• 生物多様性に対する考え方

     SHIONOGIグループ(以下、SHIONOGI)は、「SHIONOGIグループEHSポリシー」および「SHIONOGIグループEHS行動規範」のもと、ビジネスパートナーとも協働しながら、自然資本保全の取り組みを推進しています。医薬品をはじめとしたヘルスケアソリューションを創出し、社会にお届けするための研究、開発、製造、流通、販売など、すべてのバリューチェーンの活動において、豊かな自然や多様な生物からの恩恵を受けていることに感謝するとともに、事業活動が生物多様性に与える負の影響の軽減に努めています。具体的には、環境マテリアリティとして特定しているAMR*1、気候変動、省資源・資源循環、水の4つの項目に配慮し、各項目においてサプライヤーも含めて負の影響の軽減に取り組むことで、中長期的に生物多様性を保全していくことを目指しています。

     

    *1 AMR:Antimicrobial Resistance(薬剤耐性)

生物多様性に対する取り組み

ガバナンス

 SHIONOGIとして生物多様性への取り組みは、気候変動と同様に重要な課題と認識しており、これらの対策を共通のガバナンス体制で推進しています。環境および安全衛生(Environment, Health and Safety、以下「EHS」)に関連する諸活動を統括してマネジメントする統括EHS管理機能を整備し、生物多様性リスクへの具体的な対応策の進捗を管理しています。
 統括EHS管理機能および全社リスクマネジメント体制との関わりについては、TCFD提言に基づく情報開示のページをご覧ください。

イニシアチブへの参画

  SHIONOGIは、「経団連生物多様性宣言・行動指針(改訂版)」に賛同し、「経団連生物多様性宣言イニシアチブ」にて、将来に向けた取り組み方針および具体的取り組み事例を公表しています。

 経団連:経団連生物多様性宣言イニシアチブ  (外部リンク)

 また、2023年9月には、「2030年までに地球上の陸と海の少なくとも30%を保全することを目指した国際的な目標である30by30目標の達成に向けた取り組みを促進する」という発足趣旨に賛同し、有志企業・自治体・団体によるイニシアチブ「生物多様性のための30by30アライアンス」に参画しました。2030年までに生物多様性の損失を食い止め、回復へと転じる「ネイチャーポジティブ」を実現するという国際的なゴールに向け、今後も生物多様性の保全に向けた活動を強化していきます。

 環境省:生物多様性のための30by30アライアンス  (外部リンク)

30by30アライアンス

事業活動と自然との関係性

 生物多様性に関する社会の動きとして、2022年12月の生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)にて「昆明・モントリオール生物多様性枠組」*2が採択され、2023年9月にはTask Force on Nature-Related Financial Disclosures(TNFD)*3フレームワークが公表されました。これらの枠組みにおいて、企業には事業における生物多様性への依存と影響、リスクと機会を特定・評価し、持続可能な消費のために必要な措置を講じること(LEAPアプローチ)が求められています。

 SHIONOGIでは、医薬品事業における直接操業とサプライチェーン上流を対象に、事業活動と自然との接点や、それらの接点を通じて事業活動が自然環境に与える影響とその低減を図るための生物多様性の取り組みを分析・整理しています。これら結果を踏まえ、今後も生物多様性の保全に向けた実効性のある取り組みを強化していきます。

*2 昆明・モントリオール生物多様性枠組:COP10で採択された2020年までの世界目標「愛知生物多様性目標」を引き継いだ2030年までに達成すべき生物多様性に関する世界目標。

