中期経営計画(STS2030)では、ビジネスモデルの転換や新プラットフォームサービスの構築を目指しており、その変革過程において事業の不確実性が高まることが想定されます。社内外の急激な環境変化に対応できなければ、STS2030の達成はもとより、事業の継続性に影響を及ぼすことも懸念されるため、2020年度は関連するリスクの洗い出しに注力し、かつ、様々なビジネスリスクの情報が部門・組織より迅速に経営層へ報告される仕組みの構築と風土の醸成に努めています。

全社リスクマネジメント(Enterprise Risk Management)体制の構築・推進

当社グループでは、各組織が意思決定と業務執行に係るビジネスリスクを認識し、主体的にリスク管理・対応策を講じることを基本としています。新たな事業機会の創出とリスクの回避や低減など、適切な対応を行うとともに、パンデミック、自然災害、テロやサイバー攻撃等のクライシスリスクも含めたグループ全体のビジネスリスクを統括する全社リスクマネジメント(Enterprise Risk Management)体制を経営戦略の一環として構築し、その推進を図ってきました。特に、経営に影響を及ぼすような重要なリスクやその対応方針については経営会議及び取締役会にて審議・決定し、対応方針に基づき、主管組織が関連組織と協働し対策を実施しています。2021年度は、さらに経営戦略から組織の目的、風土と整合させた全社リスクマネジメントを目指した仕組みの再構築と風土の醸成に取り組んでいきます。

クライシスリスクについては、規則に基づき、人命を尊重し、地域社会への配慮、貢献及び企業価値毀損の抑制を主眼とした管理を推進しています。具体的には、大規模地震及びパンデミックの発生を想定した事業継続計画を含む総合的な体制の整備、推進を図っています。加えて、2021年度は、ITインフラも対象にした事業継続計画の取り組みを強化しています。今後も、医薬品の安定供給、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬ならびに予防ワクチンの研究開発など、製薬企業として社会的使命の高い業務が滞りなく行われるよう、直面するクライシスリスクに対応してまいります。

また、事業活動を通じて経済、社会、環境等の様々な社会課題の解決及び医療ニーズに応えることで、社会の持続可能性への貢献と当社グループの持続的な成長を目指すサステイナビリティ活動を推進しております。

