2020/09/24

新型コロナウイルス感染症に関する取り組みについて(5)

塩野義製薬株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:手代木 功、以下「塩野義製薬」または「当社」)は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の世界的な蔓延による社会の混乱が続く中、医薬品の安定供給に努めるとともに、感染症を重点疾患領域に掲げる製薬企業として、公的機関やアカデミア、パートナー企業と連携し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する治療薬やワクチン、診断薬の開発に鋭意取り組んでおります1-8。このたび、予防ワクチンの開発について進展がありましたので、他の取り組みの現状とともにお知らせいたします。

 

1.      ワクチン開発に向けた取り組み

当社は、グループ会社のUMNファーマが有するBEVS注1を活用した遺伝子組換えタンパクワクチンを開発しています。遺伝子組換えタンパクワクチンは、ウイルスの遺伝子情報から目的とする抗原タンパクを発現・精製後に投与に供されます。遺伝子情報そのものを投与し、体内にて抗原タンパクを合成させるmRNAワクチン等の新規技術と比べて、抗原発現や精製に一定の開発期間を要する一方で、BEVSを活用したインフルエンザ予防ワクチンをはじめ、複数の製品がその効果と安全性を基に承認・実用化されている確立された技術です。

当社はこれまでに、共同研究先である九州大学・橋口研究室 (現在は京都大学に移籍)において調製された複数種の抗原タンパク候補ならびに、当社がBEVSにより調製した抗原タンパク候補について、ワクチンに添加する複数のアジュバント注2候補とともにマウスを用いた免疫原性試験を順次実施してきました。共同研究先の国立感染症研究所で実施された免疫原性に関する一連の評価により、このたび抗原特異的なIgG抗体価の上昇とウイルス中和活性を誘導する抗原タンパクおよびアジュバントの組み合わせを選定するに至りました。現在、臨床試験開始に必要な安全性試験や予防効果を裏付ける薬理試験に着手しております。当社は、2020年内の臨床試験開始に向けて、これら非臨床試験を迅速に実施するとともに、ヒトでの安全性と効果の確認に求められる臨床試験内容について、引き続き厚生労働省や独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)との協議を進めてまいります。また、2021年末までに3,000万人分以上のワクチンを生産することを目標に、これらの開発計画と並行して、ワクチンの製法ならびにスケールアップ検討と、生産設備の構築・増強を加速してまいります。

注1 Baculovirus Expression Vector System:昆虫細胞などを用いたタンパク発現技術
注2 免疫を活性化させ、ワクチンの効果を補強する物質

2.   治療薬の創製に向けた取り組み

北海道大学人獣共通感染症リサーチセンターとの共同研究において見出された新型コロナウイルス株に対する有望化合物の構造情報を起点に、新たに合成された後続化合物群に対して、薬効、安全性等の探索的評価を順次実施中です。現時点で最も有望な化合物に対する製造検討は実施済みであり、最終候補品を選抜後、速やかに非臨床試験に着手できるよう準備を進めております。当社は、引き続き2020年度内の臨床試験開始を目標に、本創薬研究に注力してまいります。

 

3.   診断薬の開発に向けた取り組み

当社は、2020年6月22日にお知らせした日本大学、群馬大学、および東京医科大学とのSARS-CoV-2を含むウイルスの新規迅速診断法に関するライセンス契約7に基づき、同共同研究チームが開発した革新的核酸増幅法(SATIC法:Signal Amplification by Ternary Initiation Complexes)を用いたSARS-CoV-2感染に対する迅速診断の実用化に取り組んでおります。SATIC法は、検出機器を必要とせず、目視かつ25分程度という短時間で感染の有無を判定できる手法であり、PCR法と同等の高い感度で、採取容易な唾液や喀痰サンプルからの検出を可能とする優れた特性を有しています。現在、本技術の製品化検討と体外診断用医薬品としての承認申請準備を進めておりますが、抗原キット等の種々の検査法が発売される中で、本技術の特性を活かし医療現場等におけるニーズにお応えするためには、一定水準以上の供給量を確保することが必要と考えております。そのため、初期型製品の提供開始目標を当初の2020年9月から2020年12月に改め、供給体制の構築に注力いたします。また、初期型に関しては複数試薬の用時混合調製が必要であることから、一般の医療機関等においても広くご活用いただけるよう、より簡便かつ多検体の迅速診断を可能とする改良型(キット)の早期提供に向けた製品開発ならびにスケールアップ検討を並行して進めてまいります。

 

なお、当社は、既感染者数の把握を目的としたSARS-CoV-2/COVID-19の疫学調査や研究などにお役立ていただくために、新型コロナウイルスIgG/IgM抗体検出キットを研究用試薬として販売中です4。より利便性を高めるため、当初発売していた50テスト/キットの製品から20テスト/キットの製品に変更しております。

 

 

塩野義製薬は、取り組むべき重要課題(マテリアリティ)として「感染症の脅威からの解放」を特定し、治療薬の研究・開発だけにとどまらず、啓発・予防・診断ならびに重症化抑制といった感染症のトータルケアに対する取り組みを進めております。当社はパンデミックの早期終息による社会の安心・安全の回復に貢献するために、産官学での連携を密にし、各取り組みを加速するとともに、今後も状況に変化があり次第、皆さまにお知らせし、企業としての社会的責任を果してまいります。

 

以 上

 

 [お問合せ先]

塩野義製薬株式会社 広報部

TEL:06-6209-7885

 

参考:

1.      プレスリリース: 2020年3月17日
新型コロナウイルスIgG/IgM抗体検査キット製品の導入に向けたマイクロブラッドサイエンス社との業務提携について

2.      プレスリリース: 2020年4月14日
新型コロナウイルス感染症に関する取り組みについて

3.      プレスリリース: 2020年4月27日
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの開発決定について

4.      プレスリリース: 2020年6月3日
新型コロナウイルスIgG/IgM抗体検出キットの研究用試薬としての新発売について

5.      プレスリリース: 2020年6月3日
新型コロナウイルス感染症に関する取り組みについて(2)

6.      プレスリリース: 2020年6月19日
新型コロナウイルス感染症に関する取り組みについて(3)

7.      プレスリリース: 2020年6月22日
新型コロナウイルスを含む感染症領域のウイルス迅速診断法に関する日本大学、群馬大学、東京医科大学との業務提携について

8.      プレスリリース: 2020年8月7日
新型コロナウイルス感染症に関する取り組みについて(4)

 

新型コロナウイルス感染症に対する当社の取り組みは、当社ホームページでも随時更新しております。また、各機関から発信されている新型コロナウイルス感染症に関する情報も同ページにまとめておりますので、ご参考までにご確認ください(塩野義製薬ウェブサイト)。