2022/06/15

塩野義製薬、GARDP、CHAIによる細菌感染症治療薬セフィデロコルに関する ライセンス契約ならびに提携契約の締結について -135ヵ国でセフィデロコルへのアクセスを拡大-

塩野義製薬式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:手代木 功、以下「塩野義製薬」)とThe Global Antibiotic Research and Development Partnership(本部:スイス ジュネーブ、代表:Manica Balasegaram、以下「GARDP」)およびClinton Health Access Initiative(本部:米国マサチューセッツ州、CEO:Neil Buddy Shah、以下「CHAI」)は、世界中の国々の抗菌薬へのアクセス改善を目的として、塩野義製薬とGARDPの間で技術移転を含むライセンス契約ならびに、塩野義製薬、GARDP、CHAIの3者間での提携契約を本日締結しましたので、お知らせいたします。

 

両契約に基づき、塩野義製薬、GARDP、CHAIの3者は治療選択肢が限られる薬剤耐性(antimicrobial resistance: AMR)感染症の患者に対するセフィデロコルのアクセス改善に向けた取り組みを開始します。セフィデロコルは、世界保健機関(WHO)が優先度の高い病原菌として指定するグラム陰性菌に活性を示す抗菌薬です。2019年に米国食品医薬品局(FDA)、2020年に欧州医薬品庁(EMA)より承認を取得し1-3 、WHOの必須医薬品リストにも掲載されています。

 

塩野義製薬とGARDPの間で締結された本ライセンス契約は、深刻な細菌感染症治療薬に関して製薬企業と公衆衛生を優先課題に取り組む非営利団体との間で結ばれた初めての契約です。GARDPは、本契約に基づくサブライセンスを通じて、新規抗菌薬へのアクセスを必要とする多くの低中所得国に対してセフィデロコルの製造・販売を担います。対象となる国・地域は、すべての低所得国および多くの低中所得国、高中所得国を含む世界135ヵ国(世界の約70%)に及び、AMRによる影響を最も受けている国・地域の大半が含まれています。

 

塩野義製薬の取締役副社長兼ヘルスケア戦略本部長の澤田拓子は次のように述べています。

「塩野義製薬は、GARDPおよびCHAIとの画期的な契約を通じて、抗菌薬へのアクセス改善に貢献できることを誇りに思っています。薬剤耐性グラム陰性菌感染症に対する治療選択肢として、セフィデロコルを必要とする世界中の患者さまにお届けできるよう取り組んでいきます。」

 

AMRは、緊急かつ重要な公衆衛生上の脅威です。最近の研究4によると、AMRにより、2019年には世界中で約130万人が死亡したと推定されており、過去の推定値5の約2倍に増加しています。

 

GARDPの代表 の Manica Balasegaram博士は次のように述べています。

「AMRは将来の問題として頻繁に取り上げられています。実際、薬剤耐性菌による感染症によって多くの人命が犠牲になっており、世界の医療システムに大きな打撃を与えています。その現状を変えるため、抗菌薬へのアクセスが不十分でAMRによる負担が最も大きい地域における抗菌薬へのアクセスの加速をサポートする必要があります。GARDPは資金提供パートナーからの支援を受け、塩野義製薬、CHAIと協力することで、抗菌薬を必要とする医師と患者へのアクセス改善をグローバルで加速させていきます。抗菌薬の開発と流通は、AMRと戦うGARDPの取り組みと密接に関連しています。」

 

必要とする患者にセフィデロコルを届けるには、技術や法規制、経済的な背景等、多くの障壁を克服する必要があります。塩野義製薬およびGARDPは、多くの官民組織と連携して市場を再構築し、世界各国に医薬品を供給する能力に長けたCHAIと協力し、セフィデロコルのアクセスに関する課題に対処します。

 

CHAI のChief Science Officer and Executive Vice President for Infectious DiseasesのDavid Ripin博士は次のように述べています。

「細菌感染症の適切な診断と治療は、生命を脅かす感染症の治療を改善することができます。それにはセフィデロコルのような革新的な薬へのアクセスも含まれます。CHAIは、この革新的な抗菌薬であるセフィデロコルを必要とする患者が、必要なときに必要な場所で利用できるようにするための3者による提携契約に参加できることをとても嬉しく思います。」

 

提携契約には、抗菌薬の適正使用を確実なものとするために必要な、医療機関でのスチュワードシッププログラムの強化を目的とした各国の保健省や専門家との協力・支援に関する規定が含まれています。この規定は、セフィデロコルの適正使用を促し、新たな耐性菌の出現を回避するために非常に重要なアクションとなります。

インドは、この度の取り組みの恩恵を受ける可能性のある国の1つです。インド医学研究評議会(ICMR)のSenior Scientist and Program Officer of AMR の Kamini Walia氏は次のように述べています。

「インドでは、薬剤耐性の感染症患者に対する新しい治療手段を早急に必要としています。今回の取り組みによって、セフィデロコルがより早くインドに供給され、使用できるようになることは、患者の治療において大変有益です。ただし、この薬の誤用や乱用を防ぐために、使用に関して厳格な管理を行う必要があります。」

 

