2025/12/23

有毛細胞再生による聴覚機能改善の実証と革新的な医薬品の創出を目的とした Salubritas社との共同研究開発契約および出資契約の締結について

 塩野義製薬株式会社(本社:大阪市北区、代表取締役会長兼社長 CEO:手代木 功、「塩野義製薬」または「当社」)は、Salubritas Therapeutics(本社:米国 マサチューセッツ州、CEO:En Li、以下「Salubritas社」)との間で、有毛細胞再生による聴覚機能改善の実証と革新的な医薬品の創出を目的とした共同研究開発および出資に関する契約を締結しましたので、お知らせいたします。

 

 本契約に基づき、両社は有毛細胞の再生による難聴の予防と治療を目的とした共同研究開発を推進します。有毛細胞の再生は、感音難聴の根本治療に有効な介入法の1つと考えられていますが、臨床試験における成功例はなく、創薬の難易度は極めて高いとされています。この課題を解決するため、当社は有毛細胞の再生に関する最先端の研究知見や技術力を有するSalubritas社との協業により、聴覚機能改善をもたらす有毛細胞を再生する治療薬の創出を目指します。

 

 難聴は、世界で推定約15億人に影響を及ぼす重大な健康問題です。患者数は増加を続けており、2050年までに世界人口の4分の1が、何らかの聴覚障害を経験すると予測されています1,2。中でも、有毛細胞の損傷・脱落は難聴の程度と相関し、中等度から重度の難聴の主要な原因の1つです3。しかし現時点では、補聴器や人工内耳以外に有効な治療法がなく、新たな選択肢として有毛細胞再生による難聴の改善が期待されています。

 

 塩野義製薬は、取り組むべき重要課題(マテリアリティ)として「健やかで豊かな人生への貢献」を特定し、誰もがより長く、そして自分らしく、いきいきとした生活を送ることができる社会の実現に向け、取り組みを進めています。難聴を含む、アンメットメディカルニーズの高い疾患に対する画期的な治療薬を、患者さまにいち早くお届けできるよう、引き続き努力してまいります。

 

以 上

 

 

 

 

【Salubritas社(サルブリタス社)について】

 Salubritas社は、有毛細胞再生による難聴治療の実現を目指し、2021年に設立されたバイオテクノロジー企業です。Salubritas社の共同創業者であるChen教授のグループは、聴覚機能改善をもたらす機能的な有毛細胞再生をもたらす治療薬創製を目的として、世界で初めて、成体動物において多能性幹細胞を介さず体細胞から有毛細胞を分化・誘導することに成功しました4。また、耳科学・内耳疾患研究において世界をリードする、米国ハーバード大学医学部の教育病院であるMEE(Massachusetts Eye and Ear)とのネットワークも有し、難聴に関する世界最高水準の研究者を擁しています。

 

【難聴について】

 難聴は、世界で推定約15億人に影響を及ぼす重大な健康問題です。患者数は増加を続けており、その要因として、世界人口の増加と高齢化が挙げられます。進行が緩やかなため自覚しにくく、診断率が低いとされています。発症により他者とのコミュニケーションをはじめ、さまざまな社会生活に支障をきたし、認知症などの中枢神経疾患のリスク要因にもなることが知られています5

 

 

参考:

1.     WORLD REPORT ON HEARING, WHO, 2021.

2.     GBD 2019 Hearing Loss Collaborators. Lancet. 2021; 397: 996-1009.

3.     Wu, Pei-zhe, et al. Journal of Neuroscience. 2020; 40: 6357-6366.

4.     Quan Yi-Zhou, et al. Proc Natl Acad Sci U.S.A. 2023; 120: e2215253120.

5.     Livingston Gill, et al. Lancet. 2024; 404: 572-628.

 

 

[お問合せ先]

塩野義製薬ウェブサイト お問い合わせフォーム:

https://www.shionogi.com/jp/ja/quest.html#3.