*3 TNFD:自然資本への依存度と生態系への影響を評価し、これらの情報を企業や金融機関が投資家や他の利害関係者に提供するための枠組み。

 すべての産業は自然に依存しており、医薬品産業も例外ではありません。SHIONOGIの事業活動を構成するバリューチェーンと自然との関係性について右図に示します。例えば、医薬品の研究・開発・製造を担う研究所や工場では、化学物質の取り扱いや使用済みの廃棄物・排水が発生します。それら化学物質や廃棄物・排水が誤って事業所周辺の環境に漏洩すると、自然や生物多様性に負の影響が及ぶ可能性があります。また、抗菌薬を主力製品として取り扱うSHIONOGIは、抗菌薬のすべてのバリューチェーンの活動において周辺環境にAMRが発生する可能性があります。このように、SHIONOGIの事業活動の多方面で自然との関係性があります。

 また、医薬品の研究・開発・生産活動を中心としたSHIONOGIの事業活動が、大気・淡水・海洋などの自然の各領域に与える影響、およびそれら自然への負の影響を低減するための取り組み・指標を以下の図にまとめています。

事業活動と自然との関係性

SHIONOGIの取り組み

 SHIONOGIは、事業活動に伴う天然資源の消費や大気・水への排出、廃棄物の発生等が地球環境に及ぼす影響を認識しており、環境負荷の低減に努めることは重要な課題と考え、以下の取り組みを行っています。

 

 

Table 1: SHIONOGIグループの生物多様性への取り組み

主な項目

概要

関連URL

法令にもとづく周辺環境への影響の低減

・コンプライアンスの推進

(大気汚染防止法、水質汚濁防止法、下水道法、土壌汚染対策法など)

・活動詳細は、こちらのページをご覧ください

・化学物質の適正管理

・活動詳細は、こちらのページをご覧ください

・遺伝子組換え生物の適正管理

・活動詳細は、こちらのページをご覧ください

2050年カーボンニュートラルを目指した気候変動対策

・温室効果ガス排出削減に向けた取り組みの推進

・再生可能エネルギー由来電力の導入

・活動詳細は、こちらのページをご覧ください

・気候変動に対するSHIONOGIの事業リスク・機会の評価、および情報開示

・活動詳細は、こちらのページをご覧ください

水資源の効率的な利用

・水資源の使用量削減

・活動詳細は、こちらのページをご覧ください

AMRへの取り組み

・抗菌薬の製造工場における排水管理

・活動詳細は、こちらのページをご覧ください

・抗菌薬の適正使用に向けた啓発活動や情報提供

・活動詳細は、こちらのページをご覧ください

省資源・資源循環への取り組み

・廃棄物の発生抑制、再使用、再利用の推進

・活動詳細は、こちらのページをご覧ください

持続可能な調達の推進

・調達ポリシーに基づく、持続可能な調達活動の推進

・活動詳細は、こちらのページをご覧ください

海洋資源の保全活動

・昆布の森再生プロジェクトの推進

・活動詳細は、こちらのページをご覧ください

事業所周辺の自然保護活動、社会貢献

・希少鳥種の保全に向けた取り組み

・油日植物園の取り組み

・事業所における活動

・活動詳細は、こちらのページをご覧ください

遺伝子組換え生物の適正管理

 研究活動および生産活動において使用される遺伝子組換え生物については、「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(カルタヘナ法)」に基づき、適正な管理を行っており、主管する委員会のもとで法令に準じた社内規定を整備しています。また、従業員教育を行い、環境中への拡散や漏洩の未然防止に努めています。

海洋資源の保全活動:昆布の森再生プロジェクト

 一般用医薬品を取り扱うグループ会社シオノギヘルスケアでは、ガゴメ昆布から抽出される成分「フコイダン」を配合した健康食品を製造販売しています。しかし、近年の海藻を餌とするウニやアワビなどの増加による海中の需給バランスの乱れやガゴメ昆布ブームによって引き起こされた乱獲など複合的な理由により北海道函館近海に生息する天然のガゴメ昆布が産地消滅の危機に直面しています。

