未来の医療を、ともに切り拓く ~免疫研究の先に描く予防医療のかたち

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入社1年目から新型コロナ治療薬の研究に携わり、いまでは海外ベンチャーとの共同研究にも挑戦する吉川ありすさん。若手でも挑戦できる環境と、身近なロールモデルが成長を支えています。未来の医療を変える予防医療研究への思いを、あなたも一緒に感じてみませんか。

高校時代に知った、予防医療の大切さ

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― 吉川さんがヘルスケア業界に興味を持ったきっかけは?

 

吉川ありすさん(以下、吉川):高校時代に「早期発見や予防の大切さ」を強く意識しました。というのも、子宮頸(けい)がんワクチンの接種タイミングで、社会では予防医療の重要性が語られていた時代だったからです。「検査の力で社会の健康を支えたい」と思い、大学では臨床検査技術科学を選びました。その中で出会ったのが「ガンマ・デルタT細胞」という免疫細胞。感染や炎症に応じて自在に振る舞うユニークさに惹かれ、免疫の奥深さにのめり込むようになりました。

 

臨床検査技師の国家資格も取得されたのに、なぜ研究職へ?

 

診断や検査も社会に不可欠ですが、私は「アイデアを形にして薬として世に出したい」と思いました。そう思っていた時に見つけた塩野義製薬は自社創製品の割合が高い。つまり有機合成のハイレベルな知識と技術をもつ「メディシナルケミスト」が、アイデアを具現化してくれるのです。世の中に薬を送り出す企業力に魅力を感じました。
就職活動はちょうどコロナ禍の真っただ中。それに立ち向かい治療薬を開発する姿勢に「世界規模で貢献できる会社だ」と共感したことも入社の決め手でした。

入社1年目から新薬開発の最前線へ

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― 入社して最初に担当した仕事は?

 

 吉川:新型コロナ治療薬「エンシトレルビル」の研究です。非臨床薬理データの取得や臨床データの盲検化を担当し、学生時代とは比較にならない研究量やレベルの高さに驚きましたが、大量の実験を行う中で基本技術を短期間で身につけることができました。

 

通常、新薬の開発には10〜20年かかりますが、エンシトレルビルは2年5カ月で承認に至りました。創薬成功率は約3万分の1といわれる中、携わった薬が異例のスピードで世の中に届いたときの達成感は言い表せません。

 

―入社当初から即戦力で新薬プロジェクトに参画!やりがいのある反面、不安はありませんでしたか?

 

 吉川:もちろん不安もありましたが、塩野義製薬にはトレーナー制度があります。1年目は先輩トレーナーがつき、困ったときはいつでも相談できるので安心して取り組めました。サポートを受けながらも自身の判断で進められる自由度があり、そのバランスが大きな成長につながったと思います。

 

― 現在はどのような研究を担当していますか?

 吉川:次世代コロナ治療薬候補(S-892216)です。経口剤と長期間持続型注射剤の2種類の製剤があり、とくに注射剤は免疫状態が低下しているハイリスク患者さんを対象とした曝露前予防薬として開発が進んでいます。

 

その他にも、新規抗RSウイルス薬候補(S-337395)の非臨床研究や、日本で患者数が多い非結核性抗酸菌症(NTM症)治療薬の研究に取り組んでいる最中です。大学時代の免疫学の知識を活かし、菌を宿主(ヒト)から排除するだけでなく、感染によって乱れた免疫機能を回復させ、患者さん自身が再び病気に立ち向かえる力を取り戻すアプローチを目指しています。こうした研究は、従来の抗菌治療を補完し、新しい治療法の可能性を広げるものです。

安心して挑戦できる、働きやすい環境

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― 吉川さんが感じる、研究のやりがいとは?

 

 吉川:もちろん狙い通りの結果が出たときは嬉しいですが、予想外の結果から新しいヒントを得られる瞬間にもワクワクします。NTM症の宿主研究はうまくいかないことも多いのですが、他部署のNTM症研究経験者に相談し、ヒントを得ながら少しずつ進めています。部署を越えて多様な研究者と学び合える社風も、塩野義製薬の魅力です。

 

― さらに、グローバルな業務も担当されているとか。

 吉川:はい。海外のヘルスケアベンチャーと共同で、あるウイルス感染症に対する治療戦略を検討しています。これは、会社の自己投資支援制度*を利用して英語を学んでいたことがきっかけで、上司から声をかけてもらいプロジェクトに参画しました。

今は、主担当として、窓口対応やディスカッションを任されています。最先端の技術や画期的なモダリティ**にも触れる機会が多く、とても刺激を受けています。

 

*自己投資支援制度:年間30万円までを自己研鑽(けんさん)に使える制度、自身のキャリア実現のためであれば、業務と関連のない学会参加などにも利用可能。

**モダリティ(modality): 医薬品開発における治療手段の種類を指す表現。従来の低分子化合物(一般的な経口薬)だけでなく、抗体医薬、核酸医薬、細胞治療、遺伝子治療、ワクチンなど、異なる作用機序や投与形態を持つ技術・アプローチを包括的に示す。

未来を変える挑戦を、あなたとともに

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―入社してわずか5年で多くの活躍をされた吉川さん、これから挑戦してみたいことは?

 

 吉川:高齢化が進む中、「細胞の老化を緩やかにする薬」を開発して、病気に立ち向かう力を整える研究に挑みたいです。将来的には、プロジェクトをまとめるマネジャー職を目指したいと考えるようになりました。塩野義製薬には子育て中のマネジャーも多く、等身大のロールモデルに出会えたからそこ見えてきたキャリアプランです。

 

― 最後に、研究職を目指す学生の皆さんへメッセージを。

 

研究が好きで、社会に役立つ医薬品を世に送り出したいと願う皆さんへ。塩野義製薬には若手でも挑戦できる機会が豊富にあり、皆さんが学んできた知識を存分に活かしながら、大きく成長できる環境が整っています。

 

就職活動では出身学部よりも、研究を進める力や研究内容とのマッチングが重要だと感じています。私は薬学部出身ではありませんが、免疫細胞の賦活化という研究テーマと、早期発見による社会への貢献というビジョンで採用していただき、今ではプロジェクトを任せられる立場になりました。

自律的に考え、前向きで粘り強く、オープンなコミュニケーションを大切にできる皆さんと出会えることを楽しみにしています。

休日は大学時代の友人とテニスをしたり、京都の街歩きをしたりしています。
吉川さん