ガス壊疽(がすえそ)
ガス産生菌が傷口から侵入して感染し、筋肉が壊死に陥り、全身に中毒症を
起こす致死性の感染症です。
筋肉を中心としてメタンや二酸化炭素などのガスが発生することにより、感染が広がります。
糖尿病、アテローム性動脈硬化(血管の病気)、大腸がん、肝硬変を患っている人、免疫力が低下している人などは発症のリスクが高いです。
症状
- 皮膚の下にガスがたまり、傷の周りで強い痛みを伴う赤い腫れが急激にあら
われ、すぐに悪化していきます。 - その後、大きな水ぶくれとなり、茶褐色または血の混じった分泌物が多く
出て、物がくさったときのにおいやドブのようなにおいを伴います。 - 腫れた部分を押すと、雪を踏んだような感覚があり、時にはそのような音が
聞こえることもあります。 - 心拍数の増加、発熱、発汗などの症状を伴います。
- 肌の色が薄くなり、後にくすんできて、濃い赤色や紫色に変化していきます。
- 病気が進行すると、毒素や壊死物質が血中に多く入ることで、貧血、血尿、
せん妄、肝障害を伴う黄疸(皮膚が黄色くなる)などの症状が出て、低血圧を伴うショック、敗血症(全身への感染の広がり)、多臓器不全(腎不全など)になり、昏睡状態に陥り、そして最後には死に至ります。
感染経路
- 土などに存在するガス産生菌が、主に外傷や手術の傷口から皮膚の筋層に
侵入、増殖してガスや毒素を作ります。 - 糖尿病などをきっかけにガス産生菌が筋層に侵入して発症することもあり
ます。
予防
- 汚泥をさわる可能性があるときなどは、けがをしないように十分注意しましょう。
- けがをした場合には、傷を十分に洗いましょう。
- 傷口に赤み、痛み、うみ、腫れなどがあらわれた場合は、早めに申し出ましょう。
治療
- 手術が迅速に行われます。
感染の拡大を抑えるために、腕や脚の切除(切断)などの外科処置が必要に
応じて行われます。 - 抗菌薬は点滴により静脈から投与されます。
- 痛み止めの薬が投与されることもあります。
- 場合によっては、高圧酸素療法を行うこともあります。
病原体
- ガス産生菌
- 原因菌はウエルシュ菌が最も多く、溶血性レンサ球菌、大腸菌、黄色ブドウ
球菌、ビブリオ・バルニフィカスなどもあります。
潜伏期間
早いものでは数時間
- 文献
- 炭山嘉伸・吉田祐一. “ガス壊疽”, 田熊清継. “ガス壊疽”. 六訂版 家庭医学大全科. 法研, 2010,
p2487, 2911, 2912. - National Library of Medicine: MedlinePlus.
- などを参考にして作成