2025/12/22

田辺ファーマからの筋萎縮性側索硬化症等治療薬エダラボン事業の買収に関するお知らせ

  • 塩野義製薬は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)等の治療薬であるエダラボン事業を買収
  • 日米を含むグローバルでの知的財産等の全権利を獲得し、QOL疾患のポートフォリオを拡充
  • 当該事業は年間売上1,000億円以上であり、2026年度以降の売上収益および利益へ継続的に貢献する見通し
  • 米国においては、本取引を目的として新設される米国事業会社をShionogi Inc.が完全子会社化し、希少疾患領域に精通した事業基盤を獲得

塩野義製薬株式会社(本社:大阪市北区、代表取締役会長兼社長CEO:手代木 功、以下「塩野義製薬」または「当社」)は、2025年12月22日に開催された取締役会において、田辺ファーマ株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役CEO:原田 明久、以下「田辺ファーマ」)が開発・販売する筋萎縮性側索硬化症(ALS)等治療薬エダラボン(日本での製品名「ラジカット」、米国での製品名「Radicava」)の日米を含むグローバルでの全権利の獲得に関する契約締結について、決議したことをお知らせします。これに伴い、米国についてはタナベファーマアメリカがRadicavaに関する事業会社*(以下「Radicava事業会社」)を新設し、当社の米国グループ会社Shionogi Inc.(本社:ニュー・ジャージー州)が完全子会社化いたします。日本を含む米国以外の地域については、流通業務の移管および製造販売承認の承継時期について今後検討し決定してまいります。

*名称未定。2025年度中に設立予定

 

当社代表取締役会長兼社長CEOの手代木 功は、今回の事業買収について、次のように述べています。

「エダラボンは、ALSという深刻な疾患に苦しむ患者さまのアンメットニーズに応える革新的治療薬です。こうした高い価値のある治療選択肢を多くの患者さまにお届けできることを、大変光栄に思います。同時に、希少疾患領域で、年間1,000億円以上の売上を誇る製品を社会に提供し続けるという使命は、当社の果たすべき大きな責任であることを実感しています。現在開発を進めている希少疾患に対する複数の開発品についても、一日でも早く、必要とされる患者さまにお届けできるように、グループ一丸となって取り組んでまいります。」

 

1.       本事業買収の目的と背景

 塩野義製薬は、顧客・社会に新たな価値を創出するために取り組むべきマテリアリティ(重要課題)の一つとして、「健やかで豊かな人生への貢献」を特定しています。誰もが自分らしく生き生きとした生活を送ることができる社会の実現に向け、将来のアンメットニーズが大きいと想定される疾患群を「社会的影響度の高いQOL疾患(睡眠障害、難聴、希少疾患等)」として、研究開発の注力領域に定め、ソリューションの提供に向けた取り組みを進めています。

 このたびの事業買収により、当社はALSという希少疾患に苦しむ患者さまのアンメットニーズに応える治療薬であるエダラボンのグローバルでの知的財産、販売権等を含む全権利を取得します。さらに、希少疾患領域に精通した人材と事業運営に関するノウハウを取り込むことで、米国における強力な事業基盤を獲得します。

当社は、社会的影響度の高いQOL疾患の中で、脆弱X症候群やJordan症候群、ポンぺ病といった希少疾患に対する治療薬の開発を推進しています。さらに、当社が2025年12月1日に継承した事業1においても、アンメットニーズが高い希少疾患に対する開発品を複数有しています。

当社は今回の事業買収により、希少疾患に対する取り組みをさらに加速させます。さらに、現在開発中の希少疾患治療に対する複数の開発品についても、必要とされる患者さまへ速やかに提供できる体制の構築を進めてまいります。

 

<本事業買収によって獲得・強化される主な資産・機能>

エダラボンのグローバルでの全権利の獲得

米国市場における強固な販売基盤の獲得

希少疾患領域に精通した人材と事業運営に関するノウハウの獲得

 

当社は本契約に基づき、対価として、手続き完了時に総額2,500百万ドルを米国グループ会社Shionogi Inc.を通じて田辺ファーマに支払います。加えて、一定の条件を満たした場合には、将来の売上に応じたロイヤリティーを支払います。

今後、米国においては、Radicava事業会社がShionogi Inc.の完全子会社として、速やかに事業を開始する予定です。

 

 

2.       Radicava事業会社の概要(予定)

①    名称

未定

②    本社所在地

未定

③    代表者の役職・氏名

未定

④    事業内容

Radicavaの販売等

⑤    資本金

未定

⑥    設立年

2025年度中

⑦    大株主および持ち株比率

設立時:タナベファーマアメリカが株式の100%を保有
手続き完了後:タナベファーマアメリカからShionogi Inc.へ株式の100%を譲渡

⑧    従業員数

未定

⑨    当社との関係

手続き完了後、Shionogi Inc.の完全子会社

⑩    当該会社の連結経営成績および連結財政状態

当該会社は2026年3月期中の設立を予定しており、
現時点では連結業績および財政状態に関する情報はございません。

<参考>

田辺ファーマによる最近3年間の

米国におけるRadicavaの売上収益

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

 

43,330百万円

 

74,713百万円

 

 

94,491百万円

 

 

①    異動前の所有株式数

0株(議決権所有割合:0.0%)

