変化の先に挑む科学者──変異に先回りする広域コロナワクチンへの挑戦

松嵜さん
変異を重ねるウイルス。その変わり続ける性質に挑むため、塩野義製薬は次の科学を創り出そうとしている。塩野義製薬が進める「広域コロナワクチン」開発は、変異を見据えた新たなアプローチに挑む取り組みです。その現場で日々データと向き合い、解を探し続けているのが、入社4年目の研究者・松嵜日南(まつざき ひな)。
彼女の歩みには、科学と真摯に向き合う塩野義製薬の姿勢が宿っていました。

未来を拓く土台となる「引き出し」を作った新人期間

松嵜さん

―入社の経緯について教えてください。

大学院では、バイオ医薬品をいかに生産性高く製造するかという、まさに「ものづくり」の研究をしていました。就職活動を始めたのは2020年で、ちょうどコロナ禍が始まった頃。「本当に社会で求められている仕事は何か」を自分なりに考え抜き、感染症領域に強みを持つ塩野義製薬に惹かれたんです。最終的な決め手は「人」。面接で出会った方々が研究の話はもちろん、それ以外の話も興味津々に聞いていただける楽しい方ばかりだったので、「この人たちと働きたい」と心から思いました。

 

―入社後の配属は、希望されていたワクチン分野とは少し異なったそうですね。

最初の2年間は「抗体医薬品の探索研究」部門に配属されました。大学時代の研究とは必要となる知識や技術が異なる環境で、最初は戸惑いもありました。しかし、40年来その道を極めてきた先輩が、厳しくも優しく、一から丁寧に指導してくださいました。また同じグループの皆さんが、経験の浅い私が出したデータにも、真摯に向き合いディスカッションしてくれることも大きなモチベーションになりました。

 

―その2年間の経験は、今どのように活きていますか?

プロセス研究者としての土台を作ってくれた、かけがえのない時間だったと感じています。製造では、思いがけないトラブルに直面することも多々あります。そのトラブルを解決するための検討に行き詰まった時、創薬研究で培った大小様々な経験が思考の「引き出し」となり、突破口となっています。

トラブルを乗り越えた後の海外出張で一回り成長

松嵜

―入社3年目、「ワクチン事業本部」が新設されたタイミングで、自ら手を挙げて異動しました。どのような心境でしたか?

異動が決まった時は、大学院時代の専門性を活かせる期待感から「嬉しい」という気持ちが一番でしたが、それと同時に、ワクチン事業本部が立ち上がったばかりのタイミングだったので、大きな緊張感もありました。社会全体が「より多くのワクチンの選択肢」を強く求めていた時期であり、その期待に応える責任の重さを感じていました。「これからしっかり結果を出さなければ」と、背筋が伸びる思いでした。

 

―その期待の中、異動直後に大きな壁にぶつかったとか。

広域コロナワクチンの担当になってすぐ、製造プロセスの中で想定外の課題に直面しました。原因がすぐには特定できず、厳しいタイムラインの中で、短期間で確実な解決策を見出す必要があったんです。
前例のない状況に、経験したことのないプレッシャーを感じましたが、立ち止まる余裕はありませんでした。

そこから、半年間にわたる試行錯誤が始まりました。CMC部門や創薬部門が部署の垣根を越えてチームが一体となり、考えうるすべての要因を洗い出し、仮説を立て、検証し、また立ち返る――地道で粘り強い作業を積み重ねる日々でした。

困難の中でも支えになったのは、周囲の先輩方の姿勢です。どんなに忙しくても、必ず議論に参加してアイデアを出し合い、前を向いて取り組む。そうした環境の中で、「一人では成し遂げられない課題を、チームで乗り越える」という塩野義製薬らしい強さを実感しました。

 

この経験を通じて、大きな問題の中に潜む一つひとつの課題に誠実に向き合うこと、そしてデータを信じて一歩ずつ前に進むことの大切さを学びました。今振り返ると、この時の壁こそが、自分を研究者として大きく成長させてくれたと思っています。

