このたび、GARDPとOrchid社の間で締結されたサブライセンス契約(以下、「本契約」)には、アクセスや環境に関する事項や適正使用に関する重要な条項が含まれており、医療リソースが限られた環境下でも、各国の医療制度に基づき、患者が支払い可能な価格でのセフィデロコルの提供を実現するために、製造スケールに応じたコスト削減が価格設定に反映できる規定が盛り込まれています。
また、本契約では、Orchid社がセフィデロコルを世界保健機関(World Health Organization:「以下、WHO」)の医薬品事前認証(Prequalification:「以下、PQ」)プログラムに申請することも規定しています。WHOのPQリストに掲載された製品は、WHO加盟国における各国規制当局の薬事承認に要する時間を90日に短縮するWHOとの共同登録申請の対象となります。2023年3月にWHOは、セフィデロコルの製造業者に関心表明を提出するよう募集しており、これは結核以外の細菌感染症治療薬にWHOがPQ提出の資格を与えた初めての例となります。
今後は、塩野義製薬、GARDP、CHAIの3者によるセフィデロコルに関するライセンス契約および提携契約に基づき、CHAIが塩野義製薬とOrchid社との間のセフィデロコルに関する技術移転を支援します。塩野義製薬はセフィデロコルの製造に必要なすべての情報をOrchid社に提供し、Orchid社の生産能力の向上に貢献することで、セフィデロコルのグローバルでのアクセス拡大を目指します。
GARDPのExecutive DirectorであるManica Balasegaram氏は次のように述べています。
「抗菌薬へのアクセスは、AMRの脅威が世界中に広がる中で課題として取り上げられていません。これは製薬業界のみならず、公衆衛生の失敗といえます。低中所得国の抗菌薬の価格を適切化することで、それらの国々での抗菌薬へのアクセスを改善・促進し、高所得国との格差を是正します。これにより、AMRの脅威を効果的に低減することができます。私たちはOrchid社と協力してセフィデロコルでこのことを実現できることを誇りに思っています。このプロジェクトが成功例となり、他の抗菌薬の模範となることを願っています。」
Orchid社のManaging DirectorであるManish Dhanuka氏は次のように述べています。
「私たちは、塩野義製薬、GARDP、CHAIと協力し、必要な地域への重要な抗菌薬のアクセス拡大に向けたソリューションを提供できることを誇りに思います。私たちは、数十年にわたって蓄積されたセファロスポリン系抗菌薬製造に関するノウハウを有します。品質が保証され、かつ手頃な価格で販売できるようセフィデロコルを生産することで、低中所得国の人々の満たされていないニーズに応えてまいります。」
塩野義製薬の取締役副会長である澤田拓子は次のように述べています。
「私たちは、満たされていない重要なヘルスケアニーズに対処していく上で革新的な新薬の研究開発にとどまらず、GARDPおよびCHAIとのパートナリングなど、抗菌薬へのアクセスとその適正使用を含む重要な公衆衛生上の優先事項に焦点を当てた取り組みにも注力しています。このたびのGARDPとOrchid社との契約締結を歓迎するとともに、Orchid社が参加されることで低中所得国に住む人々の医薬品へのアクセス向上に向けた取り組みが今後も前進し続けることを確信しています。」
CHAIのExecutive Vice President, Infectious Diseases and Chief Science OfficerであるDavid Ripin氏は次のように述べています。
「CHAIは、低中所得国に暮らす人々が細菌感染症に対して適切な診断と治療が受けられるように尽力しています。AMRの市場が形成され、患者の生活を改善するための特徴的なプロジェクトを実現するパートナーに対するサポートができることにとても興奮しています。」
パートナーについて
塩野義製薬
GARDP | Global Antibiotic Research and Development Partnership
Orchid Pharma
CHAI | Clinton Health Access Initiative, Inc.
その他のパートナーについて
GSK
中国平安保険グループ
セフィデロコルについて
セフィデロコル(以下、「本薬」)は、「トロイの木馬」と呼ばれる新しいメカニズムにより、多剤耐性菌を含むグラム陰性菌の外膜を通過して抗菌活性を発揮する、塩野義製薬で創製された新規のシデロフォアセファロスポリン抗菌薬です。本薬は2019年11月に米国食品医薬品局(FDA)、および2020年4月に欧州委員会(EC)より承認を取得しており4,5、WHOの必須医薬品リストにも掲載されています。日本では、2022年3月に製造販売承認申請を行っています6。
本薬は細菌のカルバペネムへの耐性獲得に関連する3つの主な機序(βラクタマーゼによる抗菌薬の不活化、ポーリンチャネルの変異による膜透過性低下、排出ポンプの過剰産生)による影響を受けずに抗菌力を発揮します。鉄と結合する独自の構造を有することにより、細菌が養分である鉄を取り込むために利用する鉄トランスポーターを介し、細菌内に能動的に運ばれます。その結果、セフィデロコルは細菌のペリプラズム内に効率よく取り込まれ、細胞壁合成を阻害します。
参考:
塩野義製薬、GARDP、CHAIによる細菌感染症治療薬セフィデロコルに関するライセンス契約ならびに提携契約の締結について -135ヵ国でセフィデロコルへのアクセスを拡大-
低中所得国での薬剤耐性感染症の治療のための抗菌薬へのアクセスに関する塩野義製薬、GARDP、CHAIによる基本合意書の締結について
3. Introduction and geographic availability of new antibiotics approved between 1999 and 2014
4. プレスリリース:2019年11月15日
FETROJA®(cefiderocol)の米国における新薬承認について
5. プレスリリース:2020年4月28日
FETCROJA®(cefiderocol)の欧州における新薬承認について
セフィデロコルの国内における製造販売承認申請について
[お問合せ先]
・ 塩野義製薬ウェブサイト お問い合わせフォーム :
https://www.shionogi.com/jp/ja/quest.html#3.
・ GARDP お問い合わせ先 :
野田(広報担当) ynoda@dndi.org