2020/07/10

AMR Action Fund設立、 製薬業界による10億米ドルの投資により、崩壊寸前の抗菌薬パイプラインの救済へ
-2030年までに2~4剤の新規の抗菌薬を患者さんにお届けし、 必要な長期政策を促進することを目指す-

塩野義製薬株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:手代木 功、以下「塩野義製薬」または「当社」)は、20社以上の大手バイオ製薬企業(以下、支援企業)とともに、本日、「AMR Action Fund」を設立したことを発表しましたので、お知らせいたします。

薬剤耐性(AMR: Antimicrobial Resistance)はグローバルな脅威であり、耐性菌による感染症の急増により、新規抗菌薬の創製が急務と言われています。本ファンドは、2030年までに新規の抗菌薬を2~4剤製品化し、患者さんにお届けすることを目指す画期的な取り組みです。本ファンドの支援企業は、多剤耐性細菌や、生命を脅かす感染症に対する革新的な抗菌薬の臨床研究を支援するために、このたび約10億米ドルの投資を行うことを決定しました。このうち当社は20百万米ドルを出資いたします。このAMR Action Fundを通じて、支援企業は慈善団体、開発銀行、国際機関らと協力し、抗菌薬の開発を強化・加速します。公衆衛生上の緊急性の高いニーズに特化した本ファンドは、財源の提供に留まらず、投資先であるバイオテクノロジー企業が新規抗菌薬を患者さんにお届けする上で必要な技術的サポートを提供します。

 

AMR Action Fundは、研究開発型製薬業界を代表する国際組織である国際製薬団体連合会(IFPMA)によるイニシアチブであり、ドイツ(ベルリン)と米国(ワシントンDC)で同時に開催されたオンラインイベントにて発表されました。加えて、東京においても7月10日に発表イベントが開催されました。

 

AMRという迫りくる世界的な脅威は、死亡者数および経済的コストの点において、新型コロナウイルス感染症による被害をも上回る可能性があります。新型コロナウイルス感染症による死亡者数が増加し続ける間にも、AMRに起因する死亡者数は年間70万人に上ります。最も悲観的なシナリオによると、2050年までに全世界で年間1,000万人もの命がAMRによって奪われるとの推計がなされています。

 

本ファンドの設立組織のひとつであるIFPMAのトーマス・クエニ事務局長は、次のように述べています。「新型コロナウイルス感染症と違い、AMRは予測可能であり、防ぐことができる危機です。私たちは協力して、抗菌薬パイプラインを再構築し、最も有望で革新的な抗菌薬が研究現場から患者さんへ確実に届くようにしなければなりません。AMR Action Fundは、世界的な公衆衛生上の脅威に対応するための製薬業界によるイニシアチブとして、これまでで最も大規模で意欲的な取り組みのひとつです。」

 

世界は新しい抗菌薬を緊急に必要としていますが、現在、十分な開発パイプラインがないことが課題となっています。これは、AMRが社会に甚大な被害をもたらすにもかかわらず、新規の抗菌薬には持続的な収益が見込める市場が存在しないという長年の課題を解決できていないことによります。新しい抗菌薬は、有効性維持のため必要性の高い場合に限って使用されているため、近年、抗菌薬に特化した多くのバイオテクノロジー企業が破産あるいは事業撤退し、それまで培われた有益な専門知識と資源が失われています。その結果、公衆衛生上の巨大なニーズが存在するにも関わらず、研究開発、特に後期臨床開発段階に使用できる資金の不足を招き、創薬と患者アクセスとの間に「死の谷」が生まれています。

 

イーライリリーの会長兼最高経営責任者(CEO)でIFPMA会長のデイビッド・リックスは、「AMR Action Fundを通して支援企業は約10億米ドルを投資し、新規抗菌薬候補が、最も難関とされる後期臨床開発段階に進められるよう支援します。これは各国政府に対し、持続的な抗菌薬パイプラインの実現に必要な政策改革を実行するための時間を提供することにもつながります。」と述べています。

 

AMR Action Fundの設立は、AMRの問題に対応する上で重要な前進ですが、世界各国の政策立案者は、診療報酬の改定や新たな奨励金制度を含め、抗菌薬市場の改革を実行に移し、市場を活性化して、抗菌薬の研究開発に対する持続可能な投資を促進する必要があります。それまでの間、支援企業は抗菌薬の既存パイプラインを支える活動に取り組みます。

 

