塩野義製薬株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役会長兼社長 CEO:手代木 功、以下「塩野義製薬」または「当社」)は、当社と国立大学法人大阪大学(所在地:大阪府吹田市、総長:西尾 章治郎、以下「大阪大学」)が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の罹患後症状に対する予防法の確立を目指して大阪大学大学院医学系研究科に共同研究講座(講座名:罹患後症状治療学共同研究講座)を設置しましたので、お知らせいたします。
COVID-19の感染者の中には、倦怠感、呼吸困難、脱毛、集中力低下などの罹患後症状、いわゆる「コロナ後遺症」を経験する人が多く、日本を含むグローバルで大きな課題となっています1,2,3,4。しかし、罹患後症状の治療法や予防法は未だ確立していません。COVID-19治療薬エンシトレルビル フマル酸(日本での製品名:ゾコーバⓇ錠125 mg、以下「エンシトレルビル」)の第2/3相臨床試験(SCORPIO-SR試験)では、本薬により罹患後症状の発現を抑制する可能性が示されました5,6,7。しかし、治療法や予防法の確立に向けては、さらなるデータの蓄積が求められています。
そこで、当社が社会課題を解決し得る可能性を持つ治療薬を、そして大阪大学が専門知識を持つ人材や医療体制をそれぞれ提供し、産学が連携して迅速に研究を推進させるため、その拠点として新たな共同研究講座を設置しました。また、この共同研究講座ではCOVID-19の罹患後症状に対するエンシトレルビルの有効性と安全性を評価する臨床研究を実施いたします。本臨床研究は、COVID-19患者2,000名を対象に、エンシトレルビルを1日1回、5日間経口投与した際の罹患後症状の発症抑制と安全性を評価する無作為化プラセボ対照二重盲検比較試験です(jRCTs051230184)。
塩野義製薬は、取り組むべきマテリアリティ(重要課題)として「感染症の脅威からの解放」を特定し、感染症のトータルケアの実現に向けた取り組みを進めています。エンシトレルビルのグローバル開発を加速し、さらなるエビデンスの集積に努めるとともに、各規制当局による審査等に迅速に対応してまいります。引き続き、社会の安心・安全の回復に貢献するとともに、新たな変異株の出現や今後の流行状況に合わせ、必要とされる治療薬、ワクチンを迅速に提供できるよう、COVID-19に対する研究開発を推進してまいります。
以 上
この講座では、大阪大学大学院医学系研究科 感染制御学の忽那賢志教授を中心に研究を進めていきます。
1. 講座名 :罹患後症状治療学共同研究講座
2. 設置場所:大阪大学大学院医学系研究科
3. 設置期間:2024年3月1 日~2027年2月28日
4. 研究代表者:忽那 賢志 (大阪大学大学院医学系研究科 感染制御学 教授)
5. 研究内容:軽症新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者を対象にして、エンシトレルビル フマル酸を5日間投与した時の罹患後症状に対する有効性及び安全性を、プラセボを対照薬として検証的に比較検討する。
6. 研究実施施設:大阪大学医学部附属病院(1施設のみ)
7. 研究対象者数:2,000例
8. 研究手法:医療機関への来院に依存しない臨床試験(Decentralized Clinical Trial:DCT)手法
9. パートナー医療機関数:150(予定)
【エンシトレルビル フマル酸について】
COVID-19治療薬であるエンシトレルビルは、北海道大学と塩野義製薬の共同研究から創製された3CLプロテアーゼ阻害薬です。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は3CLプロテアーゼというウイルスの増殖に必須の酵素を有しており、エンシトレルビルは3CLプロテアーゼを選択的に阻害することで、SARS-CoV-2の増殖を抑制します。オミクロン株流行期に、重症化リスク因子の有無やワクチン接種の有無にかかわらず幅広い軽症/中等症患者を対象に実施した第2/3相臨床試験のPhase 3 partにおいて、オミクロン株に特徴的なCOVID-19の5症状に対する改善効果(主要評価項目)および抗ウイルス効果(主要な副次評価項目)が確認されています8。これらの結果に基づき、日本においては2022年11月に緊急承認されています9。またシンガポールにおいては、2023年11月にSAR(Special Access Route)申請に基づいた承認を受けたことにより、シンガポール国内の一部の施設において使用が可能となっています10。さらに、米国においては、米国食品医薬品局(FDA)より開発の促進や審査の迅速化を目的とするファストトラック指定(Fast Track designation)を受領しています11。グローバルにおいては、入院を伴わないSARS-CoV-2感染患者を対象としたSCORPIO-HR試験12、入院患者を対象としたSTRIVE試験13、また、家庭内濃厚接触者を対象としたSCORPIO-PEP試験14、小児を対象とした国内第3相臨床試験15が進行中です。これらに加えて、当社とMedicines Patent Poolは、低中所得国(LMICs)に広く提供することを目的としたライセンス契約を締結し本薬のアクセス拡大に向けた取り組みを進めています16,17。
