2023/09/12

低中所得国でのセフィデロコル提供に向けた抗菌薬製造に関する GARDPとOrchid Pharmaによるサブライセンス契約の締結について ~多剤耐性グラム陰性菌感染症治療薬セフィデロコルのグローバルアクセス拡大に向けて~

 塩野義製薬株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:手代木 功、以下「塩野義製薬」)、The Global Antibiotic Research and Development Partnership(本部:スイス、ジュネーブ、代表: Manica Balasegaram、以下「GARDP」)およびClinton Health Access Initiative(本部:米国マサチューセッツ州、CEO:Neil Buddy Shah、以下「CHAI」)は、セフィデロコルに関するライセンス契約1に基づき、このたびGARDPが低中所得国向けのセフィデロコル製造に関するサブライセンス契約を、Orchid Pharma Ltd (本社:インド、タミル・ナードゥ州、会長:Ram Gopal Agarwal、以下「Orchid社」)と締結したことをお知らせいたします。
 塩野義製薬、GARDP、CHAIは、セフィデロコルに関するライセンス契約および提携契約を締結し、3者共同ですべての低所得国および多くの低中所得国、高中所得国を含む世界135ヵ国における抗菌薬へのアクセス拡大に向けた取り組みを推進しています1,2。特に、低中所得国では、カルバペネム耐性菌感染症の患者数増加など、薬剤耐性(antimicrobial resistance、以下「AMR」)の深刻な脅威に直面している一方で、薬剤耐性菌に対する有効な抗菌薬へのアクセスは、法規制や経済的な理由など多くの障壁から先進国と比較して大きく遅れています3

 このたび、GARDPとOrchid社の間で締結されたサブライセンス契約(以下、「本契約」)には、アクセスや環境に関する事項や適正使用に関する重要な条項が含まれており、医療リソースが限られた環境下でも、各国の医療制度に基づき、患者が支払い可能な価格でのセフィデロコルの提供を実現するために、製造スケールに応じたコスト削減が価格設定に反映できる規定が盛り込まれています。

 また、本契約では、Orchid社がセフィデロコルを世界保健機関(World Health Organization:「以下、WHO」)の医薬品事前認証(Prequalification:「以下、PQ」)プログラムに申請することも規定しています。WHOのPQリストに掲載された製品は、WHO加盟国における各国規制当局の薬事承認に要する時間を90日に短縮するWHOとの共同登録申請の対象となります。2023年3月にWHOは、セフィデロコルの製造業者に関心表明を提出するよう募集しており、これは結核以外の細菌感染症治療薬にWHOがPQ提出の資格を与えた初めての例となります。

 今後は、塩野義製薬、GARDP、CHAIの3者によるセフィデロコルに関するライセンス契約および提携契約に基づき、CHAIが塩野義製薬とOrchid社との間のセフィデロコルに関する技術移転を支援します。塩野義製薬はセフィデロコルの製造に必要なすべての情報をOrchid社に提供し、Orchid社の生産能力の向上に貢献することで、セフィデロコルのグローバルでのアクセス拡大を目指します。

 GARDPのExecutive DirectorであるManica Balasegaram氏は次のように述べています。

 「抗菌薬へのアクセスは、AMRの脅威が世界中に広がる中で課題として取り上げられていません。これは製薬業界のみならず、公衆衛生の失敗といえます。低中所得国の抗菌薬の価格を適切化することで、それらの国々での抗菌薬へのアクセスを改善・促進し、高所得国との格差を是正します。これにより、AMRの脅威を効果的に低減することができます。私たちはOrchid社と協力してセフィデロコルでこのことを実現できることを誇りに思っています。このプロジェクトが成功例となり、他の抗菌薬の模範となることを願っています。」

 Orchid社のManaging DirectorであるManish Dhanuka氏は次のように述べています。

 「私たちは、塩野義製薬、GARDP、CHAIと協力し、必要な地域への重要な抗菌薬のアクセス拡大に向けたソリューションを提供できることを誇りに思います。私たちは、数十年にわたって蓄積されたセファロスポリン系抗菌薬製造に関するノウハウを有します。品質が保証され、かつ手頃な価格で販売できるようセフィデロコルを生産することで、低中所得国の人々の満たされていないニーズに応えてまいります。」

 塩野義製薬の取締役副会長である澤田拓子は次のように述べています。

 「私たちは、満たされていない重要なヘルスケアニーズに対処していく上で革新的な新薬の研究開発にとどまらず、GARDPおよびCHAIとのパートナリングなど、抗菌薬へのアクセスとその適正使用を含む重要な公衆衛生上の優先事項に焦点を当てた取り組みにも注力しています。このたびのGARDPとOrchid社との契約締結を歓迎するとともに、Orchid社が参加されることで低中所得国に住む人々の医薬品へのアクセス向上に向けた取り組みが今後も前進し続けることを確信しています。」

 CHAIのExecutive Vice President, Infectious Diseases and Chief Science OfficerであるDavid Ripin氏は次のように述べています。

 「CHAIは、低中所得国に暮らす人々が細菌感染症に対して適切な診断と治療が受けられるように尽力しています。AMRの市場が形成され、患者の生活を改善するための特徴的なプロジェクトを実現するパートナーに対するサポートができることにとても興奮しています。」

