2023/04/17

新規シデロフォアセファロスポリン系抗菌薬 Fetcroja®/Fetroja®(セフィデロコル)の 最も治療が困難とされるグラム陰性菌感染症に対する有効性について
-欧州臨床微生物学感染症学会議(ECCMID)において新規リアルワールドエビデンスを発表-

  • 後ろ向き観察研究の中間解析において、セフィデロコルは、その大部分が合併症を伴う重症患者である緑膿菌感染症患者およびアシネトバクター感染症患者に対して、それぞれ65%および60%の臨床的治癒を確認

 塩野義製薬株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役会長兼社長 CEO:手代木 功、以下「塩野義製薬」)は、新規シデロフォアセファロスポリン系抗菌薬セフィデロコルについて、最も治療が困難とされるグラム陰性菌感染症に対する有効性を評価した新規リアルワールドエビデンスを、2023年4月15~18日にデンマーク コペンハーゲンで開催中の第33回 欧州臨床微生物学感染症学会議(ECCMID)にて発表しますことをお知らせいたします。

 このたび発表するPROVE(Retrospective Cefiderocol Chart Review)研究1, 2は、実臨床でのグラム陰性菌感染症入院患者に対するセフィデロコルの有効性と安全性の評価を目的に実施中の国際的な後ろ向き観察研究です。本研究では、セフィデロコルを投与された緑膿菌感染症患者194人(米国123人、欧州71人)のうち、191名に対して評価が行われました。評価に供された患者には呼吸器感染や血流感染の割合が多く、基本的には重篤な患者であり、その多くは人工呼吸器や昇圧剤の投与を必要としていました。大半の患者(77%)において、セフィデロコルは病原体を確認の上で投与され、57%の患者はセフィデロコル単剤での治療が行われました。これらの患者背景の下で実施された中間解析において、セフィデロコルは緑膿菌感染症患者の65%で臨床的治癒を達成し、81%の患者がセフィデロコルによる治療開始後30 日時点において生存しました。

 また、本研究にはアシネトバクター感染症の患者98人(米国71人、欧州27人)も含まれ、そのうち96人に対して評価が行われました。最も共通して見られたのは呼吸器感染症および菌血症でした。これらの患者には高レベルの臓器サポートが必要であり、45%が人工呼吸器治療を受け、30%が昇圧剤の投与を必要としていました。患者の93%でセフィデロコルは初回治療または救急治療として投与され、41%の患者で単剤での治療が行われました。セフィデロコルは、アシネトバクター感染症患者の60%で臨床的治癒を達成し、76%の患者が治療開始から30日時点において生存しました。

 ハンブルク・エッペンドルフ大学の集中治療医学科のコンサルタントであるDominic Wichmann教授は,「PROVE研究より得られた今回の中間解析結果は、欧州および米国において蓄積されたリアルワールドデータに基づき構築されたものであり、セフィデロコルは、アシネトバクターや緑膿菌などの生命を脅かす感染症に罹患し、その大半が複数の併存疾患を有する重篤な患者の治療における有効性を示しました。これら病原体は、世界保健機関(WHO)の最優先リストに分類されるものであり、効果的な治療法が早急に必要とされています。」と述べています。
 セフィデロコルは、欧米において承認を取得し、欧州においてはFetcroja®の製品名で、米国ではFetroja®の製品名でそれぞれ販売されています3, 4。日本および台湾においても承認申請を実施済みであり5, 6、現在規制当局による審査が行われています。また、多くの低中所得国、高中所得国で本新規抗菌薬を必要とする患者へのアクセスを改善するために、The Global Antibiotic Research and Development Partnership(GARDP)およびClinton Health Access Initiative(CHAI)との3者連携契約7を通じて準備を進めています。
 塩野義製薬は、取り組むべきマテリアリティ(重要課題)として「感染症の脅威からの解放」を特定し、感染症のトータルケアの実現に向けた取り組みを進めております。当社は、グローバルの課題であるAMR(薬剤耐性)の対策を成功させ、人々の健康を守るために必要な感染症治療薬を、世界中の患者さまのもとにいち早くお届けできるよう、引き続き努力してまいります。
以 上

【AMR(薬剤耐性)について】

 AMR(Antimicrobial resistance)は「サイレントパンデミック」と呼ばれ、緊急かつ重要な公衆衛生上の脅威です。最近の研究8によると、2019年には、AMRにより世界中で127万人が死亡したと推定されています。国際的な連携により対策を講じなければ、2050年までに年間1,000万人以上が命を落とす問題に発展し、世界経済に与えるインパクトは累積で100兆米ドルに及ぶとの予測がなされています9

【セフィデロコルについて】

 セフィデロコルは、多剤耐性菌を含むグラム陰性菌の外膜を効果的に通過して抗菌活性を発揮する新規のシデロフォアセファロスポリン系抗菌薬です。セフィデロコルは細菌のカルバペネムへの耐性獲得に関連する3つの主な機序(βラクタマーゼによる抗菌薬の不活化、ポーリンチャネルの変異による膜透過性低下、排出ポンプの過剰産生)による影響を受けずに抗菌力を発揮します。鉄と結合する独自の構造を有することにより、細菌が養分である鉄を取り込むために利用する鉄トランスポーターを介し、細菌内に能動的に運ばれます。その結果、セフィデロコルは細菌のペリプラズム内に効率よく取り込まれ、細胞壁合成を阻害します。

参考:

1.      Larcher R, et al. Real-world use of cefiderocol in the EU and US for Pseudomonas aeruginosa: interim data from the PROVE study. ECCMID abstract P2274

2.      Timsit JF, et al. Real-world use of cefiderocol in the EU and US for Acinetobacter baumannii: interim data from the PROVE study. ECCMID abstract P2272

3.      FETCROJA SMPC. Available at: https://www.ema.europa.eu/en/documents/product-information/fetcroja-epar-product-information_en.pdf Last accessed March 2023

4.      Fetroja FDA prescribing information. Available at: https://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2020/209445s002lbl.pdf Last accessed March 2023

5.      プレスリリース:2022年3月24日:セフィデロコルの国内における製造販売承認申請について

6.      プレスリリース:2022年12月13日:新規シデロフォアセファロスポリン系抗菌薬セフィデロコルの台湾における新薬承認申請受理について

7.      プレスリリース:2022年6月15日:塩野義製薬、GARDP、CHAIによる細菌感染症治療薬セフィデロコルに関する ライセンス契約ならびに提携契約の締結について -135ヵ国でセフィデロコルへのアクセスを拡大-

8.      Antimicrobial Resistance Collaborators. Global burden of bacterial antimicrobial resistance in 2019: a systematic analysis. Lancet 2022; 399: 629–55

9.      O’Neill J. ‘Tackling Drug-Resistant Infections Globally: Final Report and Recommendations’. Review on Antimicrobial Resistance. May 2016. Retrieved from

https://amr-review.org/sites/default/files/160525_Final%20paper_with%20cover.pdf

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