- エンシトレルビルのCOVID-19重症化抑制効果により、重症化リスク因子を有する患者に対する効果的な治療薬であることが示唆された、新たな結果を発表
塩野義製薬株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役会長兼社長 CEO:手代木 功、以下「塩野義製薬」)は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬エンシトレルビル フマル酸(日本での製品名:ゾコーバ®錠125mg、以下「エンシトレルビル」)の新たに得られた臨床データについて、2024年6月27~29日に日本で開催中の、第98回日本感染症学会学術講演会/第72回日本化学療法学会総会 合同学会において発表したことを、お知らせいたします。
本学会で発表された2つの新規データの概要は、以下のとおりです。
重症化抑制効果
- JMDCデータベースを用いたエンシトレルビルのCOVID-19重症化抑制効果の検討 -
本発表は、大規模レセプトデータベース(JMDC)を用いた、エンシトレルビルのCOVID-19重症化抑制効果を検討した内容です。本臨床研究では、重症化リスク因子を有する18歳以上のCOVID-19外来患者167,310名を対象に、エンシトレルビルのCOVID-19重症化抑制効果を評価しました。主要評価項目である理由を問わない入院イベントに関して、エンシトレルビル群は対症療法群と比較して、約37%入院リスクが減少し、統計学的に有意に入院イベントを抑制しました。(エンシトレルビル群:入院リスク:0.494%、対症療法群:入院リスク:0.785%、リスク比 [95%信頼区間] :0.629 [0.420, 0.943] 、リスク差:-0.291 [-0.494, -0.088] )
この結果から、エンシトレルビルがCOVID-19重症化抑制効果を有し、重症化リスク因子を有する患者に対する効果的な治療薬であることが、示唆されました。
本臨床研究を実施した、長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科 呼吸器内科学分野 教授の迎 寛 医師は、次のように述べています。
「昨今、COVID-19の主流行株はオミクロン株になり、重症化率は低下したものの、高齢者を中心に重症化し、入院に至る患者さまがまだまだおられます。本研究では、オミクロン株流行期の実臨床のデータを用いて、エンシトレルビルの有意な入院抑制効果を確認しました。優れた抗ウイルス効果を有するエンシトレルビルを、重症化リスク因子を有する患者さまに早期投与することで、COVID-19による入院を抑制することが期待されます。」
なお、本結果に関する論文は、国際的な査読付学術誌「Infectious Diseases and Therapy」に掲載されています。
日常診療下におけるエンシトレルビルの安全性と有効性
- COVID-19治療薬エンシトレルビル フマル酸の 一般使用成績調査 最終解析結果の報告 -
本発表は、日本の臨床現場における、エンシトレルビルの安全性と有効性を評価した、新たな臨床データに関する内容です。日本で実施した一般使用成績調査では、4,125例の患者が登録され、そのうち安全性の解析対象として3,760例、有効性の解析対象として3,638例が評価されました。集計結果の概要は以下の通りです。
安全性
• 副作用は271例(7.2%)に認められ、主な副作用は、下痢91例(2.4%)、悪心43例(1.1%)、頭痛42例(1.1%)であった。
• 重篤な副作用は3例5件(頭痛、悪心、嘔吐、冷汗、全身性浮腫)であり、いずれも5日以内に回復した。
• 重要な特定されたリスクである「アナフィラキシー」の発現は確認されなかった。
有効性
• エンシトレルビルの投与後、解熱までの時間の中央値は約1.5日(36.0時間)、全症状消失までの時間は約6.5日(156.0時間)であった。
• エンシトレルビル投与開始後28日以内に入院した症例は、14例(0.4%)で、そのうち10例がCOVID-19の悪化によるものであった。
• 死亡は2例(0.1%)であり、いずれも偶発症や原疾患/合併症に起因すると考えられた。
これらの結果、エンシトレルビルは、重症化リスク因子の有無に関わらず、良好な忍容性と有効性を示し、新たな懸念は認められませんでした。
塩野義製薬は、取り組むべきマテリアリティ(重要課題)として「感染症の脅威からの解放」を特定し、感染症のトータルケアの実現に向けた取り組みを進めています。今後も塩野義製薬としては、禁忌事項(薬物相互作用、妊娠等)に留意いただき、安全に本剤をご使用いただけるように、情報提供に努めてまいります。今回の結果により、日本においてゾコーバⓇがより安心してお使い頂けるようになり、重症化リスク因子の有無にかかわらず、幅広いCOVID-19患者さまの治療に貢献することが期待されます。また、グローバルでの開発を加速し、さらなるエビデンスの集積に努めるとともに、より多くの国々でのコロナ治療に貢献できるよう努めてまいります。
以 上
【エンシトレルビル フマル酸について】