主な事業等のリスク

シオノギの業績及び経営に重要な影響を及ぼす可能性のある主なリスクと対応は次の通りです。

リスク項目 概要 対応
制度・行政に関するリスク

・薬価基準の改定を含む薬剤費抑制策、医療保険制度の改革など行政施策の動向による影響

・医薬品の開発、製造等に関連する国内外の規制の厳格化による追加的な費用の発生や製品が規制に適合しなくなる事態

・革新的な新薬の社会が許容できる価格での提供

・創出したイノベーションの価値を示すエビデンスの構築

・ 業界団体活動を通じたイノベーション価値を訴求する取り組み

・薬価制度改革や各種規制等の最新情報の入手と変化への迅速かつ適切な対処

医薬品の副作用等に関するリスク ・医薬品の市販後の予期せぬ副作用等による販売中止、製品回収等

・副作用情報などを適切に伝えるシステムの構築

・ 副作用等の拡大や被害の抑制につながる、全従業員教育の実施

・副作用等に基づく医療被害補償の保険加入

医薬品の研究開発に関するリスク

・医療用医薬品の研究開発における多大な経営資源の投入及び新薬が売上となるまでの様々な不確実性の存在

・新型コロナウイルス感染症の蔓延を解決するため、世界的な研究開発スピードの大幅な短縮

・新型コロナウイルス治療薬及びワクチンをはじめとした、注力する創薬プログラムや開発化合物の明確化と経営資源の集中的投下

・疾患領域の強みと低分子創薬の基盤を活かした効率的な創薬研究の展開

・ グローバルトップレベルの研究開発の生産性維持・向上

・新たな成長領域の育成、創薬確率の向上に向けた低分子以外の新たな創薬モダリティ(中分子医薬や抗体医薬等)の創薬技術の構築

・アライアンスの活用によるペプチド医療、ワクチン等の技術の獲得及び外部との協創に必要な経営資源の投入

・研究開発データに基づく厳格な見極めと開発可否判断、化合物の導入・導出による研究開発の加速

知的財産に関するリスク

・創製した医薬品の知的財産が十分に保護できない恐れや第三者の知的財産権の侵害

・創製した医薬品の知的財産満了及び後発品の発売による影響

・知的財産権の適切な管理体制の強化

・事業活動における侵害予防調査および導出入における知財デューデリジェンス実施による侵害予防の体制強化

特定製品への依存に関するリスク ・主力品目における知的財産権の満了及びそれに伴う後発品の発売、薬価改定や競合品の出現、流行の規模、その他予期せぬ事情による売上減少や販売中止

・薬価制度や競合状況の最新情報に基づく製品群の市場投入や契約見直し

・イノベーション創出の重要性と価値の訴求を図る業界団体での連携および意見表明等

・医薬品中心から、医薬品を含むヘルスケアサービス全般を提供する事業変革の推進

他社とのパートナーシップに関するリスク ・研究、開発、製造、販売での共同研究、共同開発、技術導出入、共同販売等の他社との提携における契約の変更・解消、提携の遅延または停滞等

・多方面からの分析・評価を行った提携可否の判断

・想定されるリスクを織り込んだ契約の締結及びリスク低減に向けた継続的な協議と合意形成

・提携先とのガバナンス体制構築と維持、提携におけるリスク把握と解決策の策定

自然災害やパンデミックに関するリスク ・大地震や気候変動に伴う暴風雨、洪水等の自然災害及び不慮の事故、パンデミックの発生等による事業所の閉鎖、工場の操業停止、それに伴う製品供給の遅延・停止

・BCP策定と訓練実施や計画の見直し

・サプライヤー監査による環境・安全状況等の確認と改善要求

・製品の安定供給のための原材料調達先分散の検討

環境汚染に関するリスク

・医薬品の研究、製造過程で使用・生成する物質の人体や生態系への影響

・環境汚染やその危害等の顕在化による、施設の一時閉鎖や対策・復旧、法的責任の発生

・環境・安全衛生の統括管理体制及び管理規定の設定

・法令遵守及びより厳しい自主管理基準・目標の策定、対応・対策の実行及びそれらの適切性の確認

金融市場および為替動向に関するリスク ・金融市場や為替市場の変動による退職給付債務の増加、海外提携先からのロイヤリティー収入への影響等

・年金資産の複数の運用商品による分散投資

・為替変動リスクに対する為替予約取引の活用

人材確保・育成に関するリスク ・ 雇用情勢、ESG経営への要請の高まり等、ポストコロナ時代を見据えた働き方等の環境変化を好機と捉え、社会課題の解決を担う人材、HaaS企業として持続的に成長していくシオノギのトランスフォーメーションを具現化できる人材、全社視点で論理的に考えてグループの高効率経営を支える人材を十分に確保・育成できないことによる影響

・多様な価値観・専門性を持った人材の確保・育成

・ダイバーシティ&インクルージョンの実践

・自己成長の機会や、個の原動力を支える制度・仕組みの強化

・2030年ビジョン実現に資する人材育成や育成を支えるマネジャー教育実施

・STS2030で目指すHaaS企業の実現に資するIT/デジタル技術活用による業務変革/価値創造トレーニング

・社長塾やグループ会社役員への登用による経営幹部育成

ITセキュリティ・情報管理に関するリスク

各種ITシステム(アウトソーシング先を含む)を利用し、かつ個人情報を含む多くの機密情報を保有している中、従業員及びアウトソーシング企業等の不注意または故意による行為、あるいは悪意をもった第三者によるサイバー攻撃やウイルスの感染等によるシステムの停止及びセキュリティ上の問題が発生した場合

