塩野義製薬株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:手代木 功、以下「塩野義製薬」)は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する予防ワクチン(開発番号:S-268019、以下「本ワクチン」)につきまして、国内第1/2相臨床試験結果を、第25回日本ワクチン学会学術集会(2021年12月3日~5日開催、以下「ワクチン学会」)にて発表しましたので、お知らせいたします。
ワクチン学会では、これまで非臨床で実施した免疫原性試験の結果をはじめ、2021年8月から開始した新製剤による国内第1/2相臨床試験1の結果の速報について発表しました。
本臨床試験は、日本人成人を対象とした無作為化プラセボ対照二重盲検比較試験です。本ワクチンを2回接種した際の安全性、忍容性ならびに免疫原性の結果から、抗原タンパク量の至適用量を検討するとともに、各指標を接種後1年間追跡評価します。要約は以下のとおりです。
●→S-268019新製剤の2回接種後における忍容性と安全性が確認された。
●→2回接種2週後から、回復者血清と同程度の中和抗体価の上昇が確認された。
●→Th1反応およびTh2反応はともに促進されたが、Th1/Th2バランスはTh2優位にはならなかった注1。
注1 免疫応答を調整する2種類のヘルパーT細胞のバランス。詳細は【Th1/Th2バランスについて】を参照
※国内第1/2相臨床試験については、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(Japan Agency for Medical Research and Development: AMED)の支援を受けております。
これらの結果をもとに、現在、国内第2/3相臨床試験および国内追加免疫試験を実施しております2, 3。今後の承認申請に向けては、引き続き厚生労働省や独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)等と協議を行ってまいります。
塩野義製薬は、取り組むべきマテリアリティ(重要課題)として「感染症の脅威からの解放」を特定し、感染症のトータルケアの実現に向けた取り組みを進めております。COVID-19が世界的な脅威として人々の生活に大きな影響を与える中、当社はパンデミックの早期終息による社会の安心・安全の回復に貢献するために、国産ワクチンの早期開発・供給に引き続き注力し、企業としての社会的責任を果してまいります。
以 上
【Th1/Th2バランスについて】
生体内の免疫応答は、2種類のヘルパーT細胞であるTh1細胞とTh2細胞によって制御されています。Th1細胞が主に細胞性免疫を活性化するのに対し、Th2細胞は主に抗体産生に関わる液性免疫を活性化することが知られています。遺伝的要因や移植手術、ワクチン接種等の外的要因により、これら2つの免疫応答のバランスが崩れると様々な免疫疾患が引き起こされると考えられています。過去に発生した重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)に対する研究では、Th1/Th2バランスが、Th2優位になることで免疫が関与するワクチン関連疾患増悪(VDE)や抗体依存性感染増強(ADE)のリスクが上昇するといわれており、そのリスク低減にはTh1/Th2バランスが重要との考察がなされています。
参考:
1. プレスリリース:2021年8月24日
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンS-268019の新製剤を用いた 第1/2相臨床試験の進捗に関するお知らせ
2. プレスリリース:2021年10月21日
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンS-268019の 第2/3相臨床試験開始のお知らせ
3. プレスリリース:2021年12月3日
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンS-268019の国内追加免疫試験開始のお知らせ
COVID-19に対する当社の取り組みは、当社ホームページでも随時更新しております。また、各機関から発信されているCOVID-19に関する情報も同ページにまとめておりますので、ご参考までにご確認ください(塩野義製薬ウェブサイト)。