・統計学的に有意なウイルス量の減少を示し、主要評価項目を達成
・最高用量群において、88.94%のウイルス量の減少(P<0.0001)
塩野義製薬株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役会長兼社長CEO:手代木 功、以下「塩野義製薬」)は、UBE株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:泉原 雅人、以下「UBE」)と共同開発を進めている新規respiratory syncytial(RS)ウイルス感染症治療薬S-337395が、第2相臨床試験(ヒトチャレンジ試験)において、主要評価項目を達成しましたので、お知らせいたします。
本試験はRSウイルスを能動的に接種させた健常成人を対象に実施した、無作為化、プラセボ対照二重盲検比較試験です。S-337395を1日1回、5日間経口投与した際の抗ウイルス効果および安全性を評価しました。S-337395投与群はプラセボ投与群に対して、統計学的に有意なウイルス量の減少を示し、主要評価項目を達成しました。S-337395の最高用量群ではウイルス量を88.94%減少させ(P<0.0001)、統計学的に有意な臨床症状スコアの改善を示しました。また、安全性・忍容性は良好でした。
S-337395は、経口の新規RSウイルス感染症治療薬であり、RS ウイルスの複製に必須なLタンパク質の活性を阻害し、ウイルス増殖を抑制することで効果を発揮します1,2。また、本剤は、米国食品医薬品局(FDA)よりファストトラック指定(Fast Track designation)を受領しております3。
RSウイルスは、鼻、喉、肺などの呼吸器に感染するウイルスであり、乳幼児においては細気管支炎や肺炎などの重篤な病気を引き起こすことで知られていますが4、高齢者や基礎疾患を有する方においても、高い入院率や死亡率がみられ、深刻な呼吸器疾患の原因として、近年問題視されています。米国におけるRSウイルス感染症の潜在患者は、乳幼児と高齢者を合わせて、年間300万人以上いると推定5,6されている一方で、RSウイルスに対する有効な抗ウイルス薬は存在せず、アンメット・メディカルニーズが高い疾患の1つです7。
当社は、S-337395の開発を加速することで、1日でも早くRSウイルス感染症に苦しむ患者さまに提供できるよう努めてまいります。
塩野義製薬は、取り組むべきマテリアリティ(重要課題)として「感染症の脅威からの解放」を特定し、感染症のトータルケアの実現に向けた取り組みを進めています。流行の影響を大きく受ける急性呼吸器感染症(インフルエンザ、COVID-19、RSウイルス感染症など)に対しては、治療薬のポートフォリオを拡充することによって、収益の安定化を実現する新たなビジネスモデルの構築に取り組んでまいります。
なお、本件が2025年3月期の連結業績予想に与える影響は軽微です。
以 上
【S-337395について】
S-337395は、UBEとの共同研究にて見出された、経口の新規RSウイルス感染症治療薬です。RSウイルスが保有するLタンパク質のRNA依存性RNAポリメラーゼ活性を阻害し、ウイルスゲノムの転写・複製を阻害することで効果を発揮する新規メカニズムの低分子化合物です。細胞外において、新たなウイルスの細胞感染を防ぐことで、効果を発揮するFタンパク質阻害剤とは異なり、ウイルスが感染した細胞内で、新たなウイルスの増殖を防ぐことで効果を発揮するため、より高い有効性や迅速なウイルス量の低下が期待されます。
現在は、UBEとの共同開発契約2のもと、塩野義製薬がグローバルでの臨床開発を進め、UBEが原薬の開発および製造を担う事で、それぞれの強みを活かして本剤の共同開発を進めています。
【第2相ヒトチャレンジ試験について】
ヒトチャレンジ試験は、健康な被験者を対象として、ウイルス等の病原体をその被験者全員に感染させ、治療薬およびプラセボを投与した後の、ウイルス量の減少を含む病気の発症や、症状の経過を調査する臨床試験です。本試験はS-337395の有効性および安全性の検証を目的として、RSウイルスを能動的に接種させた健常成人(114症例)を対象に実施した、無作為化プラセボ対象二重盲検比較のヒトチャレンジ試験です。参加者は、S-337395もしくはプラセボを投与されました。主要評価項目として、ウイルスの時間曲線下面積(AUC)を測定しました。
【RSウイルス感染症について】
RSウイルスは世界中に存在し、地理的あるいは気候的な偏りはありません。特徴的なことは、いずれの地域においても幼弱な乳幼児でもっとも大きなインパクトがあることと、毎年特に都市部において流行を繰り返すことです。特に、米国ではRSウイルス感染症により、乳幼児において約210万件の外来受診、58,000~80,000件の入院があり、成人に関しては約63万~230万件の潜在患者がいて、70555~168,130件の入院、そして3,813~15,739件の死亡者がいると報告されています5,6。
【UBE株式会社について】
スペシャリティ化学を志向するUBEにおいて、医薬事業はライフサイエンス分野の中核事業となるべく、創薬研究事業では従来の低分子医薬品の他、ADC(抗体薬物複合体)などの高付加価値創薬に挑戦しております。また、CDMO事業では既存の低分子医薬品分野を拡充すると共に、新規モダリティの製造技術を駆使した核酸医薬品等を通じて、人々の生命・健康を守る手段を提供してまいります。https://www.ube.com
[参考]
新規抗 RS ウイルス薬創製を目指した共同研究契約締結について
塩野義製薬とUBEによる新規抗RSウイルス薬候補S-337395に関する 共同開発契約締結について
新規抗 RS ウイルス薬候補 S-337395 について米国 FDA よりファストトラック指定を受領
4. U.S. Centers for Disease Control and Prevention. Respiratory Syncytial Virus Infection (RSV). Accessed January 23, 2025. Available at https://www.cdc.gov/rsv/causes/index.html.
5. Drysdale SB, Broadbent L. Respiratory syncytial virus (RSV): over 60 years of research but still so many unanswered questions. Ther Adv Infect Dis. 2023;10:20499361231159991. doi:10.1177/20499361231159991.
6. U.S. Centers for Disease Control and Prevention. Surveillance of RSV. Accessed January 23, 2025. Available at https://www.cdc.gov/rsv/php/surveillance/index.html.
7. Miloje Savic et al. Respiratory syncytial virus disease burden in adults aged 60 years and older in high‐income countries: A systematic literature review and meta‐analysis. Influenza Other Respir Viruses. 2022 Nov 11;17(1):e13031. doi: 10.1111/irv.13031
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