・事業活動、経営成績及び財政状態、信用に重大な影響を及ぼす可能性
・損害賠償請求等の法的な損害や事後対応に係る費用等が発生する可能性

・情報管理を統括する責任者として情報の保全及び情報セキュリティの確保に関する方針を定めるCIO(Chief Information Officer)、データ及び文書類の利用並びに管理を統制する責任者としてCDO(Chief Data Officer)、IT運営の責任者としてグローバルITヘッドをそれぞれ任命し、法規制やガイドラインを踏まえた情報管理に関する規程等を整備

・個人情報に関する、グローバルプライバシーポリシーを策定

・情報管理や個人情報の重要性に対する認識及び個人情報保護に関する法令遵守の必要性を従業員に周知徹底

・サイバー攻撃や大規模災害等の危機事象発生に備えたIT-BCP体制構築のプロジェクトを立ち上げ

・ITインフラの整備、情報セキュリティ基盤の強化・運用の改善

・台湾拠点におけるサイバー攻撃の実例から、再発防止及びグローバル各拠点での未然防止に向けた対策としてグローバルセキュリティアセスメントの実施と対応、グループ全体でのネットワーク体制の抜本的見直し等の対策の実施

コンプライアンスに関するリスク 事業活動の遂行にあたって、薬事規制や製造物責任等の様々な法規制の適用を受けるだけでなく、生命に直結する医薬品産業として社会から極めて高い倫理観を求められます。そのため、法令違反だけでなく、社会の要請に反するような行動は、ステークホルダーからの当社グループに対する信頼の失墜や低下を招き、結果として業績に影響を与える可能性

・事業活動の中でコンプライアンスの遵守を常に最優先事項として定め、四半期ごとの社長メッセージの中でコンプライアンスについて言及

・従業員のコンプライアンス意識の強化を図る

・シオノギグループ行動憲章の項目としてコンプライアンスを定め、コンプライアンスポリシーを制定

・コンプライアンス委員会、内部通報窓口(社内、社外)を設置

・コンプライアンス委員会は、代表取締役社長をコンプライアンス委員長として年4回開催し、コンプライアンス上の課題を協議し、必要な教育(ハラスメント・情報漏洩・贈収賄防止など)や取り組みを実施

訴訟に関するリスク ・医薬品の副作用、製造物責任、労務問題、公正取引などに関して訴訟を提起される可能性

・リスク低減に必要な社内体制の強化

・弁護士や弁理士など専門家との協議による適切な対応

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大

・今後、更なる感染拡大に伴い事業活動が制限された場合、原材料の調達などのサプライチェーンの停止・停滞により、医薬品の安定供給に重大な影響を及ぼす可能性

・研究・臨床試験の遅延やMRによる情報提供活動の制限により、新製品等の承認・上市や市場浸透、医薬品の安全性情報や適正使用情報の収集・提供に重大な影響を及ぼす可能性

・感染拡大防止に向けた出社率抑制

・生産性を維持・向上するために必要な新しい働き方への取り組み

・製薬企業として社会的責任を果たすため、自社医薬品の安定供給を最優先とした対応を行うことを目的に、これまでに想定していたパンデミックBCPの活用により、事業継続を推進

・コロナ禍における販売活動として、厚生労働省による販売情報提供活動に関するガイドラインの発出下で情報提供の仕組みや内容を変更

上記以外にも、事業活動に関連した様々なリスクがあり、ここに記載されたものが当社グループのすべてのリスクではありません。
なお、文中の将来に関する事項及びリスクは、当連結会計年度末現在において判断したものです。これらリスクの詳細は有価証券報告書を参照ください。

2020年度に発生したインシデントは、以下のとおり対応しています。

【金ケ崎工場ジクロロメタン漏出への対応】

 2021年1月、シオノギファーマ株式会社の金ケ崎工場(岩手県)敷地内において、溶剤であるジクロロメタン約17kLが敷地内に漏出しました。氷塊が、タンク底部の排出バルブのハンドルを押し下げて半開となったことが直接の原因です。 現在、周辺への拡散を防ぎながら回収を実施しており、現在に至るまで工場敷地外への漏洩は確認されていません。また、今後も工場各所に設置した地中観測点にてサンプリング・分析を行うなど、適切な監視活動を行っていきます。工場近隣の方々はもとより、関係各所の皆さまにご心配をおかけしておりますことに心よりお詫び申し上げます。

