化学物質管理に対する考え方

 医薬品の研究開発、生産には様々な化学物質を使用しています。その中には人の健康や生態系、地球環境へ影響を与える可能性のある化学物質も含まれています。化学物質に関連する法規制として、PRTR(Pollutant Release and Transfer Register)法をはじめとした様々な法律があり、厳しい管理が求められていますが、化学物質を取り扱う企業の責任として化学物質を適正に管理して大気・排水への排出を抑制することは、最も優先するべき事項であると認識しています。SHIONOGIグループは関連法令の遵守に加え、法規制値より厳格な自主管理値を設定して化学物質の環境排出抑制に取り組んでいます。

PRTR

 化学物質の環境への排出状況を把握・集計して公表するPRTR法に基づき、指定化学物質の届出を行うとともに、揮発性有機化合物(VOC)についても取扱量・排出量・移動量を管理しています。PRTRでは、使用した指定化学物質の大気や河川への排出量、廃棄やリサイクル処理した量などを把握し、下表の項目について行政に届出を行っています。事業所外移動量とは廃棄物となった量を指します。
PRTR法第1種指定化学物質
PRTR法に基づく届出物質(単位:kg)
名称

使用量

排出量

移動量

大気

公共用水域

土壌

事業所外

下水道

N,N-ジメチルアセトアミド

5,646

0

0

0

5,646

0

N,N-ジメチルホルムアミド

8,673

46

0

0

3,586

0

アセトニトリル

336,795

722

0

0

335,255

0

クロロホルム

6,687

134

0

0

6,552

0

ジクロロメタン(別名塩化メチレン)

181,430

110,551

2

0

52,889

0

トリブチルアミン

4,640

0

0

0

0

0

ノルマル-ヘキサン

6,122

0

0

0

5,798

0

ピリジン

19,570

0

0

0

11,362

0

揮発性有機化合物(VOC)
 揮発性有機化合物取扱量は、工場生産量の増加に伴い増加した一方、管理を適切に実施することで、大気中への排出量は2021年度を下回る水準となりました。今後も継続して、環境負荷の低減を図るため、化学物質の取扱量・排出量・移動量を適正に管理し、大気・排水への排出を抑制していきます。

PCB

 PCB(ポリ塩化ビフェニル/Poly Chlorinated Biphenyl)は人工的に作られた、主に油状の化学物質であり、生物の体内に蓄積すると様々な症状を引き起こすことが報告されています。環境中で分解されにくく、脂肪に溶けやすいという性質で、食物連鎖によって生物体内に蓄積されることから、環境中に排出されたPCBによる地球規模での環境汚染が危惧されています。PCBは、過去にコンデンサ、トランス類、蛍光灯安定器などに使用されており、PCBを含有する廃棄物や使用中の機器に関しては厳正な管理が必要です。

 SHIONOGIグループでは、管理者を定めてこれらを適正に管理するとともに、順次、適正処理を進め、2022年度をもって所有する建屋や敷地にあったすべての高濃度PCB含有機器の処分を完了しました。

フロン

 フロン排出抑制法に基づき、冷凍設備、空調設備などの対象設備の把握、簡易・定期点検、記録の作成、漏洩量の算定などを実施しています。2022年度のフロン類算定漏洩量は630トン-CO2でした。またモントリオール議定書のキガリ改正*1を鑑み、更新時のノンフロンや低GWP*2 機器の導入を進めています。

*1 ウィーン条約に基づいた「モントリオール議定書」において、オゾン層を破壊するおそれのある物質(クロロフルオロカーボン(CFC)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC))が規制されています。キガリ改正にて、オゾン層を破壊しないが温室効果の高い代替フロン(ハイドロフルオロカーボン(HFC))について、生産および消費量の削減が定められています。

*2 GWP(Global Warming Potential):地球温暖化係数

化学プロセスにおける環境と安全への配慮

 医薬品や開発候補品の製造法・試験法の開発、設備の設計段階において、化学物質の安全性、反応や混触による危険性などを事前評価しています。また、製造段階における廃棄物の抑制、省エネ等の効率の良い生産工程についても検討しています。

 なお、抗菌薬の環境排出管理に関する詳細はAMRのページをご覧ください。