• 水に対する考え方

     水は大気、土壌、海洋・河川と地球上を循環して相互に作用しながら多様な生態系を育む生命の源であるとともに、人々の生活や経済活動に欠かせない重要な資源でもあります。世界的な人口増加、経済発展、水質汚濁、気候変動による水不足や洪水リスクの高まりなどが社会問題となっており、生態系や人々の生活、経済活動に対する深刻な影響が懸念されています。

     SHIONOGIグループ(以下、SHIONOGI)においても、水は事業遂行のために欠かすことのできない重要な資源であり、適切に保全・管理していく必要があります。SHIONOGIでは、「水」を環境マテリアリティとして特定し、水ストレス*1 ・洪水などの水リスクが事業に与えるインパクトや、事業活動が水環境に与える影響を評価し、それらの適切な管理に向けた取り組みを推進しています。

     

    *1  水需給が逼迫している状態

目標と実績

水資源投入量の削減、水資源投入量と生産性
水資源投入量と水源ごとの投入量内訳、排水量と排出先内訳
*2 従来の「水資源投入量」の表記を、「SHIONOGIグループEHS行動目標」の見直しに合わせて「総取水量」に変更

水に対する取り組み

新中長期目標の設定

 SHIONOGIでは、水に関する中期目標として「2024年度における総取水量を1,340千m3以下とする(2018年度実績程度に抑える)」を設定し、これまで節水に繋がる対策を各事業所で推進してきました。しかしここ数年、研究所や工場の活動量が高まることで必然的に取水量が増加しており、SHIONOGIのビジネスの成長と水に関する目標設定の整合を図る必要が高まっていました。そのため、2023年度に「SHIONOGIグループEHS行動目標」の見直しを実施した際に、ビジネス拡大による取水量の増加に依存しない新たな目標として、「2035年度における水資源還元率を85%以上とする*3」を設定しました。水資源還元率(排水量を取水量で除して100を乗じる)は、各事業所の流域における貴重な水資源をどの程度流域に戻すことができたかを示す指標です。廃棄物として処理する廃水の排出量の削減や、製造過程における水蒸気の利用量低減など、現場での努力による改善が反映されやすい指標を立てることで、水資源の保全に向けた取り組みを強化していきます。

*3 新たな目標に対する実績値は2024年度の集計結果を2025年度より公開する予定です

水使用量の可視化

 SHIONOGIでは、水資源の保護のため、各事業所において従業員への節水意識の啓発や、上水・工業用水などの管理の徹底、生産設備の運転・洗浄に関する計画の見直しによる節水などを推進することで水使用量の抑制に努めてきました。水の使用に関する管理精度のさらなる向上のためには、SHIONOGIの各事業所での水の使用量、その用途、排出量の収支の詳細を可視化することが必要であると考え、2023年度は、水の使用量が大きい国内の全工場において、Water Balance Sheetを作成し、それを基に水の使用量の抑制施策の検討を開始いたしました。今後は、研究系の事業所や海外グループ会社についても同様の対応を展開していく予定です。

排水中の医薬品の環境影響評価(Pharmaceuticals in the Environment)

 OECD (経済協力開発機構)においてPharmaceuticals in the Environment(PiE)の文書*4が発行されるなど、環境中に放出される医薬品への注目が高まっています。SHIONOGIでは、医薬品の製造過程における水の適正な取り扱いと工場排水中への医薬品の混入を適正に管理するため、新製品の製造工程を稼働させる際には、排水中における薬物濃度が自然環境に影響のないレベルに設計されていることを確認しています。

 特にSHIONOGIは、感染症薬を取り扱う企業の責任として、抗菌薬を製造する工場の建屋ごとに排水中の抗菌薬を不活化し、自然環境に影響のないレベルであることを確認した後に工場内の排水処理施設を経由して排出する対応を行っています。こうした対応を徹底することで、工場からの抗菌薬の排出を抑制し、SHIONOGIの製造施設が原因となる薬剤耐性(AMR)の発生防止に努めています。抗菌薬の環境排出管理に関する詳細はAMRのページをご覧ください。

*4 OECD「Pharmaceutical Residues in Freshwater」(外部リンク)

水リスク評価

 上質な水は医薬品の研究開発や工場における生産を行う上で欠かすことのできない資源です。操業を行う工場が立地する地域における水源の枯渇や洪水の発生は事業継続への影響が大きいことから、SHIONOGIでは、製造や研究に関わる各事業所が所在する地域の水ストレス、洪水の発生確率などの水リスクを、WRI(世界資源研究所)の提供する世界的な評価ツールであるAqueduct*5を用いて評価し、影響の低減・未然防止策の検討に用いています。

 これら水リスク評価結果および過去の知見や経験などを踏まえて社内で議論した結果、SHIONOGIの各事業所における物理的な水リスクは低いと判断しています。一方で近年、気候変動の影響などにより、世界の各地で記録的な豪雨や洪水の発生が相次いでおり、今後より多角的に水リスクを評価する必要性があると認識しています。専門家との協議などを通じ、災害の激甚化を考慮した水リスクの評価など、各事業所が所在する流域特有の洪水リスクのさらなる把握と課題抽出を進め、将来の水リスクに備えていきます。

 また、サプライヤーの選定プロセスにおいても、Aqueductを用いた評価を組み込むことで、サプライヤーの潜在的なリスクを把握し、影響の低減を図っています。

*5  WRIが開発・発表した水リスクを評価するツール Aqueduct | World Resources Institute (wri.org) (外部リンク)
WRI Aqueductによる評価(Water Stress)
国名(事業所所在地) 事業所数 リスクレベル/事業所数 将来の水ストレスの変化
高~中 中~低

日本

(岩手、滋賀、大阪、兵庫、徳島、秋田、神奈川)

9 2 7 0

2050年までに低~高レベルに変化

中国

(江蘇省)

1 1 2050年まで大きな変化なし
WRI Aqueductによる評価(Water Depletion)
国名(事業所所在地) 事業所数 リスクレベル/事業所数
高~中 中~低

日本

(岩手、滋賀、大阪、兵庫、徳島、秋田、神奈川)

9 7 2

中国

(江蘇省)

1 1

CDP 「水セキュリティ 2023」 2年連続Aリスト企業に選定

 環境情報開示に取り組む国際的な非営利団体CDP*6による「水セキュリティ2023」において、最高評価であるA評価を2年連続で受けました。

 「気候変動 2023」のA評価と併せたダブルA企業として、代表取締役会長兼社長CEO手代木 功がSHIONOGIの取り組みについてCDPアワード・ジャパン2024にてスピーチしました。

 スピーチでは、SHIONOGIが新しいヘルスケアソリューションを創出し、グローバルに届けるために事業の変革を進めると同時に、地球環境の保全を通じた持続可能な社会を実現し、社会から必要とされる企業として成長していく意思を表明しています。

スピーチ動画(CDPアワード・ジャパン2024)(外部リンク)

スピーチ動画(Aリスト企業  経営者からのメッセージ)(外部リンク)

*6 CDP

CDPは、環境問題に高い関心を持つ世界の機関投資家や主要購買企業の要請に基づき、企業や自治体に、気候変動対策、水資源保護、森林保全などの環境問題対策に関して情報開示を求め、また、それを通じてその対策を促すことを主たる活動としている非営利組織です。CDP は現在、環境問題に関して世界で最も有益な情報を提供する情報開示プラットフォームの1つとなっています。