 シオノギヘルスケアではガゴメ昆布を使用した製品を扱う企業として、天然ガゴメ昆布を森のように生い茂っていた頃の姿に復活させるべく、「昆布の森再生プロジェクト」をスタートさせました。プロジェクトの目的は、ガゴメ昆布の利用を天然から養殖へ切り替え、2024年度末までに天然ガゴメ昆布の使用量をゼロにすることです。経済産業省補助事業の「地域・企業共生型ビジネス導入・創業促進事業」を活用し、函館市や現地の大学、企業と連携して、養殖ガゴメ昆布の品質改善を図るとともに、安定供給体制を整え、普及させることで、天然ガゴメ昆布の保護・再生を進めています。2019年度より、製品原料として養殖ガゴメ昆布の使用を開始し、2023年度には養殖への切り替え率は50%以上に達しています。2024年度も主力製品である「フコイダンPROTECT」シリーズにおいて、養殖への切り替えを完了しています。

 今後は、生物多様性の保全効果に加えて、養殖昆布によるブルーカーボン*4への貢献を目指した取り組みも検討しています。二酸化炭素の吸収源となる養殖昆布を増やすことでカーボンニュートラルな社会の実現にも貢献し、地球環境の保全に向けて多面的に取り組みを進めていきます。

養殖中のガゴメ昆布
養殖中のガゴメ昆布

*4 ブルーカーボン

藻場、浅場等の海洋生態系により、大気中から海中へ取り込まれた炭素のこと。ブルーカーボンの吸収源として、海草藻場、海藻藻場、干潟、マングローブ林などが挙げられ、これらは「ブルーカーボン生態系」と呼ばれています。ブルーカーボン生態系の光合成により吸収された二酸化炭素は有機炭素として生物の体内を経て、海底に長期に渡って貯留されます。

ブルーカーボン

事業所周辺の自然保護活動、社会貢献

希少鳥種の保全に向けた取り組み

 近年、高病原性鳥インフルエンザ(Highly pathogenic avian influenza: HPAI)が猛威を振るい、ニワトリやアヒルなど人間の生活に利用するために飼育している家禽だけでなく野生の鳥類や哺乳類が大量に死亡するという事例が報告されており、絶滅が危惧されている希少な鳥種にとってもHPAIは大きな脅威となっています。

 2023年、SHIONOGIはインフルエンザ治療薬の適正使用により、希少な鳥種をHPAIから守るためのプロジェクトを立ち上げました。北海道大学のOne Health リサーチセンターや猛禽類医学研究所、NPO法人どうぶつたちの病院 沖縄とも連携し、「生物多様性を脅かす感染症に対して、治療薬の適正使用体制を確立すること」を目指し、日々活動を進めています。人々だけでなく動物や生態系の健康、それらに影響を与える環境問題などを含めた地球全体の健康に配慮する「One Health」の考え方のもと、生物多様性の減少に歯止めをかけることに貢献したいと考えています。

環境省釧路湿原野生生物保護センター管理運営業務の一環として、放鳥を実施
環境省釧路湿原野生生物保護センター管理運営業務の一環として、放鳥を実施
提供:NPO法人どうぶつたちの病院 沖縄
提供:NPO法人どうぶつたちの病院 沖縄

油日植物園の取り組み

 植物を基原とする医薬品は数多く存在します。現在でも植物は大事な医薬品研究の試料であり医薬品の原材料となっています。油日植物園は1947年に滋賀県甲賀市にある油日研究センター内に開設された植物園です。当初は、医薬品の基原植物の栽培や天然物からの創薬シードの探索を目的とした植物栽培が行われていましたが、現在は、環境問題への取り組みや地域・社会貢献を行う施設として再整備され、園内では絶滅危惧種・希少種をはじめ1000種を超える植物を維持管理しています。
絶滅危惧種保全への貢献
 油日植物園では、絶滅危惧種や希少植物の保全に取り組んでいます。また、地域で種の保全が危ぶまれる植物の生息域外保全を行い、園内で繁殖させたのち自生地に復帰させる試みも進めています。
絶滅危惧Ⅱ類のムシャリンドウ
絶滅危惧Ⅱ類のムシャリンドウ
準絶滅危惧のガガブタ
準絶滅危惧のガガブタ

