2023/09/27

脆弱X症候群治療薬候補zatolmilastのFDAによる
希少小児疾患の指定について

塩野義製薬株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役会長兼社長CEO:手代木 功、以下「塩野義製薬」または「当社」)は、当社グループ会社であるTetra社と開発中の脆弱X症候群(Fragile X Syndrome、以下「FXS」)治療薬候補zatolmilast(以下「本剤」)について、米国食品医薬品局(FDA)より希少小児疾患指定を受理しましたのでお知らせいたします。

 

FXSは、発達遅延、知的障害を特徴とする遺伝性の疾患であり、自閉症の主な原因と言われています。FXSの治療の現状は対症療法が中心であり、新たな治療の選択肢が求められています。Zatolmilastは神経細胞内のシグナル伝達系を制御することで、認知機能を向上させることが示唆されています。認知機能を改善することは、語彙力や読解力の向上、記憶形成の強化につながる可能性があり、実際にzatolmilastの第2相臨床試験の探索的な評価においても、FXS患者での言語および日常機能の改善効果が確認されています1

 

このたび受理した希少小児疾患指定は、米国で18歳までに発症し、患者数が20万人未満の希少疾患に対する新薬開発を促進することを目的とした制度です。なお、zatolmilastは、2018年にFDAからオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)に指定されています。

 

塩野義製薬は、取り組むべき重要課題(マテリアリティ)として「健やかで豊かな人生への貢献」を特定しています。引き続き、FXSを含むアンメットメディカルニーズの高い疾患に対する画期的な治療薬を患者さまにお届けできるよう努力し、世界中の皆さまの健康寿命の延伸とQOL(Quality of Life)の向上に貢献してまいります。

 

 

以 上

 

 

【希少小児疾患指定について】

希少小児疾患指定は、米国で18歳までに発症し、患者数が20万人未満の希少疾患に対する新薬開発を促進することを目的とした制度です。指定を受けた開発品がFDAから製造販売承認を取得した際には、別の開発品についてFDAの優先審査を受ける権利が取得可能となります。

 

【Zatolmilastについて】

Zatolmilastは、記憶形成に関わるPDE4Dを標的とするネガティブアロステリックモジュレーターです。PDE4Dは、細胞内セカンドメッセンジャーである環状ヌクレオチドcAMPを分解する酵素であり、zatolmilastは、神経細胞内のシグナル伝達系を制御することで、認知機能を向上させることが示唆されています。FXS患者を対象にした第2相臨床試験において良好な安全性と忍容性が確認されており、探索的な評価の結果、有効性に関しては言語および日常機能の改善効果が確認されています。また本剤は、FDAからオーファンドラッグ(希少疾患治療薬)にも指定されています。

現在は、以下の複数の臨床試験をそれぞれ実施しております。

第2b/3相臨床試験

٠         204試験(NCT05163808):9~17歳のFXSの青年男性を対象とした試験

٠         301試験(NCT05358886):18~45歳のFXSの成人男性を対象とした試験

第3相臨床試験

٠         302試験(NCT05367960):204試験・301試験の被験者を対象とした継続投与のオープンラベル試験

 

【脆弱X症候群(FXS)について】

FXSは、発達遅延、知的障害を特徴とする遺伝性の疾患で、米国において最も一般的に知られている自閉症の原因です。攻撃性、注意力の欠如、不安などの症状の発現により、日常生活のさまざまな側面にわたって困難や課題を引き起こす可能性もあります。なお、FXSの要因であるFMR1遺伝子の変異がX染色体上にあるため、女性より男性に大きな影響を与えることが知られています。

 

【Tetra社について】

Tetra社は塩野義製薬のグループ会社であり、FXS、AD、外傷性脳損傷、その他の脳疾患で苦しむ患者さまに対する治療薬を開発するバイオテクノロジー関連の研究開発型企業です。タンパク構造をベースにしたドラッグデザインを行い、PDE4に対する新規メカニズムのネガティブアロステリックモジュレーターを探索しています。本社は米国ミシガン州にあります。詳細はTetra社のホームページをご覧ください。

 

参考:

1.       プレスリリース:2020年11月2日
認知機能改善薬候補BPN14770の脆弱X症候群患者を対象とした第2相臨床試験の良好な結果について

 

[お問合せ先]

塩野義製薬ウェブサイト お問い合わせフォーム:https://www.shionogi.com/jp/ja/quest.html#3.