 塩野義製薬、GARDP、CHAIは互いに連携し、重要な抗菌薬への公平なアクセスを拡大するための新しいモデルの構築に精力的に取り組んでまいります。
以上

パートナーについて

塩野義製薬

 塩野義製薬は「常に人々の健康を守るために必要な最もよい薬を提供する」という基本方針に基づき、患者さまの利益に貢献しています。当社は、HIV、インフルエンザ、抗菌薬耐性に対する新薬の研究開発に取り組み、現在、新規シデロフォアセファロスポリン抗菌薬であるセフィデロコルを含むいくつかの感染症領域における治療薬を販売しています。当社は感染症領域を中心に、社会的なニーズの大きい疾患領域を研究開発のコア領域として特定し、ヘルスケア社会課題の解決に向けて取り組んでいます。塩野義製薬株式会社の詳細については、https://www.shionogi.com/jp/ja/ をご覧ください。

GARDP | Global Antibiotic Research and Development Partnership

(グローバル抗菌薬研究開発パートナーシップ)
GARDP は、健康に最大の脅威をもたらす薬剤耐性菌感染症の新規治療薬を開発するスイスに拠点を置く非営利団体です。抗菌薬を必要とするすべての人が、有効で入手可能な価格で治療を受けられるようにするため、2016年に世界保健機関 (WHO) およびDNDi (Drugs for Neglected Diseases initiative:顧みられない病気の新薬開発イニシアティブ) により発足し、2018年に法人化しました。GARDPは、オーストラリア、ドイツ、日本、モナコ、オランダ、カナダ、南アフリカ、スイス、英国、スイス・ジュネーブ州の各政府、欧州連合、ならびにウェルカム・トラスト他、民間財団から資金提供を受けています。また、GARDP Foundationとして法人登録されています。www.gardp.org

Orchid Pharma

 1992年に設立された Orchid Pharma Ltd. は、研究、製造、マーケティングといったバリューチェーン全体に確立された能力を有する製薬企業です。Orchid社は、グローバルの第3相臨床試験を経て米国と欧州で承認申請に至る化合物を創出した実績を有する、インドで唯一の創薬型製薬企業でもあります。Orchid社は高品質のセファロスポリン系抗菌薬生産、無菌製品生産のパイオニアであり、米国FDAに承認された世界でも数少ない、そしてインドでは唯一の施設を有する企業です。Orchid社の施設は日本のPMDA、ブラジルのANVISAなどを含め、世界中の監督機関で認められています。 www.orchidpharma.com

CHAI | Clinton Health Access Initiative, Inc.

 CHAIは、低中所得国の人々の命を救い、病気の負担を軽減することに取り組んでいるグローバルヘルス組織です。CHAIはパートナーと協力して、高品質の医療システムを構築および維持するための政府および民間部門の能力を強化することを支援します。詳細については、www.clintonhealthaccess.orgをご覧ください。

その他のパートナーについて

GSK

 GSKは塩野義製薬と共同でセフィデロコルを開発したパートナーです。両社は低中所得国に住む患者さまの医薬品へのアクセスを支援することに取り組んでいます。塩野義製薬のGARDP、CHAIとの提携を通じて、セフィデロコルを手頃な価格でより多くの人々が利用できるようにするために、GSKは低中所得国での販売からのロイヤルティを放棄しています。

中国平安保険グループ

 Ping An Insurance(Group)Company of China、Ltd.は、塩野義製薬と共同で設立した合弁会社を通じてアジアでセフィデロコルを開発しており、両社は低中所得国に住む患者の医薬品へのアクセスを支援することを約束します。セフィデロコルを入手可能な価格でアジアのより多くの人々が利用できるようにするために、Ping An Insurance(Group)Company of Chinaは、GARDPおよびCHAIと塩野義製薬の提携をサポートしています。

セフィデロコルについて

 セフィデロコル(以下、「本薬」)は、「トロイの木馬」と呼ばれる新しいメカニズムにより、多剤耐性菌を含むグラム陰性菌の外膜を通過して抗菌活性を発揮する、塩野義製薬で創製された新規のシデロフォアセファロスポリン抗菌薬です。本薬は2019年11月に米国食品医薬品局(FDA)、および2020年4月に欧州委員会(EC)より承認を取得しており4,5、WHOの必須医薬品リストにも掲載されています。日本では、2022年3月に製造販売承認申請を行っています6

 本薬は細菌のカルバペネムへの耐性獲得に関連する3つの主な機序(βラクタマーゼによる抗菌薬の不活化、ポーリンチャネルの変異による膜透過性低下、排出ポンプの過剰産生)による影響を受けずに抗菌力を発揮します。鉄と結合する独自の構造を有することにより、細菌が養分である鉄を取り込むために利用する鉄トランスポーターを介し、細菌内に能動的に運ばれます。その結果、セフィデロコルは細菌のペリプラズム内に効率よく取り込まれ、細胞壁合成を阻害します。

参考:

1.     プレスリリース:2022年6月15日

塩野義製薬、GARDP、CHAIによる細菌感染症治療薬セフィデロコルに関するライセンス契約ならびに提携契約の締結について -135ヵ国でセフィデロコルへのアクセスを拡大-

2.     プレスリリース:2021年7月13日

低中所得国での薬剤耐性感染症の治療のための抗菌薬へのアクセスに関する塩野義製薬、GARDP、CHAIによる基本合意書の締結について

3.     Introduction and geographic availability of new antibiotics approved between 1999 and 2014

4.     プレスリリース:2019年11月15日
FETROJA®(cefiderocol)の米国における新薬承認について

5.     プレスリリース:2020年4月28日
FETCROJA®(cefiderocol)の欧州における新薬承認について

6.     プレスリリース:2022年3月24日

セフィデロコルの国内における製造販売承認申請について

[お問合せ先]

・   塩野義製薬ウェブサイト お問い合わせフォーム  :

https://www.shionogi.com/jp/ja/quest.html#3.

・   GARDP お問い合わせ先                                 :

野田(広報担当)       ynoda@dndi.org