第3期事業:ガーナ共和国 イースタン州 アッパー・マニャ・クロボ郡
SHIONOGIは公益財団法人ジョイセフとともに、2023年6月から2026年5月まで、ガーナ共和国イースタン州アッパー・マニャ・クロボ郡において、妊産婦および5歳未満児の健康改善を目指すプロジェクトを実施しました。
本プロジェクトでは、保健施設の整備、地域への教育・啓発、地域保健を支える体制の強化を通じて、母子保健サービスの質の向上と、地域が自立的かつ持続的に母子の健康を守るための仕組みづくりに取り組みました。
事業概要
| 事業地 | ガーナ共和国 イースタン州 アッパー・マニャ・クロボ郡(UMK郡) |
|---|---|
| 対象人口 | 72,160人(直接受益者:30,668人 間接受益者:48,867人) ※直接受益者の一部は、間接受益者に含まれる |
| 実施期間 | 2023年6月~2026年5月 |
| 事業費 | 9,900万円 |
| パートナー | 公益財団法人ジョイセフ |
支援地域
西アフリカに位置するガーナは、熱帯性気候で年間を通して高温多湿です。
イースタン州の東部にはヴォルタ湖があり、対岸まで10km以上の距離を2時間かけて移動するケースもあります。
また、伝統的価値観の根強い地域でもあります。
アッパー・マニャ・クロボ郡(UMK郡)の母子保健課題
アッパー・マニャ・クロボ郡では、保健施設まで長距離の移動が必要な地域や、十分な設備を備えた医療施設が限られる地域もあり、妊婦や子どもが必要な保健サービスを受けにくい状況にありました。また、水や衛生環境の課題から、下痢症は子どもの健康を脅かす要因の一つとなっていました。
保健施設
までの距離
約10~20km
民家の一角を間借りして
診療している診療所
66%
保健施設での
分娩率
45.2%
経口補水液(ORS)による
下痢症の治療
48%※
※ガーナ全体の数値
保健指標(参考値)
| 項目 | ガーナ全体※1 | UMK郡※2 |
|---|---|---|
| 産前健診受診率(4回以上) | 85% | 79.9% |
| 専門技能者の介助/保健施設での出産割合 | 79% | 45.2% |
| 完全母乳育児率 | 43% | - |
| 予防接種完遂率 | 67.5% | 85% |
| 1歳未満児の下痢症発生件数(対象5サイト) | - | 1,451件 |
| 経口補水液(ORS)による下痢症の治療率 | 48% |
- |
- ※1UNFPA世界人口白書2020年、UNICEF世界子供白書2021年
- ※2UMK郡保健局統計2022
課題解決に向けた3つの取り組み
本プロジェクトでは施設を整備するだけでなく、地域住民への教育・啓発や保健人材の能力強化、地域と行政による支援体制の構築を組み合わせ、母子保健課題の解決に取り組みました。
① 母子保健サービスの質向上を目指した取り組み
妊産婦や子どもがより安全で質の高い保健サービスを利用できるよう、医療施設を新規建設・整備し、医療資機材や備品を提供しました。また、医療従事者への研修やママパパクラスを実施し、施設と人材の両面から母子保健サービスの充実を図りました。
主な活動
・妊婦待機所および産科棟の建設(アカテン地区)
・診療所および医療従事者住居の建設(スタポン地区)
・基礎的保健医療資機材・備品の提供
・妊婦待機所の運営体制づくり
(ワークショップの開催、妊婦待機所運営ハンドブックの作成)
・医療従事者の能力強化(ママパパクラス研修、接遇改善研修など)
②地域住民の知識向上・行動変容を促進する取り組み
地域住民が、母子保健や子どもの下痢症の予防・対処について正しい知識を得て、日常生活の中で実践できるよう、地域保健ボランティアやOTC薬販売者を育成しました。
地域保健ボランティアは、家庭訪問や地域での啓発活動を通じて、妊娠・出産、産後の健康管理、家族計画、完全母乳哺育、手洗い、下痢症への対処などを伝えました。また、保健サービスが必要な母子を保健施設へ紹介し、地域と保健施設をつなぐ役割も担いました。
主な活動
・地域保健ボランティアおよびOTC薬販売者を対象とした、地域での保健啓発・相談対応に関する研修
・家庭訪問や地域活動による母子保健教育
・コミュニケーション戦略に基づいた教材制作(下痢症予防知識を含む)
・SBCCツールの使い方研修、啓発教育活動の実施
・母子の保健施設へのリファラル
・医療従事者によるママパパクラスの実施
③ 地域主体の持続可能な母子保健支援体制の仕組みづくり