カテゴリー別絶滅危惧種保全状況

環境省カテゴリー

(絶滅危惧ⅠA類,絶滅危惧ⅠB類,絶滅危惧Ⅱ類,準絶滅危惧)        

73種

滋賀県カテゴリー

(絶滅危惧種,絶滅危機増大種,希少種,要注目種,分布上重要種,その他重要種)

71種

甲賀市カテゴリー

(絶滅種,絶滅危惧種,絶滅危機増大種,要注目種,地域種)

46種

ステークホルダーへの環境教育

 油日植物園を通じた地域への社会貢献活動として、京都薬科大学の先生と連携し、近隣の小学生を対象に次世代を担う子どもたちの教育支援の取り組みを行っています。また、高校生、大学生、シニア大学に在籍する方やSHIONOGIグループの新入社員などを対象に、植物園見学を実施することで学びの機会として活用しています。

 

活動実績

 

 

2021年度

2022年度

2023年度

植物園見学

回数(回)

4

13

20

延べ参加者(人)

84

153

335

延べ参加従業員(人)

13

64

64

出前授業

回数(回)

4

4

4

延べ参加従業員(人)

12

20

18

近隣学校児童への教育支援
近隣学校児童への教育支援

~油日植物園が「しが生物多様性取組認証」3つ星を取得~

 植物園が取り組んでいる上記の地域・社会貢献活動が、生物多様性の保全や自然資源の持続的な利用に取り組んでいるとして評価され、令和3年度 「しが生物多様性取組認証」において、最上級認定である3つ星を取得しました。

しが生物多様性取組認証マークto

地域の清掃活動

 医薬研究センター、CMCイノベーションセンター、シオノギスマイルハート、シオノギファーマ金ケ崎工場・摂津工場・徳島工場・伊丹工場・尼崎事業所、UMNファーマ秋田工場において、事業所周辺の清掃を実施しています。シオノギファーマ金ケ崎工場においては、冬季に従業員が除雪作業のボランティアに参加しています。この活動は、一人暮らしの高齢者が元気に過ごされているか確認するための見守りの役目も果たしています。

 また、大阪府主催のアドプト・ロード・プログラムや、一般社団法人ソーシャルスポーツイニシアチブ主催のスポGOMIなど様々なプログラムに参加し、地域の環境保全に貢献しています。

 

2021年度

2022年度

2023年度

回数(回)

21

75

94

延べ参加従業員(人)

381

721

882

清掃活動
清掃活動

その他の活動

 グループ会社であるシオノギスマイルハートでは、全国の事業所の緑化のため「グリーンスマイル活動」に取り組んでいます。本活動は全国のSHIONOGIグループの従業員の中から協力者や応援者を募集し、コミュニケーションを取りながら観葉植物の育成を担ってもらう活動であり、事業所の緑化効果に加え、従業員の環境への意識を高めることにも役立っています。また、シオノギスマイルハートは障がい者雇用を行う特例子会社でもあり、本活動を通じてグループ従業員の障がい者雇用への理解にも繋がり、DE&I推進にも役立っています。

グリーンスマイル活動

 さらに、グループ会社であるシオノギファーマおよびシオノギテクノアドバンスリサーチでは、環境保護活動、生物多様性の保持に寄与する取り組みの一つとして、サントリービバレッジソリューション株式会社と協働して全拠点にオリジナルの自動販売機を展開しています。SHIONOGIグループ油日植物園の「絶滅危惧種や薬用の植物などの保全管理」やシオノギヘルスケアの「昆布の森再生プロジェクト」の取り組みを自動販売機にデザインすることにより「見える化」し、日常のふとした瞬間に従業員が環境保全を考えることで意識向上を図っています。また自動販売機の売り上げの一部を関連する外部環境保護団体へ寄付し、社会課題解決への貢献を図っています。

環境保護活動、生物多様性の保持に寄与する取り組み