今回のライセンス契約ならびに提携契約は、抗菌薬への適切なアクセスをより一般的なものにするための大きな目的を有しています。塩野義製薬とGARDPは、将来の契約の新しい基準として役立つ可能性のある、画期的な本ライセンス契約を発表することに合意しました。今回の取り組みは、民間企業と非営利団体の主要な関係者が結集することで、セフィデロコルを必要としている患者に届けるために必要な様々な障壁を克服する可能性を示しており、抗菌薬へのアクセスに対する精力的で有望なコラボレーションの在り方を提示しています。

 

以 上

 

 

パートナーについて

塩野義製薬

塩野義製薬は「常に人々の健康を守るために必要な最もよい薬を提供する」という基本方針に基づき、患者さまの利益に貢献しています。当社は、HIV、インフルエンザ、抗菌薬耐性に対する新薬の研究開発に取り組み、現在、新規シデロフォアセファロスポリン抗菌薬であるセフィデロコルを含むいくつかの感染症領域における治療薬を販売しています。当社は、感染症および精神・神経疾患を研究開発のコア領域として特定し、社会的ニーズの大きな疾患領域の研究開発に取り組んでいます。塩野義製薬株式会社の詳細については、https://www.shionogi.com/jp/ja/をご覧ください。

Shionogi inc.は、ニュージャージー州に本拠を置く塩野義製薬の米国のグループ会社です。詳細については、https://www.shionogi.com/us/en/をご覧ください。

Shionogi B.V.は、塩野義製薬の欧州のグループ会社です。シオノギB.V.の詳細については、https://www.shionogi.com/eu/en/をご覧ください。

 

GARDP | Global Antibiotic Research and Development Partnershipについて

GARDP は、健康に最大の脅威をもたらす薬剤耐性菌感染症の新規治療薬を開発するスイスに拠点を置く非営利団体です。抗菌薬を必要とするすべての人が、有効で入手可能な価格での治療を受けられるようにするため、2016年に世界保健機関 (WHO) およびDNDi (Drugs for Neglected Diseases initiative:顧みられない病気の新薬開発イニシアティブ) により立ち上げられ、2018年に設立されました。性感染症、新生児の敗血症、入院中の成人や子供たちの感染症に焦点を当て、薬剤耐性感染症と戦うための新しい治療法を開発しています。GARDPは、20ヵ国以上で60を超えるパートナーと協力しています。その活動は、オーストラリア、ドイツ、日本、ルクセンブルグ、モナコ、オランダ、南アフリカ、スイス、英国、国境なき医師団、民間財団から資金提供を受けて活動しています。 GARDPの正式名称はGARDP Foundationで登録されています。http://www.gardp.org/

 

CHAI | Clinton Health Access Initiative, Inc.について

CHAIは、低中所得国の人々の命を救い、病気の負担を軽減することに取り組んでいるグローバルヘルス組織です。CHAIはパートナーと協力して、高品質の医療システムを構築および維持するための政府および民間部門の能力を強化することを支援します。詳細については、www.clintonhealthaccess.orgをご覧ください。

 

他のパートナー

GSK

GSKは塩野義製薬と共同でセフィデロコルを開発したパートナーです。両社は低中所得国に住む患者さまの医薬品へのアクセスを支援することを約束します。GARDP、CHAIとの塩野義製薬の提携を通じて、セフィデロコルを入手可能な価格でより多くの人々が利用できるようにするために、GSKは低中所得国での販売からのロイヤルティを放棄します。

 

中国平安保険グループ

Ping An Insurance(Group)Company of China、Ltd.は、塩野義製薬と共同で設立した合弁会社を通じてアジアでセフィデロコルを開発しており、両社は低中所得国に住む患者の医薬品へのアクセスを支援することを約束します。セフィデロコルを入手可能な価格でアジアのより多くの人々が利用できるようにするために、Ping An Insurance(Group)Company of Chinaは、GARDPおよびCHAIと塩野義製薬の提携をサポートしています。

 

 

 

セフィデロコルについて

セフィデロコルは、多剤耐性菌を含むグラム陰性菌の外膜を効果的に通過して抗菌活性を発揮する新規のシデロフォアセファロスポリン抗菌薬です。セフィデロコルは細菌のカルバペネムへの耐性獲得に関連する3つの主な機序(βラクタマーゼによる抗菌薬の不活化、ポーリンチャネルの変異による膜透過性低下、排出ポンプの過剰産生)による影響を受けずに抗菌力を発揮します。鉄と結合する独自の構造を有することにより、細菌が養分である鉄を取り込むために利用する鉄トランスポーターを介し、細菌内に能動的に運ばれます。その結果、セフィデロコルは細菌のペリプラズム内に効率よく取り込まれ、細胞壁合成を阻害します。

 

 

参考

1.     プレスリリース:2019年11月15日
FETROJA®(cefiderocol)の米国における新薬承認について -複雑尿路感染症に罹患し、他の治療薬が効かないもしくは効きにくいことが想定される成人患者の治療を適応として-

2.     プレスリリース:2020年4月28日
FETCROJA®(cefiderocol)の欧州における承認取得について -他の治療薬が効きにくいことが想定されるグラム陰性菌に感染した成人患者の治療を適応として-

3.     プレスリリース:2020年9月29日
FETROJA®(cefiderocol)の米国における院内肺炎を対象とした 適応追加承認取得について

4.     THE LANCET:Global burden of bacterial antimicrobial resistance in 2019: a systematic analysis

5.     WHO:New report calls for urgent action to avert antimicrobial resistance crisis