②    -1取得株式数

新会社の発行済株式のすべて

③    ‐2取得資産

エダラボン関連の知的財産権

取得価額

2,500百万ドル(日本円換算金額:394,175百万円*)

*1米ドル=157.67 円で換算

④    異動後の所有株式数

発行済株式のすべて(議決権所有割合:100%)

3.       取得資産および取得株式数、取得価額及び取得前後の所有株式の状況

 

4.       事業譲受の相手先の概要

①    名称

田辺ファーマ株式会社

②    本社所在地

大阪市中央区道修町3-2-10

③    代表者の役職・氏名

代表取締役 執行役員CEO 原田明久

④    事業内容

医療用医薬品を中心とする医薬品の製造、販売

⑤    資本金

500億円

⑥    設立年月日

1933年12月13日

⑦    連結純資産

7,909億円

⑧    連結総資産

9,680億円

⑨    大株主および持株比率

株式会社 BCJ-94 100%

⑩    当社との関係

資本関係:該当事項はありません。

人的関係:該当事項はありません。

取引関係:該当事項はありません。

関連当事者への該当状況:該当事項はありません。

 

5.       取締役会決議日

 2025年12月22日

 

6.       契約締結日

 2025年12月22日

 

7.       Radicava事業会社の完全子会社化の日程

2026年4月1日以降(予定)

 

8.       今後の見通し

Radicava事業会社の完全子会社化は2026年4月1日以降を予定しているため、2026年3月期の連結業績に与える影響は軽微です。2027年3月期以降の連結業績への影響については現在精査中ですが、2027年3月期より売上収益および利益に貢献する見込みです。

 

【エダラボンについて】

 エダラボンは、ALSの進行に関与する酸化ストレスを抑制することで、運動ニューロンの障害進行を遅延させる作用を有するフリーラジカル消去薬です2。ALSは進行性の神経疾患であり、根本的な治療法が存在しないアンメットメディカルニーズの高い疾患です。エダラボンは疾患進行を抑制する数少ない治療選択肢の一つとして期待されており、米国では注射剤に加え、服薬負担を軽減する経口懸濁剤も上市され、ALS患者さまのQOL向上に寄与しています。米国では、エダラボンの注射剤および経口懸濁剤が、合計約2万人のALS患者さまの治療に使用されています。

 

エダラボンの経口懸濁剤は、2022年に米国FDAからALS治療薬として承認を取得しました。2024年には、静注投与の負担を回避する経口懸濁剤という新たな投与経路を提供し、患者ケアに大きく貢献したことから、FDAより希少疾病用医薬品として排他的承認期間が付与されました。

エダラボンは、田辺ファーマがALS治療薬として創製・開発し、米国ではタナベファーマアメリカが販売しました。田辺ファーマは2001年から13年間にわたる臨床試験を通じてALS研究を進め、2015年に日本および韓国でRADICUT®として承認を取得しました。その後、カナダ(2018年10月)、スイス(2019年1月)、インドネシア(2020年7月)、タイ(2021年4月)、マレーシア(2021年12月)、オーストラリア(2023年2月)、ブラジル(2024年2月)で承認を取得しました。RADICAVA® Oral Suspensionはカナダ(2022年11月)、スイス(2023年5月)で承認され、日本ではRADICUT® Oral Suspension 2.1%が2022年12月に承認されました。

 

【ALSについて】

 ALS:Amyotrophic Lateral Sclerosis(筋萎縮性側索硬化症)は、運動ニューロンが選択的に変性・脱落することで筋力低下や呼吸障害を引き起こす進行性の神経疾患です。発症後は徐々に筋萎縮が進行し、最終的には呼吸筋麻痺により生命予後に重大な影響を及ぼします。世界的に年間発症率は人口10万人あたり約1~2人とされる希少疾患であり、根本的な治療法は存在しません3。病態には酸化ストレスやグルタミン酸による興奮毒性等の複数の要因が関与しており、疾患進行を抑制する治療選択肢は限られています。このため、ALSはアンメットメディカルニーズの高い疾患として、革新的な治療薬の提供が強く求められています。

 

【アドバイザーについて】

本件に関する塩野義製薬の法的アドバイザーはCleary Gottlieb Steen & Hamilton LLPです。田辺ファーマのメイン財務アドバイザーはCenterview Partners LLC、法的アドバイザーはRopes & Gray LLCです。加えて、ゴールドマンサックスも田辺ファーマに財務アドバイスを提供しました。また、バンク・オブ・アメリカはベインキャピタルの財務アドバイザーを務めました。

 

参考

1.       プレスリリース:2025年12月1日
会社分割(簡易吸収分割)による日本たばこ産業株式会社の医薬事業の承継完了に関するお知らせ

2.       Cedarbaum JM, et al. Edaravone efficacy and safety in ALS. N Engl J Med. 2017;377:1694–1702. DOI: 10.1056/NEJMoa1709426

3.       Hardiman O, et al. Amyotrophic lateral sclerosis. Lancet. 2017;390(10107):2084–2098. DOI: 10.1016/S0140-6736(17)31287-431287-4

 

以 上

 

[お問合せ先]

塩野義製薬ウェブサイト お問い合わせフォーム:

https://www.shionogi.com/jp/ja/quest.html#3.