AMRに対する考え方

 AMR(Antimicrobial Resistance)とは細菌等の病原性微生物が抗菌薬への薬剤耐性を獲得し、抗菌薬が効かなくなることです。AMRについては、抗菌薬の不適正使用や過剰投与が大きな要因と言われていますが、抗菌薬製造工場からの環境排出も耐性菌を生み出す要因の1つとして考えられており、様々な面からの対策が重要となっています。

 SHIONOGIグループは長年にわたって抗菌薬を社会に提供しており、抗菌薬を取り扱う企業の当然の責任として製造過程における抗菌薬の環境排出を厳格に管理しています。AMRは世界的な脅威となることから、抗菌薬の環境排出については自社のみならずサプライチェーン全体を管理する必要があります。

中長期目標および対応

 SHIONOGIグループは、抗菌薬の製造過程における環境への影響を軽減するために、SHIONOGIグループの工場およびサプライヤーの監査およびそのフィードバックを通じて、2030年までにサプライチェーン全体で抗菌薬環境排出の適正管理を実現することを計画しています。そのために、自社工場の抗菌薬の管理体制の維持・向上を図るとともに、すべての関連サプライヤーの初回AMR監査を2024年度までに完了することを目指しています。

 AMR監査は、これまでAMR Industry Alliance*1 が定める、「抗菌薬の排出を管理するための手引き(以下、手引き)*2」に基づいて実施しておりましたが、2022年6月、新たに「Antibiotic manufacturing standard*3」が発出されたことを受け、今後は当standardに基づき抗菌薬の環境排出抑制・管理を進めてまいります。

AMR対策の中長期目標

*1  AMR Industry Alliance(外部リンク)

 2016年9月に開催されたダボス会議において、12社のリーディングカンパニーとともに、“AMR Industry  Roadmap”に署名しました。署名企業は、率先して自社および委託先の管理を行うことと、AMR対策のロードマップを定め、その環境排出の管理手法をすべての抗菌薬製造メーカーに提供することなどを通じて、AMRの発生抑制を目指しています。本活動は、現在“AMR Industry Alliance”として抗菌薬を扱う多くの会社も加えた活動に発展しています。

ダボス会議での共同宣言(外部リンク)

ロゴマーク

*2  抗菌薬の排出を管理するための手引き(外部リンク)

*3  Antibiotic manufacturing standard(外部リンク)

AMR Benchmark 2021*1へ選定

 SHIONOGIグループのAMR対策に関する活動全般が高く評価され、AMR Benchmark 2021へ選定されました。特にManufacturing(製造)の項目では、トップスコアである93を獲得しました。

*1 オランダを拠点とするNGO「Access to Medicine Foundation」が薬剤耐性(AMR)に関する取り組み状況を分析、評価した世界初のレポート。

詳細はこちらのWebサイトをご覧ください。(外部リンク)

抗菌薬の排出抑制・管理の取り組み
抗菌薬の排出抑制・管理の取り組み
抗菌薬の排出抑制・管理の取り組み
*2  SHIONOGIグループで抗菌薬を製造しているのは金ケ崎工場、徳島工場のみです。

 SHIONOGIグループでは  AMR Industry Alliance が定める手引きに基づいて、抗菌薬の排出抑制・管理を行っており、抗菌薬を製造するSHIONOGIグループの工場およびすべての国内サプライヤーの監査を実施しています。また、2019年度から海外サプライヤーの監査にも着手しています。(表1・2)

 抗菌薬の排出抑制・管理の取り組みとして、SHIONOGIグループにおける抗菌薬の旗艦製造工場である金ケ崎工場では、製造棟ごとに排水中の抗菌薬の不活化を行った後に社内の排水処理施設を経由して排出しています。手引きに従い、実際の工場排水中に含まれる抗菌薬の濃度分析を実施し、自然環境に排出しても影響のないレベルであるかを確認しています。現在、金ケ崎工場で製造している5品目すべての環境排出基準値*3を順守していることの確認が完了しています。また、抗菌薬製造プロセスにおいて、金ケ崎工場から排出される固形廃棄物は全て外部委託業者(エコシステム秋田)に焼却処分を委託しており、固形廃棄物経由での抗菌薬の環境排出はありません。

 サプライヤーでは、国内で製造委託している4社4品目中、3社3品目で環境排出基準値を順守していることを確認しています。順守が確認できなかった1社1品目については、現在是正措置を実施しています。また海外サプライヤー3社に対して2品目の製薬を委託しており、そのうち2社について環境排出基準値の順守を確認しています。環境排出基準値の順守状況が確認できていない残りの1社については継続して確認を実施し、必要に応じて是正処置を行います。コロナ禍における移動制限などで2020および2021年度は監査の計画を進捗させることができませんでしたが、今後も国内および海外でそれぞれ年間2~3社、1~2社程度のペースで、サプライヤーの環境排出基準順守状況の確認を行う予定です。

*3 工場排水中に含まれる抗菌薬の環境排出基準値は、AMR Industry Alliance が発行する文献*4に記載のPNECs(Predicted No-Effect Concentrations)、あるいはEMA*5ガイドライン記載の基準値(0.01μg/L)のいずれかから採用して設定しています。

*4 Science‐based Targets for Antibiotics in Receiving Waters from Pharmaceutical Manufacturing Operations (外部リンク)

*5 EMA:European Medicines Agencyの略で欧州医薬品庁

表1:SHIONOGIグループが扱う抗菌薬原薬*6の環境排出基準値と監査対象(色付きのセルが2021年度までの監査対象)*7
抗菌薬原薬の環境排出基準値と監査対象の表

F、G、H社が海外サプライヤーで、未実施のG社は今後監査を実施予定

*6 製造受託品については表記していませんが、環境排出基準値を遵守しています。

*7 2020年4月にバンコマイシン塩酸塩の事業承継が行われたため、関連サプライヤー(E社、I社)は監査対象から除外しました

表2:サプライヤーの監査結果(2021年度までの実績)
サプライヤー名 所在国 マネジメントシステム 排水管理 固形廃棄物管理 環境排出基準値の順守状況
A社 日本
B社 日本
C社 日本
D社 日本
F社 インド
H社 イタリア

○:「抗菌薬の排出を管理するための手引き」の基準に適合

△:「抗菌薬の排出を管理するための手引き」の基準と比べ、一部不適合があり、是正処置対応中

×:「抗菌薬の排出を管理するための手引き」の基準と比べ、複数の不適合があり、是正処置対応中