「ドハマったらおもろいやん」─スタートアップと共に描く2040年の未来

CVCチーム
2025年4月、塩野義製薬の2040年の未来を見据える新たなチーム、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)グループが本格始動しました。メンバーは、ビジネスの視点で全体を率いる楠本慶介さん、グローバルな事業立ち上げの豊富な経験を持つ蒋莅(じゃん・り)さん、そして最先端サイエンスの目利き役である松村憲佑さん。CVCグループが目指すのは、単なる投資活動ではなく、未来のパートナーと対等に向き合い、価値を創造することです。新しい挑戦と、徹底した「スタートアップファースト」について、想いを語ってもらいました。

未来を創るための、新しい挑戦。塩野義製薬がCVCを立ち上げた理由

――CVCグループが本格的に始動した背景を聞かせてください。
楠本さん

楠本:塩野義製薬には「SHIONOGI Transformation Strategy2030(STS2030)」という2030年を見据えた成長戦略があります。会社としてその目標達成が重要ですが、CVCではさらにその先、2040年を見据え「新たな可能性の芽を育てていきたい」という想いがあります。未来社会をより豊かにするためには、社内の力だけでなく、外部の革新的な技術やアイデアを持つ未来のパートナーとなり得る方々と、より深く長期的な関係を築いていくことが不可欠だと考えたのが出発点です。

 

――これまでも他社と協業はしてきたかと思いますが、CVCという形にこだわったのはなぜでしょう。

 

楠本:協業も非常に重要ですが、それに加えて、出資を通じてより深く関わることで、スタートアップと「対等な関係」における「運命共同体」のような存在になりたいという想いからです。短期的な目標だけでなく、壮大なビジョンの実現まで、一緒に汗を流しながら伴走していく。それが我々の目指す姿であり、CVCにこだわった理由です。

 

松村:スピード感も大きなテーマです。特にコロナ禍を経て、世の中が必要とするものをいかに速く届けるか、その重要性を再認識しました。我々だけでは生み出せないスピードと革新性を、スタートアップと手を取り合うことで実現できる。そんな未来への期待が、このCVCの原動力になっています。

心を動かす「人」と「技術」。未来を共にしたいパートナー像

――皆さんはそれぞれ、ビジネス、グローバル、サイエンスのスペシャリストです。未来を共にするパートナーとして、スタートアップのどのような点に魅力を感じますか?

 

楠本:私が何よりも心を動かされるのは、経営者の方の「これをどうしてもやり遂げたい」という熱い想いです。スタートアップの旅路は、本当に困難の連続です。資金、技術、人材、あらゆる壁が次々と現れます。最後に支えになるのは、経営者の折れない心、事業への執念のようなものだと思うんです。その覚悟に触れると、我々もまた心を動かされますし、ぜひ仲間として一緒に夢を追いかけたい、と強く感じます。その共鳴こそが、すべての始まりですね。

蒋さん

蒋:私は海外で数多くの組織の立ち上げを見てきた経験から、組織は最後は「人」の力で動くことを痛感しています。特にコンパクトな組織では、経営者の方を中心にチームが同じ方向を向いていることが、何よりの推進力になります。ビジョンを支えるコアメンバーが揃っている、チームとしての一体感がある、そうしたチームと出会うと、一緒に未来をつくりたいという気持ちが自然と湧いてきます。

 

松村:私はサイエンティストのバックグランドを持っていますので、「これが実現したら世界はどう変わるんだろう」とか、「100年先も残る技術だろうか」とか、技術の「革新性」に心がワクワクします。技術の本質を見極めたいからこそ、その核心について深く対話させていただきたい。技術への自信と愛情が伝わってくると、こちらも嬉しくなります。

 

――CVCとしての支援において、大切にされているスタンスはありますか?

 

楠本:CVCとして我々が最も大切にしているのは「スタートアップファースト」の考え方です。主役はあくまでスタートアップ。塩野義製薬側の都合やカラーを押し付けることはしません。スタートアップが思い描く自由な成長を遂げることが、巡り巡って未来のヘルスケア全体の発展につながると心から信じているからです。そのために、我々は色のない「黒子」として全力でサポートすることに徹したいと考えています。

 

蒋:まさに「伴走」という言葉がしっくりきますね。我々は、製薬会社としての長い歴史の中で培ってきた知見やネットワークというツールを持っています。ぜひ我々を遠慮なく「使って」、スタートアップの事業の成長を加速させてほしいですね。

2040年へ「ドハマったらおもろい」。まだ見ぬ未来を、一緒に探したい

松村さん

――長期的な視点の中で、スタートアップとのシナジーについてはどのように考えていますか?

 

楠本:大きな組織は、既存事業の深化や安定的な運営は得意ですが、新しい事業を立ち上げることは、決して簡単ではありません。一方、スタートアップの側は、特定の社会課題を解決するために、常識にとらわれない技術やアイデアで一点突破を図るプロフェッショナルです。両者が組むことで、スタートアップが生み出した革新的な「点」を、塩野義製薬が持つリソースを使って社会に広がる「面」にしていくことができる。この補完関係こそが、CVCが目指すシナジーの本質です。

 

――具体的にはどのような領域に期待していますか?

 

松村:CVCとして最も重視する「未来のヘルスケアニーズ」というテーマは、まさにその象徴です。例えば、老化や不妊といったテーマ、あるいは量子コンピューターやデジタルツインといった最先端技術など、今の塩野義製薬がまだ強みを持っていない領域にこそ、未来の大きな可能性があると考えています。チームのテーマでもある「2030~2040年のSHIONOGIにドハマったらおもろいやん」、まさにその精神で、既存の枠を超えた未来をスタートアップと共に創っていきたいと考えています。

 

――この記事を読んでいるスタートアップの方々へ、メッセージをお願いします。

 

松村:皆さんの信じる技術が持つ可能性を、ぜひ聞かせてください。それが世界をどう変えるのか、一緒にワクワクしながら語り合える日を楽しみにしています。

 

蒋:スタートアップのビジョンを実現するために、よき相談相手であり、頼れるツールでありたいと思っています。どんな些細なことでも構いません。壁打ち相手として、気軽に声をかけてください。

 

楠本:塩野義製薬は「大きな組織だから」とためらう必要はまったくありません。事業化前の大学の研究シーズのような段階からでも、相談は大歓迎です。我々CVCグループが、スタートアップにとっての塩野義製薬への入口になります。まずは軽い気持ちでメールを1本いただけたら、とても嬉しいです。お待ちしています。2040年の未来を、一緒に「ドハマったらおもろいやん」の精神で創っていきましょう。

CVCチーム