COVID-19治療薬であるエンシトレルビルは、北海道大学と塩野義製薬の共同研究から創製された3CLプロテアーゼ阻害薬です。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、3CLプロテアーゼというウイルスの増殖に必須の酵素を有しており、エンシトレルビルは3CLプロテアーゼを選択的に阻害することで、SARS-CoV-2の増殖を抑制します。オミクロン株流行期に、重症化リスク因子の有無やワクチン接種の有無にかかわらず幅広い軽症/中等症患者を対象に実施した第2/3相臨床試験のPhase 3 part(SCORPIO-SR試験)において、オミクロン株に特徴的なCOVID-19の5症状に対する改善効果(主要評価項目)が確認されています1、2、3。これらの結果に基づき、日本において2022年11月に緊急承認4され、2024年3月に通常承認5されました。エンシトレルビルは緊急承認以降100万人以上(推定)のCOVID-19患者に使用されており、患者さまの治療に貢献するとともに安全性情報が蓄積されてきました6。またシンガポールにおいては、2023年11月にSAR*(Special Access Route)申請に基づいた輸入許可を受けたことにより、一部の施設において使用が可能となっています7。さらにグローバルにおいては、SCORPIO-HR試験(COVID-19に関するACTIV-2プログラムの一つであるACTIV-2d)8、入院患者を対象としたSTRIVE試験9、家庭内濃厚接触者を対象としたSCORPIO-PEP試験10、小児を対象とした国内第3相臨床試験11が進行中です。これらに加え、当社とMedicines Patent Poolは、低中所得国(LMICs)に広く提供することを目的としたライセンス契約を締結し本薬のアクセス拡大に向けた取り組みを進めています12、13。
* SAR:未承認の治療薬を輸入・供給するためにシンガポールが独自に有する薬事システム、医療機関に所属する各医師からの申請が必要
2. プレスリリース:2022年9月28日
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬エンシトレルビル フマル酸(S-217622)の 第2/3相臨床試験 Phase 3 partにおける良好な結果について(速報)
3. プレスリリース:2023年2月22日
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬 エンシトレルビル フマル酸によるウイルス力価の早期陰性化ならびに罹患後症状(Long COVID)の発現リスクに対する低減効果について ‐国際学会CROI 2023において新規データを発表‐
4. プレスリリース:2022年11月22日
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬「ゾコーバ® 錠125mg」の 緊急承認制度に基づく製造販売承認取得について
5. プレスリリース:2024年3月5日
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬「ゾコーバⓇ錠125mg」の日本における通常承認の取得について
7. プレスリリース:2023年12月19日
シンガポールにおける新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬エンシトレルビル フマル酸の平安塩野義香港とJuniper社のサブライセンス契約の締結およびSAR承認取得について
8. プレスリリース:2022年3月16日
塩野義製薬とACTGによる新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬 S-217622のグローバル第3相臨床試験の実施について
9. プレスリリース:2023年2月16日
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬 エンシトレルビル フマル酸の グローバル第3相臨床試験(STRIVE)開始について
10. プレスリリース:2023年6月9日
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬エンシトレルビル フマル酸のグローバル第3相臨床試験開始について‐ COVID-19の発症抑制効果の検証を目的とした発症予防試験を開始 ‐
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬エンシトレルビル フマル酸の国内第3相臨床試験開始について ‐ 6歳以上12歳未満の小児を対象とした臨床試験を開始 ‐
塩野義製薬とMedicines Patent Poolによる COVID-19治療薬エンシトレルビル フマル酸(S-217622)に関するライセンス契約締結について
Medicines Patent Poolによるジェネリック医薬品メーカー7社との COVID-19治療薬エンシトレルビル フマル酸の製造に関するサブライセンス契約の締結
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