイスループットなゲノム解析,発現解析,ゲノム構造解析を提供。また,プロテオーム・メタボロームなどオミックス解析ネットワークを有し,多次元マーカーによる病態評価体制を整えています。蓄積される精密で広範囲な高付加価値データベースは,新たな治療標的の発見,高齢化社会における健康長寿の実現,医療費抑制に貢献します。
(3)塩野義製薬株式会社
代表者:手代木功(代表取締役社長)
本 社:大阪府大阪市中央区道修町3-1-8
概 要:同社は,取り組むべきマテリアリティ(重要課題)として「感染症の脅威からの解放」を特定し,治療薬の研究・開発だけにとどまらず,啓発・予防・診断並びに重症化抑制といった感染症のトータルケアに対する取り組みを進めています。感染症薬のリーディングカンパニーとして,新型コロナウイルス感染症の早期終息による社会の安心・安全の回復に貢献するために,新規の治療薬,ワクチン等の開発に加えて既存の化合物の 価値を最大化し,より多くの患者さまにヘルスケアソリューションを提供できるよう,外部パートナーとの連携を含めた取り組みを強化していきます。