塩野義製薬株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:手代木 功、以下「塩野義製薬」または「当社」)は、このたび、2030年のビジョンならびに、その達成に向けた成長戦略となる新中期経営計画「Shionogi Transformation Strategy 2030(STS2030)」を策定しました。STS2030では、2020年度を起点とする2024年度までの5年間をSTS Phase 1、以降2030年度までをSTS Phase 2と位置づけており、今回はSTS Phase 1における取り組みにつきまして、以下にお知らせいたします。
記
1. 新中期経営計画「STS2030」の位置づけ
塩野義製薬は、2014年3月に、2020年のありたい姿を描いた7ヵ年の中期経営計画「Shionogi Growth Strategy 2020(SGS2020)」をスタートさせ、2016年10月にはさらなる高みを目指して本計画を更新しました。「創薬型製薬企業として社会とともに成長し続ける」というビジョンのもと、抗インフルエンザ薬ゾフルーザ®や多剤耐性グラム陰性菌感染症治療薬セフィデロコル等、自社創製品を継続的にグローバルで上市し、当社が取り組むべき社会課題の一つである「世界を感染症の脅威から守る」ことに貢献してまいりました。ViiV社に導出した抗HIV薬テビケイ®およびその配合剤のグローバルでの売上が順調に拡大する中、経営の効率性にこだわり、コストマネジメント力の向上に取り組んだ結果、2020年度の主要な経営目標を前倒しで達成することができました。一方で、新製品売上ならびに海外事業の成長、それに伴う生産性の向上には課題を残しております。
外部環境に目を向けますと、世界人口の増加と高中所得国における少子高齢化の進行、過去10年とは異なる速度、規模で起こる気候変動等の環境変化と、それに伴う疾病構造やヘルスケアに求められるニーズの変化、情報技術の進化とデータ活用によるイノベーション、人々の価値観の多様化等、産業を取り巻く環境は急速に変化しております。昨今の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のパンデミックを例にしても、一つの出来事が社会システムや人々の価値観に及ぼす影響を従来の物差しで測ることは困難であることが明らかです。このような中で企業が社会の要請に応え、持続的に成長していくためには、ステークホルダーズとの対話の中から世の中の変化に対する予見力を高め、ビジネスにおけるリスクを低減し、強みを活かして新たな事業機会を創出していかねばなりません。
そこで、ビジネスの変革によりSGS2020で積み残した課題を早期に克服し、2028年ごろに訪れるHIV製品の特許切れによる影響(パテントクリフ)を乗り越え、さらなる成長を達成するための戦略として、このたび、当初の予定を1年前倒し、新中期経営計画「STS2030」を策定いたしました。最初の5ヵ年の計画であるSTS Phase 1では、グループ一丸でビジネスの変革を強力に推し進め、「Transformation」を具現化することに取り組んでまいります。
【STS2030におけるビジョン】
当社の2030年に成し遂げたいビジョンは、「新たなプラットフォームでヘルスケアの未来を創り出す」ことです。医薬品ビジネスには、主力製品の特許切れという事業のサステイナビリティに関わる課題が常に存在します。また、社会保障費に対する懸念の高まりや医療ニーズの高度化、多様化が進む中で懸命にこれに対処し、人々の健康と持続可能な社会の実現に貢献し続けることが製薬会社としての社会的使命であると認識しております。当社は従来の医療用医薬品を中心に提供する「創薬型製薬企業」から、ヘルスケアサービスを提供する「ヘルスケアプロバイダー」へと自らを変革し、社会に対して新たな価値を提供し続けていくことで、患者さまや社会の抱える困り事をより包括的に解決したいと考えております。そのためには、創造力と専門性をベースとした創薬型製薬企業としての強みをさらに進化させ、ヘルスケア領域の新たなプラットフォーム構築に向けて、異なる強みを持つ他社・他産業から選ばれる「協創の核」とならねばなりません。
塩野義製薬は、変化を恐れず、多様性を受容し、既成概念を超えて「Transform」することで、新たなビジョンの実現に取り組んでまいります。
2. 新中期経営計画「STS2030」における経営目標
業績評価指標(KPI) |
2019年度実績 |
2020年度 |
2022年度 |
2024年度 |
2030年度 |
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成長性 |
売上収益 |
3,333億円 |
3,235億円 |
4,000億円 |
5,000億円 |
6,000億円 |
コア営業利益* |
1,282億円 |
1,103億円 |
1,200億円 |
1,500億円 |
2,000億円 |
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コア営業利益率 |
38.5% |
34.1% |
30%以上 |
30%以上 |
- |
