アフリカでは命を落とす妊産婦が日本の77倍との報告があり、「健康に産み・育てる」ことが難しい環境です。“Mother to Mother SHIONOGI Project”は、アフリカの妊産婦と子どもたちの健康を応援するプロジェクトです。
  • WHO「Trends in Maternal Mortality: 1990 to 2013」より算出

ビジョンと事業目標

ビジョン

お母さんと子どもたちの健康管理を自立的かつ持続的に行えるコミュニティの実現

 

プロジェクト目標

妊産婦・授乳婦および5歳未満児の健康を改善する

事業概要

事業地 ケニア共和国 ナロク県オスプコ郡 イララマタク地域
対象人口 14,612人(直接受益者:5,947人 間接受益者:8,665人)
実施期間 2015年10月~2020年9月(5年間)
2020年10月~2021年7月(COVID-19により期間を延長)
事業費 1億615万円
パートナー 特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパン

イララマタク地域の母子保健課題

事業地:
ケニア共和国 ナロク県オスプコ郡 イララマタク地域

対象人口:
合計14,612人
(うち5歳未満児2,440人と出産年齢の女性3,507人を含む)

 

ナロク県オスプコ郡は、国内でも貧困度が非常に高い地域の一つです。雄大なアフリカの自然や野生動物を目にすることができる一方、電気や水道といった社会インフラは整っておらず、人々は厳しい環境で生活をしています。学校や診療所の数はまばらで、通学のために毎日片道10キロを往復する子どもや、基本的な治療を受けるために体調不良の中、診療所まで遠距離を歩く人々の姿は珍しくありません。また、住民の90%以上を遊牧民のマサイ族が占め、伝統的風習の影響が強く残る地域でもあります。

地図
保健指標(参考値)
  日本 ケニア イララマタク地域*5
保健施設での分娩率*1 100% 43% 9.4%
発育阻害率(慢性栄養失調)
ケニア*2、日本*3
6.3% 26% 39.3%
消耗症率(急性栄養失調)
ケニア*2、日本*3
2.3% 4% 10.9%
予防接種完遂率
ケニア*4、日本*1
>90% 79% 73.8%
上記は事業開始前のデータ。出典はそれぞれ以下の通り。
*1 UNICEF 世界子供白書2015
*2 UNICEF data warehouseより、ケニアのデータを選択https://data.unicef.org/dv_index/
*3 WHO Websiteより日本のデータを選択 https://platform.who.int/data/maternal-newborn-child-adolescent-ageing/indicator-explorer-new
*4 Kenya Demographic Health Survey 2014
*5 イララマタク地域の数字はすべて、WVケニアによる内部評価報告書(2014年)
母子保健に関する各種指標はケニア全体の指標を下回っている。

原因:

  • 病院の数、サービスの量・質の不足
  • 地域保健員(CHWs)と病院の協力体制が整っていない
  • CHWsと病院スタッフの能力不足、地域住民の知識不足
  • ジェンダー不平等
体調を崩した子どもを
診療所へと連れていく家族
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乾季には水不足が深刻となり、
水くみの負担が増加
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活動内容

ナロク県オスプコ郡の保健医療施設レベルの強化、母子保健サービスの向上、及び住民への啓発と意識・行動変容を通して、地域の子どもと妊産婦の健康状態の改善を目指します。

保健施設の整備・巡回診療

診療所の建設、巡回診療による遠隔地への保健医療サービスの提供
診療所の建設
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産科棟の建設
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医療従事者のアクセシビリティ改善のため、診療所近辺にスタッフ宿舎を建設
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巡回診療による遠隔地への保健医療サービスの提供
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水供給施設の整備

  • 安全な飲み水の確保が困難
  • 衛生習慣の問題(手洗い、屋外排泄)
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  • 井戸の掘削と給水タンクの建設
  • 給水所、家畜水飲み場
  • 学校での手洗い指導
  • 世帯によるトイレ建設
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コミュニティ保健人材・地域住民への教育

コミュニティと学校において適切な衛生知識と行動が浸透するように、村落保健員やMother to Mother グループ(母親グループ)、学校の保健クラブを通じて啓発を行いました。

また、手洗い、マスクの着用、感染症に対する啓発活動、消毒剤の配布を行いました。

村落保健員に対して、健康指導、衛生教育などを実施
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指導を受けた村落保健員からMother to Motherグループ(母親グループ)へ、水の浄化方法の研修を実施
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コミュニティレベルのアドボカシー活動やMother to Motherグループ(母親グループ)による啓発
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コミュニティに対して衛生施設(トイレ)建設を促すトリガリング研修
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栄養教育セッションで調理した栄養価の高い食事を食べる子どもたち
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小学校の保健クラブ
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活動成果

医療アクセスの向上

保健施設・水衛生環境のインフラ整備や地域保健人材・住民への教育を実施することで、地域住民が医療サービスの重要性を理解し、診療所の来院者数は事業開始後、1.8倍に増加し、保健施設での出産割合は、4%から47%に増加しました。生後12か月から23か月幼児の予防接種完遂率も改善し、より多くの方が医療サービスを受けられるようになりました。

また、水供給施設の整備や住民への衛生教育を通じて、乾季における井戸へのアクセスが改善され、石鹸を使った手洗いや完全母乳哺育の実施割合も増え、水源と周辺の家庭における大腸菌の検出頻度は66%改善されました。

このような包括的な取り組みが、子どもの下痢症有病率、発育障害率、消耗症率の改善に繋がりました。

診療所へのアクセス数の増加
2015年:事業実施前 2021年は10か月間のデータ
グラフ
母子保健サービスの利用者増加
2018年:ベースライン調査 / 2021年:エンドライン調査
グラフ
出典:ワールド・ビジョン事業評価結果

支援地からの声

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「施設で出産した妻は自宅出産に比べて産後の回復が早かったです」
施設分娩の重要性を理解し、妻を積極的に診療所に連れて行くようになりました
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「この子は事業によって建設された診療所の衛生的な環境で産まれ、すぐに予防接種を受けることができました。生後6か月間は母乳育児が望ましいということも教えてもらいました」

Evaline Moloiさん(7人の子どもの母親)

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以前は62㎞離れた病院に薬を受け取りに行っていました。この事業で産科棟や医療器材が整備され、またきれいな水も使えるため母親たちは診療所で出産できるようになりました。

Jenifer Mbung’iさん(この地域の母親)

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「診療所が完成して以来、ナロク県政府は診療所のスタッフを雇用し、医薬品の提供を担ってきた。今後も診療所から保健センターに格上げするように取り組みます。」

ナロク県知事(診療所引き渡し式での発言)

メディアセミナー(2022年3月16日)

第1期事業における包括的な取り組みの成果について、報道関係者向けセミナーを2022年3月16日に開催しました。本活動の成果としてマサイ族の行動や健康状態の変化を検証した長崎大学熱帯医学研究所の疫学調査結果も発表しました。

発表資料や動画で本事業の成果をご覧ください。

発表資料
YouTube動画

活動報告書

関連リンク