2024/02/02

米国Neuroscience 2023における学術発表 - 音刺激によってヒトの脳にガンマ波が同期されることを確認 -

  塩野義製薬株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役会長兼社長CEO:手代木 功、以下「塩野義製薬」、または「当社」)は、ピクシーダストテクノロジーズ株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役:落合 陽一、村上 泰一郎、以下「PxDT社」)が、Society for Neuroscience(北米神経科学学会)主催の学術発表会「Neuroscience 2023」において、特定の処理を施した音を聴取した際に、ヒトの脳波の一種である40Hzのガンマ波が同期されることを確認した研究結果について発表を行いました1のでお知らせいたします。

 

  Neuroscicence 2023は、脳神経科学に関する世界で最大の学術発表会のひとつです。このたび発表した研究は、当社および「音刺激による脳活性化および認知機能改善」に向けた共同研究に関する基本合意書を締結2しているPxDT社、そして国立研究機関である産業技術総合研究所(東京本部:東京都千代田区、理事長:石村 和彦)との共同研究として進めてまいりました。

 

  これまでの世の中における先行研究では、認知症患者でガンマ波が低下していることが報告されています3。また、40Hzの感覚刺激(音や光)の呈示によって脳内のガンマ波を同期させることで、認知機能低下や脳容積の縮小の抑制などが期待できる報告も成されています4,5。一方、これまでの研究で用いられた40Hz音は音声情報などを含めることの出来ない単調なパルス音であり、毎日聞き続けるのは難しく、日常生活の中に取り込みづらい可能性がありました。

  今回発表した研究では、特定の処理を施した音を被験者に聴取させて脳活動を計測した結果、40Hzの振幅変調音を聴取した群が、比較対象とした振幅変調していない40Hzの低周波音を聴取した群と比べ、ガンマ波が統計学的に有意に強く同期されることが確認されました。単調なパルス音ではなく、音声情報を含めることの出来る振幅変調音によってガンマ波が同期されることを示したこの結果は、ガンマ波の同期を目的として、音源に関わらずテレビの音や音楽など、変調する音を任意に選択できる可能性を示唆しており、40Hzの振幅変調音が日常生活における認知症予防の臨床応用に役立つことが期待されます。

 

  塩野義製薬はPxDT社と「生活に溶け込む認知機能ケア」という共通コンセプトに基づいた共同研究を進める中で、認知機能ケアに繋がる可能性のある「ガンマ波サウンド」を共同で開発しています1,6。両社は「音刺激による脳活性化および認知機能改善」に向けたさらなるエビデンス構築を行いつつ、日常生活の中での認知症予防や認知機能の改善が可能な社会の実現に取り組むことで、患者さまや社会の抱える困り事の解決に向けた新たなソリューションの提供に引き続き取り組んでまいります。

以上

【ガンマ波サウンドについて】

塩野義製薬とPxDT社は、感覚刺激による脳のリズム活動の変化に着目した新しいサービスの開発に向けた共同研究に取り組んでいます。両社が共同開発した「ガンマ波サウンド」は、テレビやラジオなど、日常のあらゆる音をリアルタイムに40Hz変調を施すことで、日常生活を送りながら認知機能ケアできる研究が進められている音です。

■参考

1.     Y. Nagatani, K. Takazawa, K. Maeda, A. Kambara, Y. Soeta, and K. Ogawa, “Phase lock of gamma wave by aurally presenting tones amplitude-modulated at 40 Hz,” Neuroscience 2023 Abstracts, PSTR388.26/C44 (2023).

2.     2022年6月21日プレスリリース:

音刺激による脳活性化および認知機能改善に向けた共同研究に関する 塩野義製薬とピクシーダストテクノロジーズによる基本合意書の締結について~「生活に溶け込んだ認知症ケア」サービスの提供に向けて~

3.     C. S.Herrmann, and T. Demiralp. “Human EEG gamma oscillations in neuropsychiatric disorders,” Clinical Neurophysiology 116, 2719–2733 (2005).

4.     A. J. Martorell et al., “Multi-sensory Gamma Stimulation Ameliorates Alzheimer’s-Associated Pathology and Improves Cognition,” Cell 177, 256-271.e22 (2019).

5.     D. Chan et al., “Gamma frequency sensory stimulation in mild probable Alzheimer’s dementia patients: Results of feasibility and pilot studies,” PLOS ONE 17, e0278412 (2022).

6.     2023年11月13日プレスリリース

塩野義製薬とピクシーダストテクノロジーズが共同開発した「ガンマ波サウンド」が、「ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS」にて、クリエイティブイノベーション部門ゴールドとICCサミット賞をダブル受賞

【お問い合わせ先】
塩野義製薬ウェブサイト お問い合わせフォーム:

https://www.shionogi.com/jp/ja/quest.html#3.