2020/11/24

抗インフルエンザウイルス薬XOFLUZA®の米国における適応追加承認について-12歳以上のインフルエンザウイルス感染曝露後予防を適応として-

塩野義製薬株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:手代木 功、以下「塩野義製薬」)は、抗インフルエンザウイルス薬XOFLUZA®(一般名:バロキサビル マルボキシル)について、提携先であるF. Hoffmann-La Roche Ltd.(本社:スイス バーゼル、CEO:Dr. Severin Schwan、以下「Rocheグループ」)が「12歳以上のインフルエンザウイルス感染曝露後予防」を追加適応として、米国食品医薬品局(FDA)より承認を取得したことをお知らせいたします。本追加適応の承認は日本国内第III相臨床試験(BLOCKSTONE1)の結果をもとに判断されました。なお、FDAの審査終了目標日(PUDUFA date)は2020年11月23日でした。

 

BLOCKSTONEでは「インフルエンザウイルス感染患者のいる家族または共同生活者(以下、被験者)に被検薬を投与したときの投与後10日の間にインフルエンザウイルスに感染し、発熱かつ呼吸器症状を発現した被験者の割合」を主要評価項目として、XOFLUZA®の1回経口投与によるインフルエンザウイルス感染症の発症抑制効果を検証しています。インフルエンザウイルスに感染し、発熱かつ呼吸器症状を発現した被験者の割合は、XOFLUZA投与群で1.9%、プラセボ投与群で13.6%でした。安全性に関しては、XOFLUZAは良好な忍容性を示し、安全性上の新たな懸念はありませんでした。BLOCKSTONEの結果は、New England Journal of Medicineの2020年7月8日号に掲載されています1

 

本薬の開発および販売は、Rocheグループとの提携下で進めており、日本と台湾における販売は塩野義製薬が、それ以外の国ではRocheグループが行います。

米国では「12歳以上の合併症のない発症後48時間以内の急性のインフルエンザウイルス感染症治療」および「12歳以上の合併症を併発するリスクが高い患者の発症後48時間以内の急性のインフルエンザウイルス感染症治療」の適応でFDAから承認されています2,3。また、新型コロナウイルスと季節性インフルエンザの同時流行が懸念される2020/21シーズンにおいても、米国疾病予防管理センター(CDC: Centers for Disease Control and Prevention)のガイドラインにおいて、XOFLUZAはインフルエンザウイルス感染症患者に対する治療薬として推奨されています4

なお、米国における「1歳以上12歳未満の合併症のない発症後48時間以内の急性のインフルエンザウイルス感染症治療、および1歳以上12歳未満のインフルエンザウイルス感染曝露後予防」の適応については、Rocheグループが引き続き、FDAとの協議を進めています。

また、欧州においては、欧州医薬品庁(EMA)の医薬品評価委員会(CHMP)より、「12歳以上の合併症のないインフルエンザウイルス感染症治療」および「12歳以上のインフルエンザウイルス感染曝露後予防」を適応症として、XOFLUZAの承認を推奨する肯定的な見解が発表されています5

 

塩野義製薬は、取り組むべきマテリアリティ(重要課題)として「感染症の脅威からの解放」を特定し、治療薬の研究・開発だけにとどまらず、啓発・予防・診断ならびに重症化抑制といった感染症のトータルケアに対する取り組みを進めております。引き続き本薬の有効性、安全性に関するデータの収集と解析に鋭意取り組み、適正使用に向けた情報提供活動に努めてまいります。