 

【台湾塩野義に対するサイバー攻撃への対応】

 2020年10月に発生した台湾塩野義に対するサイバー攻撃を機に、ITインフラを整備し、事業継続をより確実にするためにプロジェクトチームを立ち上げ、IT-BCPの構築に取り組んでいます。また、ITインフラの整備、情報セキュリティ基盤の強化・運用の改善を図るとともに、台湾拠点におけるサイバー攻撃の実例から、再発防止およびグローバル各拠点での未然防止に向けた対策として、 グローバルセキュリティアセスメントの実施と対応、グループ全体でのネットワーク体制の抜本的見直し等の対応を強化しています。

危機管理体制

シオノギでは、危機管理の基本的な方針である「危機管理規則」に基づき、総合的な危機管理体制を構築するとともに、各種対策要綱やマニュアルを整備し、緊急時に迅速に対応できる体制を整えています。なかでも、甚大な自然災害発生時における従業員の安否確認を危機管理の最優先事項と考え、定期的な安否確認訓練を実施するとともに災害備蓄品の棚卸、中央および事業所災害対策本部体制の見直しを行っています。

事業継続計画(BCP)

危機発生時においては、医療機関への安定的な製品供給やサービスの提供を通じて社会的責任を遂行するために、バリューチェーンごとに事業継続計画(BCP)を策定しています。また、定期的に経営層や各部門を対象とした訓練を実施することで、事業継続に向けた体制構築を図っています。

特に医薬品の安定供給においては、2018年度のシオノギファーマの設立に伴い、BCP体制を見直し、事業継続マネジメントシステムを構築・運用しています。

事業継続マネジメントシステム体系図

体系図

COVID-19 を踏まえ、さらなる強靭な体制を整備

シオノギが目指すのは、感染症を主領域とする創薬型製薬企業として感染症に対峙しつつ、パンデミックをはじめとするあらゆる脅威に対し、レジリエンスがある会社です。今回、COVID-19への対応として事業を継続する中で明確となった様々な課題に対して対策を講じ、事業継続における万全な体制を整えることで、社会活動・経済活動の持続可能性(サステイナビリティ)のバランスを取りながらステークホルダーに対し責任を果たしていきます。

 

具体的には、更なる感染拡大に伴い事業活動が制限された場合、原材料の調達などのサプライチェーンの停止・停滞による医薬品の安定供給や、新製品等の承認・上市や市場浸透、医薬品の安全性情報や適正使用情報の収集・提供に重大な影響を及ぼす可能性があるため、これらのリスクの低減策として、感染拡大防止に向けた出社率抑制などの政府・行政の要請に応えつつ、生産性を維持・向上するために必要な新しい働き方に取り組んでおります。加えて、製薬企業として社会的責任を果たすため、自社医薬品の安定供給を最優先とした対応を行うことを目的に、これまでに想定していたパンデミック BCPの活用により、安定供給を含む重要業務に影響を及ぼさないよう、事業継続を進めております。

新型インフルエンザ等対策

シオノギは新型インフルエンザ等対策特別措置法(平成24年成立)第3条に基づき指定公共機関の指定を受け、重篤な健康被害とこれに伴う大きな社会的影響の発生が懸念される新型インフルエンザあるいは未知の感染症が世界的に大流行(パンデミック)した際に、可能な限り従業員等の感染を防止し、また、職場における感染拡大の防止に努めるとともに、流行期間中においても重要業務の維持に努めることが求められています。シオノギが担っている社会的責任を遂行するため、平成26年「新型インフルエンザ等対策業務計画」を策定しております。

環境リスクマネジメント

シオノギは環境の変化が事業活動に与えるリスクを抽出し、事業への影響を評価したうえで各々の課題への対策を検討し、不測の事態が発生した場合にその被害を最小限にするための管理と対応のレベル向上に取り組んでいます。