水
水に対する考え方
水は大気、土壌、海洋・河川と地球上を循環して相互に作用しながら多様な生態系を育む生命の源であるとともに、人々の生活や経済活動に欠かせない重要な資源でもあります。世界的な人口増加、経済発展、気候変動による水不足や水質汚濁、洪水リスクの高まりなどが社会問題となっており、生態系や人々の生活および経済活動に対する深刻な影響が懸念されています。
SHIONOGIグループにおいても、水は事業継続のために欠かすことのできない重要な資源であり、水ストレス＊1 、洪水などの水リスクを環境における重要課題として特定しています。さらに事業に与えるインパクトを評価し、その低減に取り組むとともに、事業活動が環境に与える影響についても適切な管理を推進しています。
目標と実績
水資源投入量
SHIONOGIグループでは、水資源の保護のため各事業所において従業員への節水意識の啓発や上水・工業用水・地下水使用の管理の徹底、生産設備の運転および洗浄の計画見直しによる節水などを推進し、使用量の抑制に努めています。水資源の大部分は行政の水道施設を介して得ており、直接河川や海からの取水はありません。また、リスク評価における水ストレスの高い地域からの取水もありません。
排水はほぼすべて下水道または河川へ放流しており、海洋への排水はありません。製造や研究に関わる各事業所における排水の水質は、事業所内の排水処理施設において化学物質管理を徹底し、法規制値よりも厳しく設定した自主管理値のもと、異常を常時モニタリングしています。
実際に事業所で消費している水の量は投入量の約10％で、事業活動に使用する水のほとんどは、水環境へ循環させています。今後も、各事業所における継続的な水使用量の削減に努め、中期目標では2024年度の投入量を1,340千m3以下（2018年度の投入量程度に抑制）にすることを目指しています。
排水中の医薬品の環境影響評価（Pharmaceuticals in the Environment）
環境中に放出される医薬品についても世界から注目されており、OECD からPiE（Pharmaceuticals in the Environment）の文書＊2が発行されています。SHIONOGIグループでは、医薬品の製造過程の適正な取り扱いに加えて、工場排水中の医薬品も適正に管理するため、新製品の製造工程を稼働させる際には排水中における薬物濃度が自然環境に影響のないレベルに設計されていることを確認しています。また、SHIONOGIグループは抗菌薬を取り扱う企業の責任として、抗菌薬の製造棟ごとに排水中の抗菌薬を不活化して自然環境に影響のないレベルであることを確認した後に工場内の排水処理施設を経由して排出することで、新たな薬剤耐性（AMR）の発生抑制に努めています。
なお、抗菌薬の環境排出管理に関する詳細はAMRのページをご覧ください。
水リスク評価
上質な水は医薬品製造上欠かすことのできない資源です。操業を行う工場の流域における水源の枯渇や洪水の発生は事業継続への影響が大きいことから、SHIONOGIグループの製造や研究に関わる各事業所について、水ストレス、洪水の発生確率増加などの水リスクを把握し、未然防止策を立案するため、世界的な評価ツールであるWRI Aqueduct＊3およびWWF Water Risk Filter＊4を用いて評価しました。
これら評価結果および過去の知見や経験などを踏まえ、社内で議論した結果、SHIONOGIグループでは、現在の水リスクは他の環境リスクと比較して相対的に低いと判断しています。一方、将来の洪水のリスクレベルは高くなっていることから、今後、専門家と協議することを検討しており、各事業所の流域特有の洪水リスクの把握と課題抽出により将来の洪水リスクに備えていきます。
また、サプライヤーの選定においては、WRI Aqueductを用いたリスク評価を組み込むことで、サプライヤーの潜在的なリスクについても把握し、その低減に努めています。
＊3 世界資源研究所（WRI）が開発・発表した水リスクを評価するツール Aqueduct | World Resources Institute (wri.org) (外部リンク）
＊4 世界自然保護基金（WWF）が開発・発表した水リスクを評価するツール WWF Water Risk Filter (外部リンク）
WRI Aqueductによる評価（Water Stress）
| 国名（事業所所在地） | 事業所数 | リスクレベル/事業所数 | 将来の水ストレスの変化 | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 高 | 高～中 | 中 | 中～低 | 低 | |||
日本 （岩手、滋賀、大阪、兵庫、徳島、秋田、神奈川） |
9 | － | 1 | － | 7 | 1 | 2040年までに中～非常に高いレベルに変化 |
中国 （江蘇省） |
1 | － | － | － | － | 1 | 2040年まで大きな変化なし |
WRI Aqueductによる評価（Water Depletion）
| 国名（事業所所在地） | 事業所数 | リスクレベル/事業所数 | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 高 | 高～中 | 中 | 中～低 | 低 | ||
日本 （岩手、滋賀、大阪、兵庫、徳島、秋田、神奈川） |
9 | － | － | － | 6 | 3 |
中国 （江蘇省） |
1 | － | － | － | － | 1 |
WWF-Water Risk Filterによる評価（Baseline Water Scarcity）
| 国名（事業所所在地） | 事業所数 | リスクレベル/事業所数 | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 極高 | 高 | 中 | 低 | 極低 | ||
日本 （岩手、滋賀、大阪、兵庫、徳島、秋田、神奈川） |
9 | － | － | － | 1 | 8 |
中国 （江蘇省） |
1 | － | － | － | － | 1 |
CDP 「水セキュリティ 2022」 Aリスト企業に選定
環境情報開示に取り組む国際的な非営利団体CDPによる「水セキュリティ2022」において、最高評価であるA評価を受け、代表取締役会長兼社長CEO手代木功が「気候変動2022」のA評価と併せたダブルA企業として、SHIONOGIグループの取り組みについてスピーチしました。
スピーチでは、SHIONOGIグループが新しいヘルスケアソリューションを創出し、グローバルに届けるために事業の変革を進めると同時に、地球環境の保全を通じた持続可能な社会を実現し、社会から必要とされる企業として成長していく意思を表明しています。