 

―その大きな壁を乗り越えた後、大役を任されたのですね。

トラブル解決後、初の試製造を海外の委託先で行うことになり、その立ち会いを任されました。日本チームが半年かけて導き出した解決策が、現地で本当にきちんと機能するのか。祈るような期待の気持ちとともに、心配や不安も同じくらい大きかったです。

しかし現地に足を踏み入れ、研究者さんたちとディスカッションをしたり作業の様子を確認したりする中で、私たちと同じ課題感を持って丁寧に作業を行ってくださっている様子を確認し、その不安は払拭されました。書類やオンラインでのやり取りで感じていた以上の、彼らのこのプロジェクトに対する熱意を実感することができました。

製造手順書には表れない細かなオペレーションの積み重ねが、品質を左右することもあります。現場で膝を突き合わせて議論し、課題を共有することで、本当の意味で一つのチームになれたと感じました。

製造は無事に成功し、帰国の日に現地のメンバーがパーティーを開いてくださいました。国籍も会社も違うメンバーと「チームでやり遂げた!」と喜びを分かち合ったあの達成感は、忘れられません。

ワクチン研究者として、世界中に希望を届けたい

松嵜さん

―改めて、松嵜さんが開発に携わる「広域コロナワクチン」は、どのようなワクチンなのでしょうか?

皆さんもご存じの通り、新型コロナウイルスは次々と変異し、そのたびに私たちは新しいワクチンを開発するという対応を重ねてきました。広域コロナワクチンは、そうした状況を踏まえ、変異を前提とした新たなワクチンのあり方を模索する取り組みです。

ウイルスの変異しやすい部分ではなく、変異が起こりにくい領域に対する中和抗体を誘導するような抗原デザインを採用することで、新型コロナウイルスの新たな変異株の出現や将来のパンデミックに対して備えることができます。将来の変化も見据えながら、より持続的な予防につなげていく――その挑戦に、塩野義製薬は感染症研究に取り組んできた企業として本気で向き合っています。

 

―その中で、松嵜さんが担うCMCという仕事の重要性についても教えてください。

CMC(Chemistry, Manufacturing and Control)研究とは、創薬部門が見出した薬の種を、品質を管理しながら安定的に製造し、患者さんに届く「製品」という形に仕上げる、いわば開発を支える要のような仕事です。どんなに素晴らしい種も、「製品」という形にできなければ世に出ることはありません。

広域コロナワクチンの開発において、私たちが何よりも大切にしているのは、革新性とスピード,そして「安心して接種できる」確かな品質です。「コールドチェーン」が整備されていない低中所得国にも届けられるような安定なワクチン開発などにも、将来は取り組みたいと考えています。

加えて、手に届きやすい価格で提供できるような製造プロセスの設定も大事になります。

予防という形で公衆衛生や安全保障に貢献できるワクチンの社会的意義ははかり知れません。その想いを胸に、日々の研究に向き合っています。

※コールドチェーン:ワクチンなどの品質を保つため、製造から輸送、保管、接種に至るまで低温を維持する流通体制のこと。

「200%の挑戦」が、私を走り続けさせてくれる

松嵜さん

―入社を考える未来の仲間へ、メッセージをお願いします。

入社してから、立ち止まる暇がないほど挑戦の機会に恵まれてきました。壁にぶつかることもありましたが、そのたびに周囲の支えを得ながら、一歩ずつ前へ進むことで成長を実感しています。昨年より今年,今日より明日と、新しい経験を積むたびに、自分の世界が少しずつ広がっていくのを感じます。

ときには、自分の限界を超えるような挑戦を任されることもあります。けれど、それは決して一人で抱えるものではありません。周囲の仲間が支え、導いてくれる環境があるからこそ、思い切って前に進むことができるんです。

挑戦し続けたい、成長し続けたいと願う人にとって、塩野義製薬はその想いを存分に試せる場所だと思います。熱い気持ちを持つ皆さんと、いつか一緒に働ける日を楽しみにしています。

チームメンバー