2022/09/28

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬エンシトレルビル フマル酸(S-217622)の 第2/3相臨床試験 Phase 3 partにおける良好な結果について(速報)

  • 軽症/中等症患者において、重症化リスク因子の有無、ワクチン接種の有無にかかわらず、オミクロン株に特徴的なCOVID-19の5症状が消失するまでの時間(発症前の状態に戻るまでの時間)をプラセボに対して有意に短縮(主要評価項目を達成)
  • 投与4日目(3回投与後)におけるウイルスRNA量を有意に減少させ、優れた抗ウイルス効果を確認(4日目におけるベースラインからのウイルスRNA変化量はプラセボとの比較で1.4 log10 copies/mL以上の差)
  • オミクロン株流行期に実施した試験で、COVID-19症状の罹病期間を主要評価項目として、プラセボに対する有意差を示した世界で初めての経口抗ウイルス薬
 塩野義製薬株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役会長兼社長 CEO:手代木 功、以下「塩野義製薬」または「当社」)は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の経口抗ウイルス薬として開発中のエンシトレルビル フマル酸(開発番号:S-217622、以下、「本薬」)について、第2/3相臨床試験のPhase 3 partにおいて、主要目的を達成したことをお知らせいたします。
 Phase 3 partは、本薬(低用量、高用量の2用量)を1日1回、5日間経口投与した際の臨床症状の改善効果を検証することを主目的に、軽症/中等症患者を対象に実施されました。本試験では、日本、韓国、ベトナムにおいて重症化リスク因子の有無、またワクチン接種の有無にかかわらず、1,821例の患者が登録されました。本試験における主要評価項目は、発症から72時間未満に割付された患者集団における、オミクロン株流行期に国内で共通してみられる特徴的な5症状(鼻水または鼻づまり、喉の痛み、咳の呼吸器症状、熱っぽさまたは発熱、けん怠感 (疲労感))の消失までの時間であり、医学専門家や厚生労働省、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)、米国食品医薬品局(FDA)等の規制当局との協議を経て、その科学的かつ医学的妥当性を踏まえた上で設定しました 注)
 申請用量(低用量)の本薬投与により、対象患者集団においてCOVID-19の5症状が消失するまでの時間はプラセボ群と比較して約24時間短縮され、統計学的に有意な症状改善効果が確認されました(p=0.04)。症状消失までの時間の中央値は、本薬の申請用量投与群では167.9時間、プラセボ群では192.2時間でした。また、主要な副次評価項目である同患者集団における投与4日目(3回投与後)のベースラインからのウイルスRNA変化量は、プラセボ群と比較して1.4 log10 copies/mL以上大きく(p<0.0001)、これまでに実施した臨床試験1-3と同様に優れた抗ウイルス効果が示されました。いずれの用量においても、本薬の投与による重篤な副作用や死亡例の報告はなく、これまでの試験と同様の良好な忍容性と安全性が確認されております。申請用量投与群で比較的高頻度に見られた副作用は、これまでの試験でも観察された高比重リポ蛋白の減少および血中トリグリセリドの上昇でした。
 本薬については、2022年7月20日に開催された薬事・食品衛生審議会において、緊急承認制度下での審議が行われ、Phase 3 partの進捗状況等を踏まえ継続審議となっています。Phase 3 partの速報結果については、昨日厚生労働省およびPMDAへ共有済みであり、今後の承認審査ならびに審議について、両組織との協議を開始しています。引き続き、当社は、本試験に関連する全データの早期提出に向けて、データ解析および申請文書の作成に鋭意取り組んでまいります。
 塩野義製薬は、取り組むべきマテリアリティ(重要課題)として「感染症の脅威からの解放」を特定し、感染症のトータルケアの実現に向けた取り組みを進めております。COVID-19が世界的な脅威として人々の生活に大きな影響を与える中、当社はパンデミックの早期終息による社会の安心・安全の回復に貢献するために、本薬の開発に引き続き注力してまいります。今後も状況に変化があり次第、皆さまにお知らせし、企業としての社会的責任を果してまいります。
 なお、本件が2023年3月期の連結業績予想に与える影響に関しては現時点では未定です。今後、状況に応じて精査し、影響を認識した時点で速やかに公表いたします。
以 上

注)主要評価項目の設定について

オミクロン株流行期における臨床学的な有効性評価においては、明確な評価指標が定まっていなかったことから、薬事・食品衛生審議会後、医学専門家、関係省庁、日米の規制当局ともオミクロン株感染時における適切な主要評価項目について協議を重ねました。それらの協議内容に基づき、科学的かつ医学的に妥当と考えられる主要評価項目ならびに重要な副次評価項目を当社にて決定しています。評価する症状については、これまでに実施した本薬のPhase 2a part 1、Phase 2b part 2, 3で集積されたCOVID-19感染患者の12症状に関する臨床症状のデータを分析し、さらには、Phase 3 partの実施時期における国内での流行株の臨床症状に関する報告を収集した結果、オミクロン株流行期においては、COVID-19の12症状のうち、5症状(鼻水または鼻づまり、喉の痛み、咳の呼吸器症状、熱っぽさまたは発熱、けん怠感 (疲労感))が共通してみられる特徴的な症状であったことから、これら5症状の消失までの時間(発症前の状態に戻るまでの時間、試験プロトコルでは「快復」までの時間と規定)を主要評価項目として設定しました。また、オミクロン株感染時の体内におけるウイルス増殖および消失は過去の流行株に比べて早く、発症から一定期間経過後の症状の寛解も比較的速やかであることから、主要評価項目を評価する患者集団として発症から72時間未満に無作為割付された患者と規定しました。

【エンシトレルビル フマル酸(S-217622)について】

COVID-19治療薬候補であるS-217622は、北海道大学と塩野義製薬の共同研究から創製された3CLプロテアーゼ阻害薬です。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は3CLプロテアーゼというウイルスの増殖に必須の酵素を有しており、S-217622は3CLプロテアーゼを選択的に阻害することで、SARS-CoV-2の増殖を抑制します。これまでに軽症/中等症のCOVID-19患者を対象とした第2/3相臨床試験のPhase2b partまでが完了しており、現在はPhase 3 partおよび無症候/軽度症状のみ有するSARS-CoV-2感染者を対象としたPhase 2b/3 partを、日本を中心にアジアで実施中です。また、グローバルにおいては、入院を伴わないSARS-CoV-2感染症を対象としたグローバル第3相臨床試験(SCORPIO-HR試験)を実施中です。

参考:

1.      プレスリリース:2022年2月7日
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬S-217622の 第2/3相臨床試験Phase 2a partの結果について

2.      プレスリリース:2022年2月25日
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬S-217622の国内における製造販売承認申請について

3.      プレスリリース:2022年4月24日
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬S-217622の 欧州臨床微生物学感染症学会議(ECCMID)における臨床試験結果の発表について

[お問合せ先]

塩野義製薬ウェブサイト お問い合わせフォーム:

https://www.shionogi.com/jp/ja/quest.html#3.