AMRに対応するために創出された共同事業として過去最大規模となるAMR Action Fundは、下記の活動を行います。

·       公衆衛生上の最優先ニーズに対応し、医療現場を支え、人命を救う革新的な抗菌薬の開発に注力する小規模バイオテクノロジー企業に投資する。

·       投資先企業に技術的サポートを提供し、それら企業に大手バイオ製薬企業が持つ深い専門知識と資源へのアクセスを提供することで、抗菌薬開発を強化し、抗菌薬へのアクセスとその適正な使用を支援する。

·       製薬業界と、慈善団体、開発銀行、国際機関を含む業界外組織との広範な連携を推進し、各国政府に対し、抗菌薬パイプラインへの持続可能な投資を実現するための市場環境を創出するよう促す。

AMR Action Fundは、今後さらなる出資パートナーを募り、総額10億米ドル以上を支援先企業に投資し、抗菌薬開発に必要な資金を供給できると考えています。本ファンドは、2020年第4四半期中に運用が開始される見込みです。AMR Action Fundの詳細については、www.AMRactionfund.comをご覧ください。

 

 

AMR Action Fundへの支持メッセージ

「AMRは、1世紀にわたる医学の進歩を無に帰す恐れがあるゆっくりと迫る津波です。緊急に必要とされる抗菌薬の開発における、民間部門によるこの新たな取り組みを大いに歓迎します。WHOは、AMR Action Fundと協力し、この公衆衛生上の危機に対応するための研究を促進していきたいと思います。」(テドロス・アダノム・ゲブレイェソス博士、世界保健機関(WHO)事務局長)

 

「AMRの拡大に対応するには新しい抗菌薬が必要です。欧州投資銀行(EIB)は、薬剤耐性問題のような明らかな市場の失敗に対し、革新的な金融商品によって積極的に支援しています。今こそ製薬業界、慈善団体、多国籍開発銀行、世界保健機関を含む公共/民間部門が力を合わせ、この脅威に立ち向かう時です。

このような公衆衛生上の問題に対して強い影響力のあるファンドの設立を支援することは、医療分野におけるEIBの重要な使命に完全に沿ったものであり、私たちは設立グループに参加できて光栄です。」(ワーナー・ホイヤー、EIB総裁)

 

AMR Action Fundを支援するバイオ製薬企業および財団

(アルファベット順)

アルミラール、アムジェン、バイエル、ベーリンガーインゲルハイム、中外製薬、第一三共、エーザイ、イーライリリー・アンド・カンパニー、グラクソ・スミスクライン、ジョンソン・エンド・ジョンソン、レオ ファーマ、ルンドベック、メナリーニ、メルク、MSD、ノバルティス、ノボ ノルディスク、ノボ ノルディスク財団、ファイザー、ロシュ、塩野義製薬、武田薬品工業、テバ、ユーシービー

 

塩野義製薬株式会社 代表取締役社長 手代木 功 からの支持メッセージ

「AMR Action Fundの設立時から当社が参画できることを大変光栄に思っております。塩野義製薬は、取り組む重要課題(マテリアリティ)の一つに「感染症の脅威からの解放」を掲げており、患者さまと社会の両方が将来必要とする抗菌薬の恩恵を確実に受け続けられるように感染症治療法の研究・開発を続けることを明言し、今もなお、精力的に取り組んでいます。本ファンドの設立によって、未だに治療法が確立していない感染症に対する新薬の創製や感染症薬の適正使用のさらなる推進に繋がることを大いに期待しております。」

 

塩野義製薬株式会社 代表取締役社長

サイン_和文

AMR Action Fundについて

AMR Action Fundは、20社以上の大手バイオ製薬企業によるイニシアチブであり、2030年までに2~4剤の新規の抗菌薬を製品化することを目的に、約10億米ドルの投資を行います。AMR Action Fundの投資対象は、革新的な抗菌薬の開発に取り組んでいる小規模の企業です。当ファンドは研究機関や慈善団体、開発銀行、国際組織との提携関係を築き、抗菌薬の開発を強化・加速します。また各国政府と協力し、AMRと戦うために必要な新しい抗菌薬の持続可能なパイプラインを確保していきます。

AMR Action Fundの構想は、国際製薬団体連合会(IFPMA)とバイオファーマシューティカル・CEO・ラウンドテーブル(BCR)、バイオ製薬企業、ならびに財団が、世界保健機関(WHO)、欧州投資銀行(EIB)、ウェルカム・トラストと連携して打ち出したものです。

 

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