参考:
1. New policy brief calls on decision-makers to support patients as 1 in 10 report symptoms of “long COVID”
2. Persistence of somatic symptoms after COVID-19 in the Netherlands: an observational cohort study September 27, 2023. Lancet 2022; 400: 452–461.
3. https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/001146453.pdf
4. https://www.pref.kanagawa.jp/documents/82314/05122501.pdf
5. プレスリリース:2023年2月22日
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬 エンシトレルビル フマル酸によるウイルス力価の早期陰性化ならびに罹患後症状(Long COVID)の発現リスクに対する低減効果について
6. プレスリリース:2023年9月19日
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬 エンシトレルビル フマル酸の ESWI 2023における新たな臨床データの発表について- 治療1年後のCOVID-19罹患後症状(Long COVID)発現リスクの低下傾向を確認- -重症化リスク因子を有する患者への治療選択肢としての可能性を示唆-
7. エンシトレルビル フマル酸によるCOVID-19罹患後症状(Long COVID)抑制の可能性 http://hokuryukan-ns.co.jp/cms/wp-content/uploads/2023/04/PM_2023_04_039_web.pdf
8. プレスリリース:2022年9月28日
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬エンシトレルビル フマル酸(S-217622)の 第2/3相臨床試験 Phase 3 partにおける良好な結果について(速報)
9. プレスリリース:2022年11月22日
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬「ゾコーバ® 錠125mg」の 緊急承認制度に基づく製造販売承認取得について
10. プレスリリース:2023年12月19日
シンガポールにおける新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬エンシトレルビル フマル酸の平安塩野義香港とJuniper社のサブライセンス契約の締結およびSAR承認取得について
11. プレスリリース:2023年4月4日
新型コロナウイルス感染症治療薬 エンシトレルビル フマル酸(日本での製品名:ゾコーバ®錠125mg)について米国FDAよりファストトラック指定を受領
12. プレスリリース:2022年3月16日
塩野義製薬とACTGによる新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬 S-217622のグローバル第3相臨床試験の実施について
13. プレスリリース:2023年2月16日
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬 エンシトレルビル フマル酸の グローバル第3相臨床試験(STRIVE)開始について
14. プレスリリース:2023年6月9日
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬エンシトレルビル フマル酸のグローバル第3相臨床試験開始について‐ COVID-19の発症抑制効果の検証を目的とした発症予防試験を開始 ‐
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬エンシトレルビル フマル酸の国内第3相臨床試験開始について ‐ 6歳以上12歳未満の小児を対象とした臨床試験を開始 ‐
塩野義製薬とMedicines Patent Poolによる COVID-19治療薬エンシトレルビル フマル酸(S-217622)に関するライセンス契約締結について
Medicines Patent Poolによるジェネリック医薬品メーカー7社との COVID-19治療薬エンシトレルビル フマル酸の製造に関するサブライセンス契約の締結
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