• 気候変動に対する考え方

     2020年10月、政府が2050年にカーボン・ニュートラルを目指すことを宣言し、これを起点に日本においても脱炭素社会に向けた動きが加速しています。企業の経営戦略に気候変動をはじめとする環境要素を織り込み、脱炭素化を目指すことは、企業がSDGsの達成に貢献し、社会とともに成長し続けるために不可欠な課題となっています。SHIONOGIグループ(以下、SHIONOGI)においてもTCFD*1提言を踏まえ、気候変動対策を経営戦略の一環として位置づけ、全社のガバナンス体制を構築し、中長期的な事業環境上のリスク・機会を特定・評価したうえで、リスク低減や事業機会の創出につなげるべく、取り組みを推進しています。

     

    *1 気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures): G20の要請を受け、金融安定理事会(FSB)により、気候関連の情報開示および金融機関の対応をどのように行うかを検討するため設立された組織

気候変動対策の目標

 SHIONOGIの事業における気候変動の影響について、TCFDのフレームワークを参考に詳細な評価を実施するとともに、戦略ならびに具体的な対応策を検討し、気候変動に関するリスク低減を目的とした指標として「温室効果ガス(CO2)の排出の削減」を掲げました。それを受けて中長期的な目標である「SHIONOGIグループEHS*2行動目標」においても目標設定しています。また、日本政府の「2050年カーボン・ニュートラル宣言」および世界的な温室効果ガス(CO2)排出削減への取り組みに対応するため、SHIONOGIとしても2050年のカーボン・ニュートラルを目指して2030年度温室効果ガス排出削減目標としてSBT*3を設定しています。この目標は2021年6月にSBTイニシアチブからの認定を取得しています(詳細はこちらのページをご覧ください)。また、脱炭素社会の実現への社会の関心の高まりを背景に2023年度は中長期の目標を見直し、新たに2035年度目標を設定しました。
*2 EHS:Environment, Health and Safety(環境ならびに安全衛生)
*3 SBT(Science Based Targets):科学的根拠に基づいた排出削減目標
中長期目標
【温室効果ガス(CO2)の排出量の中長期目標】

 SBTイニシアチブの認定を取得した目標

 

気候変動に対する取り組み

新中長期目標の設定

 SHIONOGIでは脱炭素社会の実現への関心の高まりを受け、2050年カーボン・ニュートラルを目指す上でのマイルストンとして、新中長期目標(2035年度目標)を設定しました。この新中長期目標では、IPCC(国連 気候変動に関する政府間パネル)の第6次評価報告書の提言を参考に「2035年度に2019年度比でCO2排出量を60%削減する」という新たな目標を掲げています。IPCCの第6次評価報告書では、「人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない」と報告されており、SHIONOGIも脱炭素社会の実現に向けて、更なるCO2排出量の削減に取り組みを強化していきます。

スコープ1、2への取り組み

 2030年度の目標達成に向けて高効率機器の導入・更新などの各種省エネ・低炭素化施策を推進するとともに、SHIONOGIの工場、研究所などの主要サイトを中心に再生可能エネルギー由来電力を順次導入し、CO2排出削減への取り組みを進めています。2023年度はスコープ1、2合計で2019年度比15%の削減目標であったのに対し、結果は12.4%の削減に留まりました。主要事業所における排出係数(電気)の予期しない悪化が目標未達の主な要因であり、排出係数を乗じる前のSHIONONGI全体のエネルギー使用量としては再生可能エネルギー由来の電力の導入効果もあり、目標を達成する水準で推移していました。

 なお、2023年度の年次目標の達成には至りませんでしたが、当初2025年度に予定していた医薬研究センター(SPRC)への再生可能エネルギー由来電力の導入を2023年度に前倒しで実施したことにより、「SHIONOGIグループEHS行動目標」で設定していた2024年度に10%削減するという中間目標は2023年度に前倒しで達成しております。

 また、再生可能エネルギー由来電力の利用によるスコープ2削減の取り組みについて、2023年度はSHIONOGIの主要サイトへの導入計画に従い、上記の医薬研究センター(SPRC)に加え、新たにCMCイノベーションセンター(CRIC)への導入を実施しました。このことにより、既に再生可能エネルギー由来電力の導入を終えている本社ビルならびに油日研究センターを含め塩野義製薬株式会社の主要サイトへの導入が完了し、SHIONOGI全体の導入率としては40.8%と大幅に向上しています。今後は、SHIONOGIの生産機能を担うシオノギファーマ株式会社の各工場への再生可能エネルギー由来電力の導入を進め、2030年までにすべての主要サイトへの導入を完了させる予定です。

 

 

再生可能エネルギー由来電力の導入計画

導入年度

導入サイト

会社名

予実績

2021年度

本社

塩野義製薬株式会社

完了

2022年度

油日研究センター

塩野義製薬株式会社

完了

2023年度

CMCイノベーションセンター、

医薬研究センター

塩野義製薬株式会社

完了

尼崎事業所

シオノギファーマ株式会社

完了

2024年度

摂津工場

シオノギファーマ株式会社

予定

2025年度

2026年度

徳島工場

シオノギファーマ株式会社

予定

2027年度

金ケ崎工場

シオノギファーマ株式会社

予定

2028年度

横浜研究所、秋田工場

株式会社UMNファーマ

予定

2029年度

伊丹工場

シオノギファーマ株式会社

予定

2030年度

南京工場

南京長澳製薬有限公司

予定

 また、エネルギー効率の改善として、原単位の年1%改善ならびにエネルギー消費効率の高い設備の導入についても目標を設定し、高効率設備の導入によるエネルギー使用量削減のほか、設備運転方法の継続的な見直しなどの取り組みを推進しています。2023年度は2022年度比で総エネルギー使用量、原単位共に減少しましたが、COVID-19関連を含むSTS2030 Revision達成に向けた事業活動の増加に伴い、エネルギー使用量の高止まり傾向が継続したため、年度目標の達成には至りませんでした。
実績
CO2排出量および生産性(売上高/CO2排出量) CO2排出量および生産性(売上高/CO2排出量)
総エネルギーと生産性(売上高/総エネルギー) エネルギー別使用量
電気使用の推移

