2021/03/23

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患した高齢者の重症化抑制を目指したasapiprant(S-555739)の第2相臨床試験開始に関するBioAge社の発表について

塩野義製薬株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:手代木 功、以下「塩野義製薬」または「当社」)は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による感染症(COVID-19)の重症化抑制を目指して業務提携しているBioAge Labs, Inc.(本社:米国カリフォルニア州、CEO:Kristen Fortney, Ph.D.、以下「BioAge社」)が、Prostaglandin D2 DP1受容体拮抗薬asapiprant(開発番号:S-555739、BioAge社コード:BGE-175、以下「本化合物」)について、COVID-19に罹患した高齢者を対象とする第2相臨床試験の開始を発表しましたので、お知らせいたします。

 

本化合物は、当社が創製したDP1受容体拮抗薬であり、これまで当社が実施してきた複数の非臨床および2,400例以上を対象とした臨床試験において、DP1受容体への高い親和性および選択性1に加え、良好な忍容性、安全性が確認されています。また、BioAge社が実施したSARS-CoV-2を感染させた加齢マウスモデルを用いた非臨床試験において、本化合物を投与することで、マウスの死亡率が大幅に改善することに加え、肺内のウイルス量が有意に低下することが確認されました。

非臨床試験の良好な結果をもとに、この度BioAge社は、COVID-19に罹患した高齢者を対象とした第2相臨床試験を開始しました。当社は、治験薬の提供およびFDAへの治験許可申請に対する協力を通じて、BioAge社の迅速な試験開始を支援しております。

 

塩野義製薬は、取り組むべきマテリアリティ(重要課題)として「感染症の脅威からの解放」を特定し、治療薬の研究・開発だけにとどまらず、啓発・予防・診断ならびに重症化抑制といった感染症のトータルケアに対する取り組みを進めております。感染症薬のリーディングカンパニーとして、新型コロナウイルス感染症の早期終息による社会の安心・安全の回復に貢献するために、新規の治療薬、ワクチン等の開発に加えて既存の化合物の価値を最大化し、より多くの患者さまにヘルスケアソリューションを提供できるよう、外部パートナーとの連携を含めた取り組みを強化してまいります。

 

なお、本件が2021年3月期の業績に与える影響は軽微です。

 

以  上

 

【第2相臨床試験について】

第2相臨床試験は、多施設共同、プラセボ対象、無作為化、、二重盲検、並行群間比較試験です。COVID-19で入院している60歳以上の患者で、呼吸不全に至っていない132名を対象に、本化合物またはプラセボ(各グループで66人)が経口投与、もしくは嚥下が困難な患者に対しては経鼻栄養管経由で最大14日間毎日投与されます。試験は、米国、アルゼンチンおよびブラジルにて実施されます。主要評価項目は、本化合物の初回投与を受けてから28日後に死亡または呼吸不全に進行した患者の割合です。詳細につきましては、ClinicalTrials.govをご参照ください。

 

【BioAge社について】

BioAge社は、加齢や老化に関連する疾患を治療するための医薬品を開発しているバイオテクノロジー企業です。同社は、AIによる人間の寿命に影響を及ぼす分子経路のマッピングを主導しており、過去45年以上にわたって推定6,000人分の健常者を追跡調査したデータを有し、病歴・死亡歴と血液サンプルを用いたAIによるオミクス解析(生体を構成しているさまざまな分子を網羅的に調べていくこと)から、加齢に関連するターゲット候補の同定と、創薬展開を実施しております。

 

参考

1.      Takahashi G, Asanuma F, Suzuki N. Effect of the potent and selective DP1 receptor antagonist, asapiprant (S-555739), in animal models of allergic rhinitis and allergic asthma. Eur J Pharmacol. 2015;765:15-23