新薬を、より早く患者さんへ

1つの新薬が世に出るまでには、10〜15年程度の長い歳月と、膨大な研究開発費が費やされます。その長い開発工程では、治験実施計画書(プロトコール)や治験総括報告書(CSR)といった専門文書が数多く作成されます。一つの臨床試験だけでも数百ページの文書が生み出されることもあり、その作成には通常3〜5カ月を要します。品質を担保しながらこれらを作り上げる作業は、文書作成の中心を担うメディカルライターにとって大きな負担であり、開発スピードそのものを左右する重要な課題でした。

SHIONOGIは、この課題に生成AIで挑みました。それが、規制関連文書の作成を支援するメディカルライティング支援AIです。

現場の専門家が、自ら作り込んだAI

このソリューションの最大の特長は、「AIの専門家がツールをつくり、現場に渡した」ものではないという点にあります。実際に規制文書を書いてきた薬事部のメディカルライターがプロジェクトに深く入り込み、自らの専門知識と実務経験をアプリケーションの設計に注ぎ込みました。

・業務を知り尽くした専門家の知見

ICH E3などの規制で定められた文書構成、社内テンプレート、記載のルール。

現場の暗黙知までを反映し、「実際に使える」文書生成を実現。

・データサイエンス部との協業体制

メディカルライターの専門性に、データサイエンティストのデータ活用力とAI設計力を掛け合わせる。業務部門とDX専門部署が二人三脚で開発する、SHIONOGIならではの体制が成果を生みました。

・人のレビューは残すという設計思想

スコープはあくまで「初稿作成の支援」。最終的な品質はメディカルライターが担保する前提で設計することで、規制が求める品質と、効率化を両立しています。

確かな成果 — 作成時間を最大約50%短縮

引用元となるプロトコールや解析帳票をアップロードすると、AIが社内テンプレートと規制要件に沿って全章のドラフトを自動生成。100ページを超える規模のCSRでも、およそ10分でひとまずの初稿が立ち上がります。ユーザーは出力を見ながら対話的に編集し、章ごとに再生成することも可能で、最終的にはMicrosoft Wordファイルとして出力できます。

 

自社で実施したPoC(概念実証)では、確かな効果が確認されました。

 

・治験総括報告書(CSR) — 作成時間を約50%削減

・治験実施計画書(プロトコール) — 作成時間を約20%削減

 

膨大な工数を要していた文書作成が大幅に効率化され、メディカルライターは、より付加価値の高い検討やレビューに時間を注げるようになります。文書作成の迅速化は、新薬をより早く患者さんに届けることへと確かにつながっていきます。

自社にとどまらず、業界全体へ

SHIONOGIは、この成果を自社の中だけにとどめませんでした。医薬品・ヘルスケア業界の課題解決に向けた日立製作所との業務提携のもと、本ソリューションを共同でブラッシュアップ。2026年2月、SHIONOGIが保有するソリューションを日立へライセンス提供する契約を締結し、日立を通じて国内の医薬品・ヘルスケア企業へ広く提供が始まりました。同じ課題に直面する業界の他社にも活用の輪を広げることで、医薬品業界全体の生産性向上と開発期間の短縮に貢献する。

「より早く医薬品を患者さまに届ける」という思いを、SHIONOGIは一社の取り組みを超えて、業界のモデルケースへと育てようとしています。

専門性の高い業務にこそ、腰を据えたAI開発を

汎用的な生成AIアプリで全社の業務を底上げする一方、SHIONOGIは、高度な専門性が求められる領域には、それ単体で腰を据えた本格プロジェクトとして向き合う開発体制を持っています。メディカルライティング支援AIは、その象徴的な取り組みです。

現場の専門家とデータサイエンティストが協業し、規制と品質を守りながら、実務に根ざした成果を生み、さらに業界へと還元していく。SHIONOGIは、生成AIを"業務変革のレバー"として、医薬品開発のあり方そのものを進化させ続けます。