塩野義製薬株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役会長兼社長CEO:手代木 功、以下「塩野義製薬」または「当社」)は、当社が創製したグラム陰性菌感染症治療薬セフィデロコルの新薬承認申請が、オーストラリア当局(TGA:Therapeutic Goods Administration)に受理されたことをお知らせいたします。
このたびの承認申請は、これまでに実施したセフィデロコルの3つのグローバル臨床試験(複雑性尿路感染症患者を対象とした第2相試験「APEKs-cUTI」、カルバペネム耐性グラム陰性菌感染症患者を対象とした第3相試験「CREDIBLE-CR」、院内肺炎患者を対象とした第3相試験「APEKS-NP」)1-3の結果に基づくものです。
セフィデロコルは、多剤耐性菌を含むグラム陰性菌の外膜を効果的に通過して抗菌活性を発揮する薬剤で、日本・欧州・米国・台湾を含め、25の国と地域で販売されており(製品名:日本「フェトロージャ®」、米国・台湾「Fetroja®」、欧州「Fetcroja®」)、実臨床での有効性と安全性の評価を目的にした薬剤耐性菌による重症の患者さまに対する良好なリアルワールドデータもこれまでに複数公表されています4,5。また、各国の医療システムに必要な最低限の医薬品のうち、優先疾患に対する最も効果的で安全かつ費用対効果の高い医薬品として、WHOの必須医薬品リストに掲載されています。
塩野義製薬は、取り組むべきマテリアリティ(重要課題)として「感染症の脅威からの解放」を特定し、感染症のトータルケアの実現に向けた取り組みを進めております。当社は、グローバルの課題である薬剤耐性(AMR:Antimicrobial resistance)の対策の成功に向け、人々の健康を守るために必要な感染症治療薬を、世界中の患者さまのもとにいち早くお届けできるよう、引き続き努力してまいります。
以 上
【セフィデロコルについて】
セフィデロコルは、多剤耐性菌を含むグラム陰性菌の外膜を効果的に通過して抗菌活性を発揮する、新規のシデロフォアセファロスポリン系抗菌薬です。セフィデロコルは、細菌のカルバペネムへの耐性獲得に関連する3つの主な機序(βラクタマーゼによる抗菌薬の不活化、ポーリンチャネルの変異による膜透過性低下、排出ポンプの過剰産生による薬剤の細菌細胞外への排出)による影響を受けにくい特徴を有します。鉄と結合する独自の構造を有することにより、細菌が養分である鉄を取り込むために利用する鉄トランスポーターを介し細菌内に能動的に運ばれることで、細菌の細胞壁合成を阻害します。セフィデロコルは、多くの低中所得国、高中所得国で本新規抗菌薬を必要とする患者へのアクセスを改善するために、The Global Antibiotic Research and Development Partnership(GARDP)およびClinton Health Access Initiative(CHAI)との3者連携契約を通じた準備も進めています6。
【薬剤耐性(AMR)について】
薬剤耐性(AMR:Antimicrobial resistance)は、抗菌薬に対する細菌の耐性獲得により抗菌薬が効きにくくなることです。AMRは「サイレントパンデミック」と呼ばれ、人類が直面する世界的な公衆衛生上の脅威のひとつであり、緊急に対処が必要な世界規模の重要課題です7。2019年には、AMRにより世界中で127万人が死亡したと推定されています8。また、国際的な連携により対策を講じなければ、2050年までに年間1,000万人以上が命を落とす問題に発展し、世界経済に与えるインパクトは累積で100兆米ドルに及ぶとの予測がなされています9。
当社のAMRに対する取り組みついては、こちらをご覧ください。
参考
1. 2017年1月12日プレスリリース:新規注射用シデロフォアセファロスポリン抗菌薬cefiderocolの複雑性尿路感染症における二重盲検比較試験の良好な結果について
2. 2019年10月3日プレスリリース:注射用シデロフォアセファロスポリン抗菌薬セフィデロコルの院内肺炎患者を対象とした第 III 相臨床試験(APEKS-NP)の試験結果について
3. 2019年11月15日プレスリリース:FETROJAの米国における新薬承認について
4. 2024年10月17日 プレスリリース:米国感染症学会週間(IDWeek 2024)における セフィデロコルの良好な臨床効果を示すリアルエビデンスデータの発表について
5. 2024年4月19日 プレスリリース:グラム陰性菌感染症治療薬セフィデロコルの治療が困難とされる細菌感染症に対する高い臨床効果について
7. Antimicrobial resistance (who.int) WHO. Antimicrobial resistance. Who.int. Published October 13, 2020.
8. Antimicrobial Resistance Collaborators. Global burden of bacterial antimicrobial resistance in 2019: a systematic analysis. Lancet 2022; 399: 629–55
9. 160525_Final paper_with cover.pdf (amr-review.org)
O’Neill J. ‘Tackling Drug-Resistant Infections Globally: Final Report and Recommendations’. Review on Antimicrobial Resistance. May 2016.
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