2022/04/24

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬S-217622の 欧州臨床微生物学感染症学会議(ECCMID)における臨床試験結果の発表について

 塩野義製薬株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:手代木 功、以下「塩野義製薬」または「当社」)は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬として開発中の経口抗ウイルス薬(開発番号:S-217622、以下、「本治療薬」)について、第2/3相臨床試験のうちPhase 2b partのデータを含む最新の結果を、2022年4月23~26日にポルトガル リスボンで開催中の第32回 欧州臨床微生物学感染症学会議(ECCMID)にて発表しましたのでお知らせいたします。

本学会のLate-breakingセッションで発表された演題は以下のとおりです(発表資料は当社ウェブサイトからご確認いただけます)。

 

演題名
発表者(所属)
Results from Ph1 and Ph2a studies of S-217622, a novel 3C-like protease inhibitor as once daily oral treatment for SARS-CoV-2 infection
四柳 宏
(東京大学 医科学研究所)
Phase 2b part of S-217622, a novel 3C-like protease inhibitor as once daily oral treatment for SARS-CoV-2 infection in Japan and South Korea
大曲 貴夫
(国立国際医療研究センター病院)

 今回、これまで実施してきた第2/3相臨床試験のうち、Phase 2b partに関する最新の結果を発表しました。Phase 2b partは、ワクチン接種者を主(約85%)とする軽症/中等症のSARS-CoV-2感染者428例(日本:419例、韓国:9例)が無作為割付けされたプラセボ対象二重盲検比較試験です。オミクロン株流行後の感染者を中心に評価が実施された試験であり、本治療薬を1日1回、5日間経口投与された際の抗ウイルス効果および臨床症状の改善効果を確認することを主目的に実施されました。既報の内容1, 2に加えて、新たに発表された結果に関する要約は以下のとおりです。

 

・抗ウイルス効果

→本治療薬の投与により、感染性を有するSARS-CoV-2ウイルス(ウイルス力価)は速やかに消失した

→4日目(3回投与後)において、ウイルス力価陽性患者の割合は、プラセボ群と比較して約90%減少した

→ウイルス力価が陰性になるまでの時間の中央値は、プラセボに対して1~2日短縮した

→ウイルスRNA量についても、2日目(1回投与後)から9日目の各測定時点において統計学的に有意な減少が確認された

 

・4日目において、ウイルスRNA量をプラセボ群と比較して10分の1以下に低下させた(ベースラインからの変化量のプラセボ群との差異:‐1.0 log10 copies/mL以上)

 

・臨床症状の改善効果

→プラセボ群と比較して、COVID-19の12症状合計スコアに統計学的に有意な差は認められなかったが、本治療薬の投与により、オミクロン株感染に特徴的な呼吸器4症状(計画解析)および呼吸器症状に発熱を加えた5症状(事後解析)の複合スコアの改善が示された

 

・安全性

→Phase 1試験およびPhase 2a partの結果も含め、本治療薬は忍容性が高く、投与に起因する試験中止例は少数であり、重篤な有害事象や死亡例の報告はなかった

→これらの試験における投与に起因する有害事象は、一般的に軽度から中等度であり、治療的な処置なしで消失した

 

 当社は、本治療薬について、2022年2月25日付で条件付き承認制度の適用を希望する製造販売承認申請を独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)に対して行いました2。今回発表した結果はPMDAに提出済みであり、現在実施中の軽症/中等症のSARS-CoV-2感染者を対象としたPhase 3 part(目標症例数:1,785例)、無症候/軽度症状のみ有するSARS-CoV-2感染者を対象としたPhase 2b/3 part(目標症例数:660例)についても、結果が得られ次第、速やかに提出いたします。また、米国NIHの支援を受けて実施するグローバルPhase 3試験(目標症例数:約1,700例)3 の開始に向けて、準備を加速してまいります。

 

 塩野義製薬は、取り組むべきマテリアリティ(重要課題)として「感染症の脅威からの解放」を特定し、感染症のトータルケアの実現に向けた取り組みを進めております。COVID-19が世界的な脅威として人々の生活に大きな影響を与える中、当社はパンデミックの早期終息による社会の安心・安全の回復に貢献するために、本治療薬の開発に引き続き注力してまいります。今後も状況に変化があり次第、皆さまにお知らせし、企業としての社会的責任を果してまいります。

 

 なお、本件が2023年3月期の連結業績予想に与える影響に関しては現時点では未定です。今後、状況に応じて精査し、影響を認識した時点で速やかに公表いたします。

以 上

 

【S-217622について】

 COVID-19治療薬であるS-217622は、北海道大学と塩野義製薬の共同研究から創製された3CLプロテアーゼ阻害薬です。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は3CLプロテアーゼというウイルスの増殖に必須の酵素を有しており、S-217622は3CLプロテアーゼを選択的に阻害することで、SARS-CoV-2の増殖を抑制します。

 

参考:

1.       プレスリリース:2022年2月7日

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬S-217622の 第2/3相臨床試験Phase 2a partの結果について

2.       プレスリリース:2022年2月25日

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬S-217622の国内における製造販売承認申請について

3.       プレスリリース:2022年3月16日

塩野義製薬とACTGによる新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬S-217622のグローバル第3相臨床試験の実施について

 

 COVID-19に対する当社の取り組みは、当社ホームページでも随時更新しております。また、各機関から発信されているCOVID-19に関する情報も同ページにまとめておりますので、ご参考までにご確認ください(塩野義製薬ウェブサイト)。

 

[お問合せ先]

塩野義製薬ウェブサイト お問い合わせフォーム:

https://www.shionogi.com/jp/ja/quest.html#3.