なお、本件が2021年3月期連結業績に与える影響は軽微です。

以 上

BLOCKSTONE試験1について】

BLOCKSTONE試験は、インフルエンザウイルス感染症患者(初発患者)の同居家族または共同生活者を対象に実施した、多施設共同、無作為化、プラセボ対照二重盲検比較の第III相臨床試験です。本試験は750例を対象に、日本で塩野義製薬が実施いたしました。被験者はXOFLUZAの1回投与群、またはプラセボ投与群に無作為に割り当てられました。XOFLUZAの投与量は、12歳以上では体重に応じて40mgまたは80mgを1回投与、12歳未満では体重に基づき投与量が設定されました。本試験の主要評価項目は投与後10日間における、インフルエンザウイルスに感染し、発熱かつ呼吸器症状を有する被験者の割合です。XOFLUZAの1回経口投与によるインフルエンザウイルス感染症の発症抑制効果が認められ、インフルエンザウイルスに感染し、発熱かつ呼吸器症状を発現した被験者の割合は、XOFLUZA投与群で1.9%、プラセボ投与群で13.6%でした。また、XOFLUZA投与群において重篤な有害事象の発現は認められませんでした。BLOCKSTONE試験の結果は、New England Journal of Medicineの2020年7月8日号に掲載されています。

 

【XOFLUZA®について】

塩野義製薬が創製したXOFLUZAは、キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害作用によりインフルエンザウイルスの増殖を抑制します。本薬は1回の経口投与で治療が完結します。XOFLUZAは非臨床試験において、オセルタミビルに耐性を示すウイルスおよび、鳥インフルエンザウイルス(H7N9、H5N1)を含むインフルエンザウイルスに抗ウイルス効果を示しました6, 7。本薬は、日米を含め複数の国で承認されております。米国における詳細はXOFLUZAホームページをご覧ください。Rocheグループは、1歳未満の小児を対象としたグローバル第III相臨床試験(miniSTONE-1試験)、また本薬のインフルエンザウイルス伝播抑制効果について検証するためのグローバル第III相臨床試験(CENTERSTONE試験)を実施中です。また、当社は本薬のインフルエンザウイルス感染症の発症予防効果について検証し、第III相臨床試験における良好な有効性および安全性の結果をもとに、2019年10月16日に日本において、インフルエンザウイルス感染症予防に関する効能・効果追加申請8、2020年3月31日には台湾において成人および12歳以上の小児におけるインフルエンザウイルス感染曝露後予防に関する新薬承認追加申請を実施しております9

 

参考:

1.      Hideyuki Ikematsu, MD et al. Baloxavir Marboxil for Prophylaxis against Influenza in Household Contacts. N Engl J Med 2020 Jul 8

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1915341

2.      プレスリリース: 2018年10月25日
XOFLUZATM(一般名:バロキサビル マルボキシル)の米国における承認取得について-合併症のない急性のインフルエンザ感染症治療を適応として-

3.      プレスリリース: 2019年10月18日
抗インフルエンザウイルス薬XOFLUZATMの米国における適応追加承認について-合併症を併発するリスクが高い患者のインフルエンザウイルス感染症治療を適応として-

4.      米国疾病予防管理センター(CDC)ガイドライン
CDC website, What You Should Know About Flu Antiviral Drugs

5.      Xofluza: Pending EC decision|European Medicines Agency
https://www.ema.europa.eu/en/medicines/human/summaries-opinion/xofluza

6.      T. Noshi et al. In vitro Characterization of Baloxavir Acid, a First-in-Class Cap-dependent Endonuclease Inhibitor of the Influenza Virus Polymerase PA Subunit. Antiviral Research 2018;160:109-117

7.      K. Taniguchi et al. Inhibition of avian-origin influenza A(H7N9) virus by the novel cap-dependent endonuclease inhibitor baloxavir marboxil. Scientific Reports volume 9, Article number: 3466 (2019)

8.      プレスリリース: 2019年10月16日
抗インフルエンザウイルス薬ゾフルーザ®のインフルエンザウイルス感染症予防に関する日本における効能・効果追加申請について

9.      プレスリリース: 2020年3月31日
抗インフルエンザウイルス薬「紓伏效®(ゾフルーザ®)」のインフルエンザウイルス感染症予防に関する台湾における新薬承認追加申請について