環境DNAモニタリングによる生物多様性の見える化への取り組み
環境DNAモニタリングとは
環境DNAモニタリングは、水や土壌などの環境中に含まれる生物由来のDNA断片を採取・解析することで、そこに生息する生物種を非侵襲的かつ高精度に特定できる革新的な技術です。従来の捕獲や目視による調査と比べて、調査の効率性・網羅性・環境負荷の低減に優れており、近年では生物多様性の保全、外来種の監視、希少種の検出など、幅広い分野で活用が進んでいます。
AdvanSentinel社による技術開発と社会実装
塩野義製薬株式会社と株式会社島津製作所の共同出資により設立されたAdvanSentinel社は、環境DNAをより高感度に検出する独自技術「QuickConc™」を開発しました。この技術を活用し、環境DNAモニタリングの社会実装を推進しています。現在は、生物多様性の保全に資するソリューションとして、企業や自治体への提供を開始しています。
油日植物園での実証実験
SHIONOGIグループが管理する油日植物園では、絶滅危惧種・希少種を含む1,000種以上の植物を育成しています。しかし、植物園の豊かな植生が、隣接する里地里山に生息する絶滅危惧種などの保全にどのような影響を与えているかは、これまで明らかではありませんでした。
そこでSHIONOGIでは、AdvanSentinel社と連携し、環境DNA分析技術を用いた生物調査を実施。油日植物園における生物多様性の保全状況を「見える化」することを目的に、実証実験を開始しました。
調査結果と今後の展望
これまでに実施した環境DNAモニタリングの結果、油日植物園およびその周辺の観測点からは、甲賀市レッドリストで絶滅危機増大種に分類されるミナミメダカをはじめ、アカハライモリ、シュレーゲンアオガエル、ヨツボシトンボなど、計65種の生物種のDNAが検出されました。
これらの結果は、油日植物園が絶滅のおそれのある動植物を含む豊かな生態系の一部として機能している可能性を示唆しています。今後も継続的に環境DNAの採取と分析を行い、得られた知見を生物多様性の保全活動に活用していきます。