2021/06/02

新型コロナウイルスを含む感染症領域の下水モニタリングに関する 塩野義製薬と島津製作所による業務提携の基本合意書の締結について

塩野義製薬株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:手代木 功、以下「塩野義製薬」)と、株式会社島津製作所(本社:京都市中京区、代表取締役社長:上田 輝久、以下「島津製作所」)は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を含む感染症領域の下水モニタリングの早期社会実装を目指した業務提携(以下、本提携)に関する基本合意書を締結しましたので、お知らせいたします。

 

本提携では、PCR検査などによる下水モニタリングの早期社会実装を目指して、両社で共同事業体の設立の協議を進めてまいります。

SARS-CoV-2による感染が今なお蔓延しており、その感染状況の把握に寄与する技術として、下水疫学を用いたモニタリングが注目されています。SARS-CoV-2感染者の糞便中には、発症の前段階からウイルスが存在する可能性が指摘されており1、米国やオランダでは、施設や都市の下水に含まれるSARS-CoV-2を定期的にモニタリングすることで、流行状況の早期検知や収束判断などを行っています2, 3なお、現在のところ、下水から検出されるSARS-CoV-2について感染性を有するという報告はございません4

 

島津製作所は、グループ会社の株式会社島津テクノリサーチ(本社:京都市中京区、代表取締役社長:福永秀朗)を通じて、下水モニタリングとヒト検査の2階建てPCR検査システム「京都モデル」を高齢者施設や教育機関、宿泊施設などの個別施設に向けて提供しています5。「京都モデル」については京都大学(京都市、総長:湊長博)、金沢大学(石川県金沢市、総長:山崎光悦)、富山県立大学(富山県射水市、総長:下山勲)の技術指導を受けて、京都府・京都市の協力による実証試験においてその有効性を確認いたしました。

塩野義製薬は、北海道大学(札幌市、総長:寳金清博)との共同研究において、高感度ウイルス検出法の開発に成功しました。日本においては、米国や欧州の一部の国・地域と比較して、人口当たりのSARS-CoV-2感染者数が少なく、下水中のSARS-CoV-2濃度が低いため、都市の下水からウイルスを検出するためには、感度の高い検出法が必要とされていました。現在、この検出法を活用して、大阪府の協力のもと、北海道大学と共同で下水処理場の流入下水を使用した、流行状況のモニタリングを開始しています6

 

今後、両社はそれぞれの強みを融合し、アカデミアやパートナー企業とも連携し、下水中のウイルスの自動検出、モニタリングデータを基にした感染状況や変異株の発生動向などを早期に検知可能とする、下水モニタリングの社会システム構築を目指してまいります。

 

以 上

 

 

 

[お問合せ先]

塩野義製薬ウェブサイト お問い合わせフォーム:https://www.shionogi.com/jp/ja/quest.html#3.

島津製作所お問い合わせ先:pr@group.shimadzu.co.jp

 

塩野義製薬株式会社について

塩野義製薬は、取り組むべきマテリアリティ(重要課題)として「感染症の脅威からの解放」を特定し、治療薬の研究・開発だけにとどまらず、未病・啓発・予防・診断並びに重症化抑制といった感染症のトータルケアに対する取り組みを進めています。感染症薬のリーディングカンパニーとして,新型コロナウイルス感染症の早期終息による社会の安心・安全の回復に貢献するために,新規の治療薬,ワクチン等の開発に加えて既存の化合物の価値を最大化し、より多くの患者さまにヘルスケアソリューションを提供できるよう、外部パートナーとの連携を含めた取り組みを強化しています。

 

株式会社島津製作所について

島津製作所は、社是「科学技術で社会に貢献する」のもと、分析計測機器、医用機器、航空機器、産業機器などの事業を手掛けています。2020年度にスタートした中期経営計画では「世界のパートナーと社会課題の解決に取り組む企業」を目指しています。特に注力する「感染症対策プロジェクト」においては、新型コロナウイルス検出試薬キットやクリニック向け全自動PCR検査装置の開発・販売、教育機関へのPCR検査センターの設立支援などに取り組んできました。今後も様々な製品・技術・サービスを通じて、新型コロナウイルスの感染拡大防止、安心・安全な社会の実現に尽力してまいります。

 

参考:

1.      Duration of SARS-CoV-2 viral shedding in faeces as a parameter for wastewater-based epidemiology: Re-analysis of patient data using a shedding dynamics model, Science of The Total Environment, Vol. 769, 15 May 2021

2.      カリフォルニア大学サンディエゴ校におけるCOVID-19対応状況:COVID-19 containment on a college campus via wastewater-based epidemiology, targeted clinical testing and an intervention, Science of The Total Environment, Vol. 779, 20 July 2021

3.      オランダ国立公衆衛生環境研究所ホームページCoronavirus monitoring in sewage research:https://coronadashboard.government.nl/landelijk/rioolwater

4.      World Health Organization. Water, sanitation, hygiene, and waste management for SARS-CoV-2, the virus that causes COVID-19. Available from :

https://www.who.int/publications/i/item/water-sanitation-hygiene-and-waste-management-for-the-covid-19-virus-interim-guidance.

5.      島津製作所プレスリリース:2021年5月13日

下水とヒトの2階建てPCR検査「京都モデル」の受託事業を開始
建物ごとの下水PCR検査から新型コロナ感染者の発症当日の発見に成功

6.      塩野義製薬プレスリリース:2021年4月14日
大阪府で下水から新型コロナ流行状況のモニタリングを開始~ウイルス感染症流行及び新規変異株の早期検知を目的とした社会実装~