AMR
目標と実績
中長期目標
SHIONOGIでは、2035年度までに、SHIONOGIが取り扱うすべての抗菌薬の製造プロセスについて、英国規格協会(BSI:The British Standards Institution)の抗菌薬製造に関する国際認証「BSI Kitemark™ for Minimized Risk of AMR」の取得を目指しています。これは、AMRの発生に配慮し、責任ある抗菌薬製造を行っていることを、客観的な第三者評価により保証し、ステークホルダーの皆さまに明確に示すための取り組みです。
また、抗菌薬の製造過程における環境への影響を低減するために、抗菌薬およびその原薬・中間体を取り扱う自社グループの工場やサプライヤー(表1)に対して監査(AMR監査)を実施し、その結果に基づくフィードバックを通じて、サプライチェーン全体における抗菌薬の適正管理の実現を目指しています。これらの取り組みは、抗菌薬製造に起因する環境影響の低減と、その客観的な検証を両立するためのものです。
AMRに対する取り組み
金ケ崎工場における抗菌薬の排出抑制・管理の取り組みと認証取得
SHIONOGIグループの旗艦工場の一つである金ケ崎工場では、抗菌薬の原薬製造ならびに製剤・包装を行っており、各製造工程において、抗菌活性をもつ物質を環境中に排出しないよう、管理を徹底しています。
抗菌薬を含む廃液や洗浄液については、その性状や含有濃度に応じて、回収後に外部の専門業者へ委託して焼却処理を行うほか、抗菌活性の失活処理を実施しています。失活処理後の排水は、事業所内の排水処理施設を経由して排出しています。
失活処理後に排出する排水については、AMR Industry Alliance (以下、AMRIA)*1 が定める「Antibiotic Manufacturing Standard*2 」(以下、Standard)に基づき、複数の方法により管理しています。具体的には、製造ロットごとの製造量や排水量に基づくマスバランス法による算出と、高速液体クロマトグラフィー法(HPLC)を用いた測定(年1回)を併用し、排出状況を確認しています。
これらの管理のもと、金ケ崎工場で製造している5品目すべての抗菌薬について、排水中の濃度が自然環境に影響を及ぼさない水準である「環境排出基準値*3 」以下であることを継続的に確認しています。
万が一、異常が認められた場合には、排水を緊急避難槽に一時的に貯留することで事業所外への排出を回避します。そのうえで、必要な処理を実施し、濃度が環境排出基準値以下であることを確認したのちに排出します。
また、抗菌薬製造プロセスから発生する固形廃棄物および排水処理施設で発生する汚泥については、回収のうえ外部の専門業者に委託して焼却処分を行っています。これらの対応により、抗菌活性をもつ物質が付着した固形物の、環境中への排出防止についても徹底しています。
これら金ケ崎工場におけるAMR発生リスクの低減の取り組みのうち、多剤耐性グラム陰性菌感染症治療薬「セフィデロコル」の原薬製造および製剤工程は、BSIが開発したAMRのリスク最小化に関する国際認証「BSI Kitemark™ for Minimized Risk of AMR」の審査を受け、2025年10月、日本の医薬品製造施設として初めて本認証を取得しました。
*1 AMR Industry Alliance(外部リンク)
2016年9月に開催されたダボス会議において、製薬企業を中心とする12社のリーディングカンパニーが「AMR Industry Roadmap」に署名しました。署名企業は、自社グループおよび委託先の適切な管理を率先して行うとともに、AMR対策のロードマップを策定し、環境排出の管理手法を抗菌薬製造メーカー全体に広く展開することなどを通じて、AMRの発生抑制を目指しています。
本活動は、その後「AMR Industry Alliance」として発展し、現在では抗菌薬を取り扱う多くの企業が参画する国際的な業界イニシアチブとなっています。
*2 Antibiotic Manufacturing Standard(外部リンク)
2025年5月にStandardが改定され、従来の対象工程であった原薬製造および製剤に加え、新たに一次包装工程が追加されました。これに伴い、2026年度以降のAMR監査計画の策定においては、一次包装工程のみを委託しているサプライヤーも監査対象に含めます。
AMR監査
SHIONOGIにおけるAMR監査は、サプライチェーン全体における排出管理の実効性を確認し、継続的な改善につなげるための重要な仕組みと位置付けています。本監査はAMRIAが定めるStandardに基づいて実施しています。本監査では、マネジメントシステムの有無や、排水・固形廃棄物の管理状況、環境排出基準値の遵守状況などを確認しています。
これにより、グローバル基準に沿った抗菌薬の環境排出抑制ならびに管理体制の適切な運用を担保しています。
AMR監査の結果、サプライヤーに製造を委託している抗菌薬のうち、国内では4社4品目のうち、3社3品目、海外では4社4品目のうち3社3品目において、環境排出基準値の遵守が確認されました。遵守が確認できなかった各1社1品目については、現在、是正措置を実施しています。今後も国内外のサプライヤーに対してAMR監査を継続的に実施し、環境排出基準の遵守状況を確認していきます。
表1:SHIONOGIが扱う抗菌薬原薬の監査対象
抗菌薬の原薬名 |
製造サイト |
製造工程 |
||
|---|---|---|---|---|
原薬 |
製剤 |
一次包装 |
||
フロモキセフ |
SHIONOGI |
● |
● |
● |
A社(日本) |
|
● |
● |
|
セフカペンピボキシル |
SHIONOGI |
● |
● |
● |
ラタモキセフ |
SHIONOGI |
● |
● |
● |
ドリペネム |
SHIONOGI |
● |
● |
● |
B社(日本) |
|
● |
|
|
セフィデロコル |
SHIONOGI |
● |
● |
● |
I社(イタリア) |
● |
|
|
|
スルファメトキサゾール |
C社(日本) |
|
● |
● |
F社(インド) |
● |
|
|
|
G社(インド) |
● |
|
||
メトロニダゾール |
D社(日本) |
|
● |
● |
H社(イタリア) |
● |
|
|
|
E社は現在SHIONOGIと取引がないため削除
表2:サプライヤーの監査結果(2025年度までの実績)
サプライヤー名 |
マネジメント |
排水管理 |
固形廃棄物管理 |
環境排出基準値の |
|---|---|---|---|---|
A社 |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
B社 |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
C社 |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
D社 |
〇 |
〇 |
〇 |
△ |
F社 |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
G社 |
〇 |
△ |
〇 |
△ |
H社 |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
I社 |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
E社は現在SHIONOGIと取引がないため削除
○:「Standard」の基準に適合
△:「Standard」の基準と比べ、一部不適合があり、是正処置対応中
×:「Standard」の基準と比べ、複数の不適合があり、是正処置対応中
AMR Benchmark 2026
これまでに述べた抗菌薬製造における環境排出管理の取り組みは、国際的にも高く評価されています。オランダに拠点を置く非営利団体Access to Medicine Foundationが公表した「2026 Antimicrobial Resistance Benchmark, Access to Medicine Foundation」において、SHIONOGIは「責任ある製造」分野で、研究開発型のグローバル製薬企業の中で最も高い評価を獲得しました。
CPHI Japan 2026への登壇
2026年4月、国際医薬品開発展 CPHI Japan 2026において、抗菌薬製造メーカーやサプライヤーなどの聴講者に向けて、AMRIA のStandardに基づくSHIONOGIの抗菌薬排出抑制・管理の取り組みや、BSI Kitemark™ for Minimized Risk of AMR認証取得の価値について説明しました。