2022/03/24

セフィデロコルの国内における製造販売承認申請について

塩野義製薬株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:手代木 功、以下「塩野義製薬」または「当社」)は、当社が創製した新規シデロフォアセファロスポリン抗菌薬セフィデロコルについて、本日付で日本国内における製造販売承認申請を行いましたので、お知らせいたします。

 

セフィデロコルは、これまでに3つの国際共同試験(複雑性尿路感染症患者を対象とした第2相試験 [APEKS-cUTI]、カルバペネム耐性グラム陰性菌感染症患者を対象とした第3相試験 [CREDIBLE-CR]、院内肺炎患者を対象とした第3相試験 [APEKS-NP])が完了しており、米国食品医薬品局(FDA)、および欧州委員会(EC)より承認されています1-3。この度、これらの臨床試験の結果を踏まえ、日本国内において製造販売承認申請を行いました。

 

カルバペネム系抗菌薬に耐性を示す腸内細菌目細菌、緑膿菌、アシネトバクター・バウマニおよびステノトロホモナス・マルトフィリアを含むグラム陰性菌を起因とする感染症の増加は、医療における重要課題となっています4-7。これらの細菌が引き起こす感染症は既存薬での治療が困難であり、致死率も増加しています8。このような背景から、カルバペネム系抗菌薬に耐性を示すグラム陰性菌に対する新たな抗菌薬の開発は、世界保健機関(WHO)および米国疾病予防管理センター(CDC)により最優先事項に挙げられています4, 9。また、日本医療機器総合機構(AMED)感染症創薬産学官連絡会は、創薬標的とする病原菌リストを公表し、研究開発のさらなる推進を呼びかけています10

 

塩野義製薬は、取り組むべきマテリアリティ(重要課題)として「感染症の脅威からの解放」を特定し、感染症のトータルケアの実現に向けた取り組みを進めております。当社は、グローバルの課題であるAMR(薬剤耐性)の対策を成功させ、人々の健康を守るために必要な感染症治療薬を、世界中の患者さまのもとにいち早くお届けできるよう、引き続き努力してまいります。

 

なお、本件が2022年3月期連結業績に与える影響は軽微です。

 

以 上

当社の薬剤耐性問題に対する取り組みについては、こちらをご覧ください。

 

 

【セフィデロコルについて】

セフィデロコルは、多剤耐性菌を含むグラム陰性菌の外膜を効果的に通過して抗菌活性を発揮する新規のシデロフォアセファロスポリン抗菌薬です。セフィデロコルは細菌のカルバペネムへの耐性獲得に関連する3つの主な機序(βラクタマーゼによる抗菌薬の不活化、ポーリンチャネルの変異による膜透過性低下、排出ポンプの過剰産生)による影響を受けずに抗菌力を発揮します。鉄と結合する独自の構造を有することにより、細菌が養分である鉄を取り込むために利用する鉄トランスポーターを介し、細菌内に能動的に運ばれます11。その結果、セフィデロコルは細菌のペリプラズム内に効率よく取り込まれ、細胞壁合成を阻害します12

 

参考

1.       2019年11月15日リリース FETROJA®(cefiderocol)の米国における新薬承認について

2.       2020年9月29日リリース FETROJA®(cefiderocol)の米国における院内肺炎を対象とした適応追加承認取得について

3.       2020年4月28日リリース FETCROJA®(cefiderocol)の欧州における承認取得について

4.       World Health Organization. Global priority list of antibiotic-resistant bacteria to guide research, discovery, and development of new antibiotics. February 27, 2017. Retrieved from https://www.who.int/medicines/publications/global-priority-list-antibiotic-resistant-bacteria/en/.

5.       Diene SM, Rolain JM. Carbapenemase genes and genetic platforms in gram-negative bacilli: Enterobacteriaceae, Pseudomonas and Acinetobacter species. Clin Microbiol Infect 2014; 20:831−38.

6.       Livermore DM. Current epidemiology and growing resistance of gram-negative pathogens. Korean J Intern Med 2012; 27:128−42.

7.       Brooke JS. Stenotrophomonas maltophilia: an emerging global opportunistic pathogen. Clin Microbiol Rev 2012; 25:2−41.

8.       Global burden of bacterial antimicrobial resistance in 2019: a systematic analysis. The Lancet 2022; 399:629-55

9.       Centers for Disease Control and Prevention (CDC). Antibiotic Resistance Threats in the United States 2019, Atlanta, GA: U.S. Department of Health and Human Services, CDC; 2019. Retrieved from https://www.cdc.gov/drugresistance/pdf/threats-report/2019-ar-threats-report-508.pdf

10.    AMED感染症創薬産学官連絡会 病原菌リスト https://id3catalyst.jp/apid/list.html

11.    Ito A, Nishikawa T., Matsumoto S, et al. Siderophore Cephalosporin Cefiderocol Utilizes Ferric Iron Transporter Systems for Antibacterial Activity against Pseudomonas aeruginosa. Antimicrob Agents Chemother. 2016;60(12):7396-7401.

12.    Tillotson GS. Trojan Horse Antibiotics—A Novel Way to Circumvent Gram-Negative Bacterial Resistance? Infectious Diseases: Research and Treatment. 2016; 9:45-52 doi:10.4137/IDRT.S31567.