塩野義製薬株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:手代木 功、以下「塩野義製薬」または「当社」)は、体外診断用医薬品として販売中のTh2ケモカイン・TARCキット「HISCL® TARC 試薬」(以下、本検査キット)について、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)陽性患者の重症化予測の補助を使用目的とする適応追加承認申請を4月16日付で実施しましたことをお知らせいたします。
本検査キットは、既にアトピー性皮膚炎の重症度評価の補助として使用されており、アトピー性皮膚炎の症状増悪に伴い上昇するケモカインの一種(系統名:CCL17)であるTARCを簡便に測定することが可能です。国立国際医療研究センターが実施した臨床研究によると、重症化するCOVID-19患者は発症早期から重症化するまでの間は血清中のTARC 値が低値を示すことが確認されており、1回の測定で患者の重症化を早期より予測可能な分子マーカーとしてTARCの有用性が示されています1。また、種々の慢性疾患でTARC値を検討したところ、TARC値が低値を示す疾患は認められなかったことから、基礎疾患を有する患者でもCOVID-19の病勢予測が可能なことが示唆されています。
COVID-19は、初期症状が軽症であっても後に急速に症状が進行するリスクのある疾患であり、その見極めが難しいことから、医療機関や宿泊施設での継続的な観察が必要となっています。そのため、これら施設での療養対象者の増加による医療体制の逼迫、ひいては医療崩壊のリスクをいかに低減させるかが、社会における喫緊の課題とされています。本検査キットは、COVID-19発症早期から重症化リスクの高い患者を判別し、入院や宿泊療養、自宅療養など個別に最適な措置につなげることで、医療課題の解決を促すことが期待されます。
塩野義製薬は、取り組むべきマテリアリティ(重要課題)として「感染症の脅威からの解放」を特定し、治療薬の研究・開発だけにとどまらず、疾患の啓発・予防・診断ならびに重症化抑制といった感染症のトータルケアに対する取り組みを進めております。当社はパンデミックの早期終息による社会の安心・安全の回復に貢献するために、引き続き、企業としての社会的責任を果たしてまいります。
なお、本件が2022年3月期の連結業績予想に与える影響については現時点では未定ですが、今後の状況の変化により、業績に与える影響を認識した時点で速やかに公表いたします。
以 上
【TARCについて】
TARC(thymus and activation-regulated chemokine)は、71 個のアミノ酸より構成されるタンパク質で、リンパ球の一つであるTh2細胞を炎症部位に遊走させるケモカイン群の一つです。COVID-19の重症化にはTh1細胞とTh2細胞の免疫バランス2,3の異常が関与している可能性が示唆されます。
参考:
1. Sugiyama M, Kinoshita N, Ide S, Nomoto H. Serum CCL17 level becomes a predictive marker to distinguish between mild/moderate and severe/critical disease in patients with COVID-19. Gene 766(2021)145145
2. Int Immunol. 1999, 11:81-88.
3. FASEB J. 1991, 5:171-177.
新型コロナウイルス感染症に対する当社の取り組みは、当社ホームページでも随時更新しております。また、各機関から発信されている新型コロナウイルス感染症に関する情報も同ページにまとめておりますので、ご参考までにご確認ください(塩野義製薬 ウェブサイト)。