事業終了後も地域で母子保健活動が続くよう、地域保健管理委員会の能力強化、地域に根差した保健教育・リファラル体制の継続、収入創出活動などを支援しました。各亜郡では、地域の代表者が中心となってサステナビリティプランとコミュニケーション・アクションプランを策定しました。地域の暮らしや課題をよく理解する地域リーダーが計画づくりに参画し、定期会議やモニタリングを通じて、実施状況を継続的に確認しました。
主な活動
・地域保健管理委員会(CHMC)の能力強化(サポーティブスーパービジョン研修、収入創出活動研修)
・各亜郡のサステナビリティプランの策定・実施
・モニタリング・評価体制の強化
・行政、医療従事者、地域関係者による最終ワークショップの開催
3年間の活動から生まれた支援地の変化
母子保健サービスを支える環境づくり、地域への教育・啓発、地域主体の仕組みづくりを通じて、母子保健サービスの利用や住民の健康行動、地域の活動体制にさまざまな変化が生まれました。ここでは、3年間の主な変化を指標とともに紹介します。
① 母子の保健サービスへのアクセス向上
保健施設や医療従事者用住居の整備、医療従事者への研修などを通じて、母子保健サービスの質と利用環境の向上に取り組みました。その結果、専門技能者による出産介助や家族計画サービスの利用など、複数の指標で改善が見られました。
※事業対象地域外からの利用者も含まれるため、集計値が100%を超える
② 地域住民の知識向上と行動変容
地域保健ボランティアやOTC薬の売り手による継続的な啓発活動を通じて、母子保健や子どもの下痢症に関する住民の知識が向上しました。さらに、手洗いや完全母乳哺育の実践、必要な母子を保健施設につなぐ行動にも変化が見られました。
③ 地域主体による保健活動体制の構築
地域保健活動と母子保健サービスの実施体制が行政システムに組み込まれ、運営人材の配置や資金確保の仕組み整備を通じて地域主体の保健活動を継続・発展する基盤が構築されました。
Pick UP①
ガーナ初の妊婦待機所と、運営モデルの構築(アカテン地区)
本プロジェクトでは、ガーナで初となる妊婦待機所を設置しました。妊婦待機所は、出産が近い妊婦が医療施設の近くで安心して過ごしながら、出産に備えることができる環境を提供しています。併せて、母子保健に関する学びや相談の場としても活用されています。
さらに、妊婦待機所の運営・管理方法をまとめたハンドブックを作成しました。策定過程には、郡保健局、医療従事者、地域住民が参画し、複数回の協議と改訂を経て完成しました。単に施設を整備するだけでなく、地域の経験とエビデンスを生かした運営モデルを形にしたことは、本プロジェクトの大きな成果です。
支援地からの声
本プロジェクトによって、母子保健サービスを利用する妊婦や家族だけでなく、サービスを提供する医療従事者、地域で活動する地域保健ボランティアや地域リーダーである保健管理委員会メンバーにもさまざまな変化が生まれました。
プロジェクトに関わった方々の声をご紹介します。
アカテン妊婦待機所利用者|ユニスさん
これまでの出産は自宅でしたが、今回は妊婦待機所を利用し、安心して出産を迎えることができました。快適な環境で過ごせただけでなく、出産後も助産師から母乳育児のアドバイスを受けることができ、本当に利用してよかったと思います。
UMK郡保健局長|アブドゥル・アジズ・アブドゥライさん
研修や地域での活動を通じて、医療従事者や地域保健ボランティアの知識と意欲が向上し、母子保健サービスへのアクセス改善につながりました。プロジェクトで整備した施設やツール、地域との連携体制は、今後も郡保健局の取り組みとして継続していきます。
セケスア保健センター 助産師|ヘレン・ジャメシーさん
ママパパクラスなどを通じて、男性が産前健診や出産準備、家族計画に関わるようになりました。家族全体で母子保健を支える意識が広がり、必要な保健サービスの利用促進につながっています。
アセセワ地域保健管理委員会メンバー|ピーター・ダンソさん
ボランティアの育成や保健施設の整備を通じて、地域の母子保健に関する知識が向上し、保健施設を利用しようとする人も増えました。今後も地域と行政が協力しながら、母子保健活動を継続していきたいと考えています。
アニャボニ地域保健ボランティア|テイエ・レベッカ・ドウさん
啓発活動を続けたことで、妊娠が分かると早めに保健施設を受診する妊婦が増えました。母親たちの健康意識も高まり、乳幼児健診の重要性への理解も広がっています。私自身も今後も家庭訪問を続けていきたいと思います。
- ※1Social and Behaviour Change Communication
- ※2Sexual and Reproductive Health and Rights