営業車両

 COVID-19感染拡大、および医薬情報提供活動におけるDX化の推進などにより、リモートによる医薬情報担当者(MR)の活動の割合が増加しています。そのため2023年度も営業車両の燃料使用量はCOVID-19感染拡大前の2019年度よりも減少した状況が続いています。

 なお、MRに貸与する車両のハイブリッド車への転換によるCO2および排気ガスの削減については、2022年度にすべての営業車両に対して完了しております。

営業車両の燃料使用量とCO2排出量

スコープ3への取り組み

 SHIONOGIにおいてスコープ3排出量は温室効果ガス(CO2)の全排出量の約6割を占めており、SBTを達成するためにはサプライヤーと協力しサプライチェーン全体での削減に取り組むことが不可欠です。SHIONOGIではスコープ3排出量のうち、50%以上を占めるカテゴリー1:購入した製品・サービスについて、優先的に中期目標を立てて削減施策の検討と実行を推進しています。
Scope3( サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量)
Scope3( サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量)

Scope3の各カテゴリ排出量は、「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドラインVer2.6(環境省、経済産業省)」を用いて算出しています。また、Scope3 カテゴリー1および2については2022年度より消費税等を考慮した原単位を用いて算出しており、この対応に伴い、2021年度の排出量も消費税を考慮した原単位を用いて再計算しています。

 

  SHIONOGIは、令和3年度に参加した環境省のサプライチェーン全体の温室効果ガス(GHG)排出削減目標の達成に向けた支援事業「サプライチェーンの脱炭素化推進モデル事業」で策定したサプライチェーン全体のCO2排出削減施策に基づき、サプライヤーエンゲージメント推進のためのグループ会社を含めた連携体制の構築と、サプライチェーンエンゲージメントのプロセス*4の実行を推進しています。

 2023年度は、購入金額上位15社のサプライヤーを対象に、SHIONOGIの気候変動に対する方針の理解促進のための説明会、CO2削減の取り組み状況の確認(アンケート)、Scope3排出量算定に関する勉強会開催によるサプライヤーの支援などのサプライヤーエンゲージメント活動を実施しました。今後は、CO2削減においてより重要なサプライヤーを選定し、優先的に削減依頼と支援を実施していきます。

サプライヤーエンゲージメントの実施プロセス
*4 支援事業で作成したサプライヤーエンゲージメントのプロセスについての詳細は、SBT等の達成に向けたGHG排出削減計画策定ガイドブックをご覧ください。(外部リンク)

気候変動の取り組みに対する対外活動

CDP 「気候変動 2023」 2年連続Aリスト企業に選定

 環境情報開示に取り組む国際的な非営利団体CDP*5による「気候変動2023」において、最高評価であるA評価を受けました。

 「水セキュリティ2023」のA評価と併せたダブルA企業として、代表取締役会長兼社長CEO 手代木功がSHIONOGIの取り組みについてCDPアワード・ジャパン2024にてスピーチしました。スピーチでは、SHIONOGIが新しいヘルスケアソリューションを創出し、グローバルに届けるために事業の変革を進めると同時に、地球環境の保全を通じた持続可能な社会を実現し、社会から必要とされる企業として成長していく意思を表明しています。

スピーチ動画(CDPアワード・ジャパン2024)(外部リンク)

スピーチ動画(Aリスト企業 経営者からのメッセージ)(外部リンク)

*5 CDP

CDPは、環境問題に高い関心を持つ世界の機関投資家や主要購買企業の要請に基づき、企業や自治体に、気候変動対策、水資源保護、森林保全などの環境問題対策に関して情報開示を求め、また、それを通じてその対策を促すことを主たる活動としている非営利組織です。CDP は現在、環境問題に関して世界で最も有益な情報を提供する情報開示プラットフォームの1つとなっています。

気候変動イニシアチブ(JCI)メッセージへの賛同

 気候変動イニシアチブ(JCI: Japan Climate Initiative)は、日本において気候変動対策に積極的に取り組む企業や自治体、NGOなどの情報発信や意見交換を強化して脱炭素社会の実現を目指すネットワークです。SHIONOGIは、2021年4月のJCI加盟以降、加盟企業の一員として、JCIから日本政府に発出された5件すべてのJCIメッセージ・提言に賛同を表明しています。

 「JCIメッセージ:1.5度目標と整合する野心的な2035年目標を日本政府に求める」(外部リンク)

 SHIONOGIはSBT目標を含む中長期目標掲げ、CO2排出削減に日々取り組んでいます。2050年カーボン・ニュートラルを目指すSHIONOGIの脱炭素方針と一致しており、JCIメッセージを強く支持しています。

気候変動の影響で拡大が懸念される薬剤耐性(AMR)に対する取り組み

 SHIONOGIのAMR(Antimicrobial Resistance:薬剤耐性)への取り組みが、国立研究開発法人国立環境研究所が管理・運営するWebサイト「気候変動適応情報プラットフォーム」(A-PLAT: Climate Change Adaptation Information Platform)に掲載されました。

 SHIONOGIのAMRへの取り組みに関する詳細はAMRのページをご覧ください。

塩野義製薬株式会社 | 適応ビジネスの事例 | 事業者の適応 | 気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT) (nies.go.jp)(外部リンク)