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海外売上高比率** |
18.5% |
13.7% |
25%以上 |
50%以上 |
- |
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自社創薬比率 |
67% |
60%以上 |
60%以上 |
60%以上 |
- |
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株主還元 |
EPS |
402円 |
330円以上 |
370円以上 |
480円以上 |
- |
DOE |
3.7% |
4%以上 |
4%以上 |
4%以上 |
- |
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ROE |
15.3% |
12.5%以上 |
13%以上 |
15%以上 |
- |
注:STS Phase 1(2020年度~2024年度)、STS Phase 2(2025年度~)
注:数値はIFRSベース(2019年度実績は監査未了のため暫定値となります)
* 営業利益から非経常的な項目(減損損失、有形固定資産売却益等)を調整した利益となります。
** ロイヤリティー収益を除きます。
EPS:1株当たり利益 DOE:親会社所有者帰属持分配当率 ROE:親会社所有者帰属持分利益率
3. 新中期経営計画「STS2030 - STS Phase 1 -」の基本方針と戦略
STS Phase 1においては、「トータルヘルスケア企業として持続的な成長へのTransformationを具現化する」ことを基本方針に、新たな価値創造に向けた「R&D戦略」および「トップライン(売上)戦略」と、価値創造を実現するための「経営基盤戦略」を進めてまいります。
(1) R&D戦略
R&Dにおける疾患戦略として、感染症、精神・神経疾患をコア疾患に経営資源を集中する一方で、社会的ニーズの大きい疾患に対する挑戦を継続し、アライアンスの活用も含めて創製・獲得したパイプラインの潜在的価値に応じて柔軟かつ大胆に注力プログラムの優先度を変更してまいります。現在、注力している8つのパイプラインは、いずれもより良い治療法の開発が強く望まれている疾患を対象としており、現状の疾患治療に対する捉え方(パラダイム)を変え得るものです。また、約60年間積み上げてきた感染症領域における強みを発揮し、社会や医療のニーズに応える感染症トータルケアの実現に取り組んでまいります。その一環として、現在、世界的な脅威となっている新型コロナウイルス感染症に対して、治療薬ならびに予防ワクチンの研究開発を最優先で進めます。これらの革新的なパイプラインの研究開発を促進し、HIV製品のパテントクリフへの対応を強化してまいります。
(2) トップライン戦略
新たなトップライン戦略として、「最適な疾患戦略を地域に応じたパートナリングを通して実現する」ことを掲げ、当社の重点疾患である感染症、精神・神経・疼痛疾患をベースに、日本・米国・中国を強化地域として取り組んでまいります。各疾患に対して、従来の強みである治療薬を軸に、未病・ケア、予防、診断といった多様なアプローチで疾患全体をケアし、「ヘルスケアプロバイダー」としての新たなポジションを開拓します。この疾患戦略を統括・推進するヘルスケア戦略本部を中心に、人々の健康に必要な製品や情報をより多くの方に届ける仕組みを構築し、各地域のビジネス強化につなげてまいります。また、これらの戦略を加速するために、当社がこれまでに培ったアライアンスの強みを駆使し、地域ごとの最適なパートナリングを展開してまいります。
(3) 経営基盤戦略
STS Phase 1において、Transformationの具現化を早期に実現する上では、ダイナミックな経営基盤の改革が必要不可欠であり、その根幹を担うのは「変革の仕組み」と「人材の成長」となります。変革の仕組みとしては、意思決定システムの確立やデータ活用の環境整備を始めとした意思決定の高度化、および社内外の連携を促進する業務プロセスの刷新に取り組んでまいります。また、新たな人材像(Shionogi Way)として、「他者を惹きつける尖った強みを持ち、新しいことにチャレンジを続ける人」を掲げ、成長・変革の源泉となる人材を育成・強化する施策を展開してまいります。
4. 持続的な成長に向けた投資と株主還元の両立
STS Phase 1期間計として、海外ビジネスの拡大や新規ビジネスの立ち上げ等、新たな成長ドライバーへの事業投資として5,000億円規模の投資を機動的に行う予定です。また、国内事業投資やIT投資など、既存ビジネスの収益性向上に向けた事業投資も積極化させます。研究開発費は過去5年と比較して、当期間で20%以上の増額を計画しております。
株主還元につきましては、EPS、DOE、ROEの各指標を勘案し、社会・経済からの要請とのバランスを図りながら、2020年度以降も成長に応じて安定的に配当金額を向上させることを目指し、株主の皆さまへの利益還元を行ってまいります。
(注)本プレスリリースに含まれる将来の予測に関する事項は、現時点において当社が入手している情報に基づいて作成されたものであり、実際の業績等は様々な要因により異なる可能性があります。
以 上